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獣の進化

 全身から闇が湧き上がる。


 オレの心が漆黒に染まる。


 絶望の進化。


 だが絶望するのはオレだけじゃねえ。


 目の前にいる王。


 こいつにも絶望を味あわせてやる。


 オレの叫びは止まらない。


 闇の輝きはより強大に、より黒くなっていく。


『アリス……、まだ、大丈夫です』


 ハピア、息があるのか!?


 ……いや、それでもオレは、このまま進化をする。


 こいつは刺し違える覚悟でも倒せるかわからない……。もうコレしか手は残されていないんだ。


『アリス……、私は、貴方の為に戦ったのです。自分を、犠牲にしないで……』


 もう良いんだ……。ハピア……。


 オレの身体が変質していく。


 醜く、凶暴に、強靭に。


『我の期待を裏切るつもりか? 人との共存の夢を見せておいて先に逝くつもりか?』


 メテオ……。お前も生きていたのか……。すまない。生きていたなら、お前が代わりに夢を叶えてくれ。


 お前が生きててくれて良かった。ハピアを頼む。


『アタシだって生きてるんだよ! アンタを救う為に覚悟しまくったアタシの決意! 無駄にするつもりなの!?』


 クー……。ごめんな。オレはお前たちを救う為に、いや……。救いたいから戦うんだ。許してくれ……。


『アリス、どこ? 何処にいるの? お願い、一人にしないで』


 キャロ……? どうしてオレに声を届けられる? お前は遠くにいる筈だ。


『アリスの頑張ってる声……、聞こえたよ……? お願い、戻ってきて。皆を置いて一人で死なないで』


 キャロ、最後にお前の声が聞けて良かった。ありがとう。キャロが生きていれば、オレは希望を持って生きられる。


『そうだ、希望を持つんだ。お嬢さん』


 バロウ、まだ出てくるのか?


『あぁ、そうとも。例え死んでも、私はいつだってお嬢さんの側にいるさ』


 とんだストーカー野郎だな。何だ? 助けてくれるのか?


『あぁ、君に勇気の魔法を掛けよう。皆を守り、君自身を救えると信じられる様に』


 勇気の魔法、か……。懐かしいな。あの時の皆の進化。感動したよ。


『あの時の私達の様に、君が正しく進化出来る様に。君に道を指し示そう』


 バロウがオレの頭に触れる。


 これは、走馬灯……? 今までの記憶全てがフラッシュバックする。


 違う。ただの走馬灯じゃない。


 情景がピックアップされる。オレに何かを伝えようとしているのか?


 バロウ達の進化。優しく暖かい光。


 今のオレとは真逆の進化。


 キャロにペンダントを貰った日。あの時から、オレ達の約束が始まったんだな。


 お婆ちゃんの言葉。

 オレがヒーローになれるって言ってたっけ。

 オレは、なれないよ……。魔族の勇者なんて、敵役だ。昨日の敵は今日の友なんて無理だ。憎い奴はいつまでも憎い。


 オレは王を許せない。


 ハピアが王に言った言葉。やっと貴方らしくなってきましたわね。

 王はカッコつけた性格じゃなかったって事か? 尊大で傲慢な姿こそ本来の性格。何故?


 突然人が変わった様になる現象……。王はハートと接触していた? だが、そうだとしてもコイツを倒さない事には先が無いんだ。


 ハピアがいる。諦める事は許しません、か。

 今のオレも諦めなのか。共に生きる事を諦めた。絶望の進化。


 ハピアのおかげで、一度は絶望の進化から抜け出せたのにな。


 そしてお婆ちゃんと再会出来て。


 お婆ちゃん、変なことばっかり言ってたな。


 思わず笑ってしまう。


 オレの記憶を勝手に整理したり、相手の魔法陣読み違えたり。


 王の瞬速も、ハピアの動きが止まってるとか言い出してーー。


 動きが、止まっている?


 王はさっき……、最後に何て言った?


 王の世界に必要無い?


 違う、その後だ。


『アリスちゃん達の事を王家の世界に入れない、とか言ってたかのぅ』


 お婆ちゃん! 目が覚めたのか!?


『少し前から見てたかのぅ。やっぱりアリスちゃんもハピアちゃんも、動きが止まってる様に見えるんじゃ』


 何故お婆ちゃんには見える。銃弾を見切れる筈のハピアに見えなくて、目の悪いお婆ちゃんに見える理由。


 その疑問ともう一つの疑問が頭の中で結びつく。


 何故高速で動ける筈の王が、オレの魔法をわざわざ弾いていた。


 躱せる筈だ。何故わざわざ大事にしている宝物の銃で防ぐのか。


 導き出される答え……。奴は、魔法に対しては高速で動けない……?


 …………そーゆー事かよ。間違いねえ。奴の超速移動の謎が解けたぜ。


 そうだよな、強大な王様だ。その力が高速移動とか幻影とか、そんなチャチなもんじゃねえよな。


 サンキューお婆ちゃん。


 なら話は早え。こんな力ばっかり強大な進化をしても王には勝てねえ。


 なら一か八かだが、奴の戦いの穴を突く進化を遂げてやる。やってやる。


 頼む、進化の光……!


 オレの望む力を与えてくれ!


 闇が明滅し、徐々に光が強くなる。


 眩い煌めき。明るく照らす、優しい光。暖かい輝き。


 だが、強さが足りない。


 なら……!


 すまねえハピア、このコート貰うぞ!


 白狼のミスリルコート、こいつも進化の糧に使っちまえ! 頼む、オレに強さを……!


『えぇ、構いませんわ。貴方を信じていますもの』


 凛としたハピアの声に勇気付けられる。


 オレは信じ抜く。


『我の力の残り、我の体ごと持っていくが良い』


『アタシのことも信用しなさいよね!』


 オレから発する光が、クーとメテオの体を包んでいく。


 けど、そんな事したら二人は……?


『後の事など心配するな』


『今は全力で戦いなさい!』


 二人とも、すまない……。ありがとう……!


 進化の輝きが眩い光を放ち、神々しい物へと昇華していく。


 その体は美しく、強靭に、気高く。


 夜の闇に輝く一点の光が咆哮を上げる。


 オレは、皆を守って、救う為に戦う。


 そしてまた一緒に暮らすんだ!

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