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侯爵家の誘い

 パピヨン。


 その歴史は古くかつてフランス貴族にその優雅さを愛され、かのマリー・アントワネットを始めとした有名貴族の多くが愛好していた。




 朝の散歩を終え修業で瀕死と化したオレにハピアが声をかける。


「社交界のパーティに参加しましょう」


 え……、急だな。突然どうしたんだ?


「侯爵家でパーティがあるとお誘いが来たのです。行きましょう」


 ちょっと待ってくれ。今まで誘った事なんて無かったじゃないか。どうしていきなり?


「貴方が真っ黒な姿を公に晒したく無いと言っていたからですわ。進化して可愛くなった今ならよろしいのではなくて?」


 え、でもオレが行ったってしょうがないじゃん。踊ったり喋ったり出来ないし。キャロの為の情報収集ってだけなら今まで通りハピアだけで良いじゃん!


「パーティには貴族の美しい御令嬢も沢山来ますのよ。それに来て頂いたらパーティ前後の修業は無しにしましょう」


 行きます。


 こうして社交界デビューする事になったオレは今、パーティ用のドレスを選んでいる。


 男の癖にドレス着るのかよ!とか思われそうだが仕方ない。

 今のオレは可愛いワンちゃんなのだ!それも我が愛犬の姿の!可愛くドレスアップして社交界の華とならずにどうする!

 故にオレを待って列をなす麗しい貴族令嬢たちの為にもドレスアップは欠かせない。


 ハピアやお婆ちゃんだけではなく屋敷中のメイドさんがオレを着替えさせ歓声を上げる。


 ふふふ、可愛いだろう。


 もっと愛でるが良い。


「おやおや。楽しそうじゃないか」


 おや、この優しい低音ボイスはハピアのパパさんだ。

 どうしたのだろう。パパさんも可愛くドレスアップしたオレを愛でたくなったのか?

 良いだろう。男はお気に召さないがハピアの父なら話は別だ。

 オレはパパさんにトコトコと近付いていくと彼がしゃがみ込んで慎重にオレの体を撫でる。


 パパさんはとても十四才の娘がいると思えないほど若い。しかもイケメンだ。

 透き通るような白い肌。長い金髪はハピアと同じく緩くパーマの掛かっていて怪しい色気を放っている。

 そして最強の剣の名家と言われるイリシウス家の当主だけあってその体躯は逞しく二メートル程ある。

 身長二メートル程ある。


 そんな彼だからオレを撫でる為に体を小さく丸め込んで触るのにとても慎重になるのは当然の事だろう。

 だがそうやってオレを撫でる気遣いには彼の優しさが感じられる。


「ふふ、アリスは可愛いな。初めての社交界は緊張するだろうが頑張るんだぞ。ハピアと共にイリシウスの強さを知らしめてやりなさい。だが怪我はしないようにな」


 おん!大丈夫、緊張なんてしていないさ!怪我する様な事なんて無いだろうし、危なかったらハピアに守ってもらうから!


「あらあら、アリスさん。可愛くなったわねぇ」


 パパさんの後ろからママさんが姿を現わす。


 ママさんは口調からもわかる通りおっとりした性格の持ち主だ。

 パパさんと同じくとても若く見えるが身長の方は彼と違って小柄な女性だ。

 髪は艶やかな黒。瞳は澄み切った黒。


 ……ハピアはお母さんに似て良かったな。

 髪も瞳も彼女にそっくりだ。どちらに似ても美形だろうが、あまり大柄すぎる女性も貴族たちには好かれないだろう。


「アリスさん、ハピアさん。社交界では無理をしすぎないで下さいね。貴方たちが傷付いてしまったらお母さん悲しいわ」


 もー、ママさんも心配性だなぁ。

 それにしてもどんな無理をしたら傷付くと言うのだろう。

 オレが立ち上がって御令嬢たちとワルツを踊ったりハピアが調子に乗ってタップダンスをするとでも思うのだろうか。

 たしかにハピアの身体能力を考えたらタップダンスを踊ったりも出来るのだろうが……。


 そういえばハピアが社交界でどんな風にしてるか見たこと無いから知らないな。

 よし!この機会にハピアの事をじっくりと観察しよう!

 大丈夫だママさん!ハピアが羽目を外さない様にオレが見張っておくよ!


『何か失礼な事を考えていますわね』


 そんな事ないさ!ハピアは気にせず普段通りに参加してくれ!


『まあ、よろしいですが。私は貴方が暴れすぎないか心配ですわ』


 オレの夢は膨らんでいく。


 華やかな社交界を夢想して。


 貴族たちのパーティが何を意味するかも知らずに。

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