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人を信じる心

 真紅の闇と蒼の聖炎が交差する。


 キャロの刃、オレの爪牙。


 お互いに斬撃を飛ばし、大地を駆ける。


 オレは真っ直ぐ彼女を見つめ、語りかける。


 だが彼女の目は虚ろなままオレへと攻撃を続ける。


 遠い。こんなにも近くにいるのに、オレの言葉は届かない。


 表情一つ変えないキャロに、オレは言葉を紡ぎ続ける。


 今もオレの言葉は伝わらないのだろうか。


 だがオレは決して、諦めたりはしない。


「人の娘は、言葉がわからぬのでは無いか」


 誰かが言った。この声には聞き覚えがある。


 だがそちらを向く余裕は無い。


 少しでも気を抜いたらキャロの攻撃を受けてしまう。


 今のキャロは強い。かつて子供だった彼女は成長し、大人の肉体を手に入れている。

 魔族が変質させたキャロの姿。そしてその身体には闇の魔力が漲っている。


 この闇を全て浄化できれば、オレの声が届くかも知れねえ。


 だがオレの力が一歩及ばねえ。


「犬の子よ、人の言葉を。心に直接語りかける事は出来ぬのか」


 それが出来たら苦労しねえ。


 そんな事を考えてる隙にキャロの一撃を貰う。


 真紅の斬撃。そしてそれは一度で終わらず幾たびも聖獣の身体を切り裂いていく。


 くそ、どうすれば良い。どうすればキャロに届く……!


 オレは魔力を注ぎ聖獣の身体を再生させる。


 だがキャロの方がオレよりも一段強い。


 覚悟なら決めた筈だ。修業だって積んだ。


 それでも魔族に支配されたキャロの力は、恨みは強大だってのかよ。


 諦めねえ。絶対に諦めねえ。


 キャロが真紅の闇を放出する。それら全てが衝撃となってオレへと襲いかかる。


「我と融合せよ。人の身体を手に入れ、娘へと語りかけよ」


 地を転がるオレに語りかける声。

 気を取られるオレに容赦すること無く、キャロが斬撃を飛ばし追撃する。


 融合だと!? 誰なんだよお前は! 勝手な事ばかり言うんじゃねえ!


「命を賭けて闘った相手を忘れたか? 犬の子よ」


 オレは跳び退いて防御を貼り、キャロとの距離を取る。

 聖結界で防御を張って尚、キャロの闇が減る気配は無い。

 削れるのはオレの魔力ばかりだ。


 オレは声の主へと振り返る。


 振り向いた先に立っていたのは、燃える様な赤い長髪の、女……か?


「我の体を使え、少女を救うのでは無いのか? 手段を選ぶ余裕があるのか?」


 メテオなのか? お前、人型になれるのか?


 ハピアはマッドハートへと剣撃を繰り出し続けているが、奴は避けるばかりで攻撃をしようとはしない。


 だが融合するにはハピアの使い魔になる必要がある。人間との関わりを断とうとしたこいつにそれが耐えられるのか。


「お前が奇跡を見せてくれるんだろう? 見届けようではないか。それとも覚悟が出来ていないか?」


 ふざけんな! 覚悟ならとっくに出来てんだよ!


 ハピア! 聞こえてたか今の!


『えぇ、聞こえていました。もう準備は済んでますのでキャロさんを救う為に、メテオさんに力を貸していただきましょう』


 もう話はついてるってか……。良いぜ、力を貸せ! 火竜メテオ!!


 オレの中に奴が入ってくる。


 吐き出しそうな程の熱さ。


 だが感じる。奴の人間への期待、愛情を。


 人間を信じる事への恐怖に、打ち勝とうとする気持ちを。


 魔力が溢れ出す。


 それを全て飲み込む。


 オレの身体が変質していく。


 目線が上がる。犬の体は大きくなり、やがて人型となる。


 見た目が気になるが、そんなもんどうだって良い。


 キャロに言葉が届けば十分だ。


 火炎が舞う。


 オレが本来苦手としていた魔法。


 だが今は炎を意のままに操れる。


 燃え上がる灼火は聖なる輝きを帯び、見た目だけではない真なる聖炎と化す。


 オレはその魔力を両腕に収束させ武器を創り出す。


 キャロの闇を、悲しみを受け止める浄化の刃。


 聖炎の竜爪。


 キャロ、お前の心。取り戻してみせる。

ぐぁああぁぁ!!誤字修正しました!

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