その75
わたしは六神通力を全てオンにし人型となり無の境地になると、膠着状態になっている皆んなの所へとゆっくり歩き始めた。
そして、わたしがそこそこ近づくと戦いはピタリと止まり、辺りはしんと静まり返った。
「・・・リーナ・・・なのか?」
わたしは隊長の問い掛けに小さく頷き右手をゆっくり目の前に持って行くと、そこには直径1メートルほどの茶釜が乗ったまあまあ大きな輪宝が現れたので掴んで大きく振り被ると、わたしを見て何故か恐怖で固まってるっぽい魔神達に思い切り投げつけた。
ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!
バタンッ!!!!!!!
そして、茶釜輪宝は魔神達の頭に次々とぶつかり、七人はその場に呻き声さえ上げる事なく倒れたのだ。
「・・・なるほどの〜。リーナは異世界の神のスキルを持っておるのか」
「えっ!?異世界の神のスキル!?リーナって神だったの!?」
「セルディ、そうではないの。あくまでスキルだからリーナは普通に世界の住人なのよ?」
「そう言う事だ。要するに神の代理人となれる程に前世で徳を積んだ者だと言えるかな」
「だから、彼奴等は異世界の神の力なら自分達を消し去れるから恐れたと言う事ですか?」
「そうね。異世界の神の力は代理人と言えど、わたくし達と同等か、一神教であればそれ以上ですもの」
わたしとしては輪宝仕様の茶釜が異世界の神に対抗出来るのは六神通力が使えるようになってからは分かってしまっていたので、今回も最終的には負ける気は全くしなかったのだけど、わたしが金色の獣人だとバレた後の展開は全く分からなかったのが唯一の心配の種だったのだ。
わたしは男神様一家の会話を聞きながら未だびっくり顔の皆んなに、さて、いったいどうしたらいいのかと考えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リーナって本当に凄いタヌキなんだね!」
『え?』
「まあ、亜種だし?十六年も生きてる御長寿タヌキなんだし?普通じゃないのも当たり前なんじゃね?」
『え?』
「うんうん!人間に化けるのがめちゃくちゃ上手いのも納得だよな〜」
『え?』
「人型のリーナって見た目若いよな!?まあ、十六歳の人間なら普通はこんなもんか!?」
『え?』
「こんな見た目普通に可愛い女性騎士なのに中身は御長寿タヌキかぁ!そこは惜しいよなぁ!」
『・・・』
こうして、前世の実家がお寺だったから、徳は積んでないが知識はアホみたいにあるわたしの輪宝仕様の茶釜によって七人の魔神達は半人前以下の神見習いに降格し、無事に世界と騎士の皆んなの平和は保たれたのだ。
「・・・リーナは本当に可愛いな」
『・・・隊長』
「ジーク、何血迷っとんねん?リーナはタヌキやぞ?」
「・・・だが、可愛いものは可愛い」
『・・・隊長』
「うんうん!俺もその姿のリーナも可愛いと思うよ!」
『・・・ニック』
「これで俺達の言葉が喋れたら完璧なんじゃね?」
『へ?俺達の言葉?同じ言葉使ってるよね?』
「あら?リーナ、あんたはずっとタヌキの鳴き声よ〜。あたし達は聖獣だからあんたのタヌキ語が分かるけどね〜」
「まあ、リーナはタヌキなんやし、タヌキ語を話すんは当たり前やろ!」
『は?』
わたしはそこで漸く今現在人体である自分の話してる言葉がどうやら皆んなと違うのだと言う事を理解したので、どう言う事かと考えた。
そして、ハッと気づいてしまったので会話している皆んなの口元をじっと観察した。
『・・・なるほど』
わたしは会話してる皆んなの口の動きが聞こえて来る日本語とは違う動きなのをその時初めて知った事により、これが異世界転生に付きものの言語チートなのか!?と、日本語はここではタヌキ語なのか!?と、前世も今世もタヌキと喋った事は無いけど一人納得したのは言うまでもない。
その後の事はロゼルナイト辺境伯領に遊びに来たセルディによると、半人前以下の見習いとなった七人は破邪の力がある茶釜で殴られたからか、すっかり改心して再び一人前の神になるべく修行の毎日を送っているらしいので、それはそれで良かったなと思った。
「・・・それでは、これより討伐を開始する」
『はっ!』
そして、この平和な世界でわたしは今日も今日とて金色のタヌキ姿で騎士をしているのだ。
〜第一部完〜




