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ジークフリードSide〜その2

 「・・・ヴァージル。あの買い取り額はさすがに低過ぎないか?」


 「本人が自分はタヌキだと言ったのですから、タヌキからの買い取り額なら最低買い取り額の半値ぐらいが適当でしょう」


 ・・・タヌキからの買い取り額って何だよ。動物との交渉なんてした事ないだろ


 俺は先程スキップしながら金が入ったお財布カードを胸に抱いて去って行った金色のタヌキに少し同情したけど、本人は物凄く嬉しそうだったので、その場では何も言わなかった。


 「・・・あれは平民では無さそうだよな?」


 「はい、平民であればどこの国でも魔石の価値は知っているでしょうから、あの買い取り額でスキップなど出ないと思われます。ですので自分で買い物をした事が無く、働いた事も無い身分だったのでしょう。まあ、大量だったのでそれなりの金額にはなりましたが、無知であれば買い叩かれても仕方のないのはこの大陸では常識です」


 俺はヴァージルの金色のタヌキに対する辛辣だけど正論に同意するしかなかったが、もっと辛辣な常識で言えばタヌキ相手に買い取りなどしないで奪えば良いだけなので、ちゃんと金を払ってのあの金額で納得して貰うとしよう。


 ・・・何せうちは貧乏領地なのだしな


 アルドーラ大帝国の元第三皇子の俺がこの西の辺境のロゼルナイト領を賜ったのは貴族学院を卒業した二年ちょっと前で、当時からここは貧乏領地だった。


 何故貧乏なのかと言うと、他の領地に比べて農作物も畜産物も品質はそこそこで特に珍しいものもないので、どこも取り引きはしてくれなかったから自分達の食料になるだけで、食うに困る事は無いが農畜産物は領地の収入にはならない。


 そして、それなら魔獣がわんさか湧くダンジョンや大連峰の森林地帯で、この国最強の魔法騎士の称号を持つ俺や側近のヴァージルや精鋭揃いの領地騎士団が魔獣を討伐して魔石で稼ぎたいところなのだが、ここロゼルナイト領のダンジョンや森林地帯の魔獣だけは、何故か分からないが高魔力保持者でも普通に狩れて金になる上・中・下級魔獣辺りは一切居らず、特級魔獣以上と下級魔獣以下、しかも超低級魔獣が主にしか湧いて来ないのだ。


 なので、魔力に物凄く敏感な特級魔獣以上は余程鈍臭いやつ以外は姿を現さないらしいので、未だに俺も数えるほどしか見た事は無いから稼ぎようがなかった。


 そして、下級魔獣以下の低級と超低級魔獣は物凄く弱いのに物凄く好戦的で、攻撃力は無いに等しいが領民も俺達も不快なので、全く金にならないがせっせと討伐しなければならないし、所詮は超激安買い取り額のクズ魔石なので塵が積もり積もっても殆ど収入には結びつかなかった。


 そんな感じでうちはずっと貧乏だったが、一昨年の暮れに魔力隠蔽の腕輪タイプの魔法具が開発された事で高額魔獣が討伐が出来ると思い予算を割いたのだが、まあまあ繊細な魔法具らしく戦闘中に壊す者が続出し、遠征に出ても赤字にしかならなったので何の足しにもならなかった。


 だけど、今年の春に強化タイプが発売されるのを皇太子である一の兄上から去年末に聞いたので、この領地の予算の配分権を握ってるヴァージルを拝み倒して先月の発売日に購入してもらい、今回これまでで過去最大規模の討伐遠征に出たのだ。


 そして、その結果過去最大規模の大赤字を叩き出した所にあの金色のタヌキ獣人がやって来たのだから、俺とヴァージルが逃がす訳はない。


 何故なら、獣人族には魔力が一切無い事で獣人はどんな魔獣も狩り放題だからブルド王国は大陸一の魔石輸出国なのだ。


 だから、あの金色のタヌキには是非とも頑張って貰いたいと思ってる。


 その為に、国外追放刑を受けた罪人はどこの国でも騎士はおろか兵士にもなれないのだが、あれは金色のタヌキなのだから飼う様なものなので良しとする事にしたし、この先気持ち良く働いて貰う為にも、こちらも大いに努力する次第だ。

 

 ・・・って、昨日は考えたが、騎士自体を武器にされるのはなぁ。って言うか、リーナは運動音痴なのか?身体能力はあるんだろうが・・・


 今朝、俺はせっかく閃いた格好良い名前を付けてやろうと思ったのに拒否されたけど、メスなら、まあ、仕方ないだろうと思った。


 その後リーナの実力を魔法ゴーレムを出して見てみた所、リーナはあろうことかニックをぶん投げて魔法ゴーレムを破壊したのだ。


 ニックの全身強化魔法は領地騎士の中では一番なので魔法ゴーレム如きでは死にはしないしケガもする事はないが、こちらに戻って来たニックの騎士服はズタボロになっていたので、うちの領地ではまあまあ高価な騎士服をこれ以上頻繁に無料支給する事になったら、今現在隣りにいるヴァージルから漏れている怒りの冷気だけでは済まない気がした。

 

 そして、その後の訓練のウオーミングアップが全くウオーミングアップにならなかったリーナに素手での模擬戦をさせてみたら、その小さな手で殴ったら騎士達を傷つけると思ったのか、真上に飛んで大きな尻尾を振り回すだけと言う、こちらも全くリーナ自身の戦闘力の把握の為の模擬戦にはならなかったし、モフモフの尻尾が気持ち良くて癒されるのか、皆んな尻尾に自ら顔を突っ込んでいた。


 だけど、俺は対高額魔獣の戦力担当が欲しいのであって癒し担当が欲しい訳じゃないので、リーナが使えそうな武器を武器庫に見に行くと、リーナも自分の手の大きさを考えたのか女性騎士用の一番小さな、だけど破壊力はそれなりにある鋼鉄製のモーニングスターを選んだ。


 そして、それを使っての模擬戦に、まあ、ニックなら死なないだろうと指名したら、その前にモーニングスターはリーナの試し打ちで粉砕されたのだ。


 ・・・リーナの武器はオリハルコンぐらいじゃないと絶対無理だよなぁ。魔獣は強ければ強いほど普通はデカいからあの手じゃなぁ。ぶん投げるんじゃなくてぶん殴る方向に行って貰うしかないよなぁ


 こうして、俺はリーナの武器を作る為に、たぶんこれまで見た事無いけど超級魔獣が数多いる、そして、常にいる超低級魔獣がそれ以上に湧いてるのは知ってる、オリハルコンが取れるダンジョンに潜る事にしたのだ。




 

 

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