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屍食いのスライムたん  作者: 津崎獅洸


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1/2

1:あーお客さまー


「おーい」


ふっと、親友に呼ばれて振り返る。

高校を卒業後、直ぐ就職。

今やうだつの上がらないサラリーマンのアラフォーである。

手を挙げて振る。


「久しぶり……」


とんと腹に包丁が刺さる。

知り合いはどす黒い顔をしてにたりと嗤った。


「お前ばっかり」


俺が、何をした。

先日会った時だって普通だっただろ。


「なん、で」


どさりと倒れると悲鳴が伝播しスマホが向けられ、血が広がる。


「お前、出世するんだってな。お前ばっかりずるい」


なんだよそれ。

努力した結果だろ。


「いつもいつも、目障りだった。やっとお前がいなくなる!」


嬉しそうな声。霞む視界。

俺は親友だと思っていた男に殺され血を吐き、絶命した。



苦痛が無くなって目を開けると森の中だった。


「は?」


俺は立ち上がろうとして不思議なことに気付く。

ぷるんとした体。


ぷるんと、だ。


プリンか?俺は死んでプリンに転生したのか。

ぐりんと下を向くと紫色の体、足はない。ぷるぷるのなにか。

そして上を向くと緑の森の中。

動くとぽよんぽよんと回りながら動くことしかできない。


「……いやなんでもない」


思ったことがあったが何も言わずやけに森の中が明るいことに気付く。

森、と言うのはヒトの手が入らないと暗い。

上を見ても鬱蒼と樹が生い茂る中で明るいというのは、あり得ないことだ。

推察するに、俺は今、暗い中でも目が聞く状態であるということである。


目と言う部位があるかどうかは知らないが。


スライムなら念じれば人間に擬態できないかと念じてみたが何も動かない。

……俺は諦めてぷるんと動き始める。


動き続けるとどこかから怒鳴り声と血の匂い。


「お前なんか死ねばいい!!!邪魔なんだよ!!!」


あらら、怖い。

ぷるぷると動きながらその方向に向かうと上から人間が落ちて来た。


「おお、人間だ。じゃあ俺も人間に生まれ変わらせてくれよ」


そうぶつくさ言うと落ちて来た目の前の人間はこちらを見てぞっとするような美しい笑みを浮かべた。


到底、胸に穴が開いて頭を強打したとは思えない行動だった。


「私を食べろ」

「食べてどうするって言うんだ?まずそうだ」


美少女は血を吐き、笑った。


「あはははは!スライムはな、知性がない。言葉を紡げるのは高ランクのスライムだけ……お前の中で私を生かせ」

「それだけ喋られれば、無事だろ」

「無理だな。魔力を喰われた。魔力切れだよ」


冷徹に言われて、そんなもんかとぷるんとした。


「お前を食ってなんかいい事あんの」

「お前の無知を導いてやれる。こう見えても長生きでね」

「ほう、じゃ、仲良く行きましょうか」


美少女の体を自身の体で包み込みそのままごっくん。

ぽんと体が手足を生やす。食ったのは少女だったが、股間にはあれが。


「うん。お前、女じゃなかったのか」

『男だが』

「おおう……このままじゃ不審者だ。服が欲しい」


この男の知識によるとどうやらこの世界には魔法があるらしい。


「お前名前は?」

『タカオ』

「タカオか、俺は、うーんまあでも死んだしな……なんか名前つけてくれよ」

『……アタゴ』

「じゃあ俺はアタゴな」


草を集め樹の皮を剥ぎそれを合わせて魔力を込める。


「服出来た」

『服(笑)』

「ないよりいいだろぉ」


質素な服は茶色。ワンピースみたいで股がすーす―する。まあ、パンツなんて繊細な物作れない。

ただでさえこれだって、ごわごわなのに。


「あ、分かったズボン作ればいいんだ」

『雑魚め』


何で罵られたんだろう。

木の皮を集め草を刈る。

魔力を込めて魔法を使う。


出来たのは穴の開いた、ズボン。


「なんで」

『お前程度の魔力操作で作れるのはこのごわごわワンピースがせいぜいだ』

「お前~~~」

『はっ』


まあ諦めよう。

長い髪を三つ編みにして、紐で先を結ぶ。


「じゃあ、街に行こう」

『私を殺したカスがいるから無理だ』

「大丈夫だって!何とかなる」

『……はあ』


呆れたような溜息を吐かれても、俺はこの世界に興味がある。


『いいか、世界には理がある』

「ほう」

『魔法は理の内で回るものだ。魔力の根幹は世界の中心。そこにアクセスするのが近道だ』


歩きながら話に耳を傾ける。


「どうやってアクセスすんの」

『心臓を意識できるか』


心臓……ああこれだな。

とんと胸に触れる。


『そうしたら、足下から頭上に魔力を通せ』


ぐんと言われたとおりにする。


「……なにも起こらないけど」

『へったくそめ』

「ああ!?」

『魔力操作がお粗末だ。魔物に会敵したらどうする』

「話し合いで」

『低ランクの魔物は話などしない。知性は一応あるがな』

「んじゃあ、殴り合いで」

『……』


呆れたような雰囲気が伝わるが無視だ。


「この森まだ続くの」

『上から抜ければ楽だが』

「え!?浮けるってこと!?」

『は!お前の魔力操作じゃ無理だ』

「ちっなんだよお前の教え方が悪いんだろ!?」

『私が言ったのは基礎だぞ!それが出来んで何が出来る!?』


くっくそっ言い負かされた!


ずんと地面が揺れる。


「地震か?」

『あー……ドラゴンだな。走ってくる』


ドラゴンなら上から来いよ。


瞬間俺の体は浮く。その後での衝撃。


本来の順番は逆だっただろうが、吹き飛ばされた所で立ち魔力を練った。

タカオの魔法。


「【火炎の矢】」

『馬鹿』


何故か罵倒され、ドラゴンに当たった魔法は無残に霧散する。


「え、なんで」

『見て分からんか。ファイアードラゴンだ。火炎属性無効だぞ』

「かかか!雑魚じゃ雑魚じゃ!」


嗤うファイアードラゴン。皮膜のある翼で飛び上がりそこから猛スピードでこちらに突進してくる。

地面に激突。だが、先ほどと同じで痛みはない。


「?痛くない」

『最上ランクのスライムは物理無効だ。雑魚め』

「むぐうう」


じゃあ、雑魚じゃないじゃん。俺強いじゃん。


「んむう、死なんではないか。ほれ、これで死ね」


炎が見えて俺は驚き、ちりっと魔力を練る。


「【水盾】」


ぱきぱきぱきと六角形が連続しその壁の向こうに炎が迫る。

そして、霧散した。


『やればできるじゃあないか』

「うるせ」


悔しそうなファイアードラゴンは俺に噛みつく。と言うよりは、ぱくりと食べられた。


「食われた」

『こちらも食べればいい』


成程。俺は白い肌から紫の粘液を出し、内臓から食い散らかす。


「ぎゃああああああああ!!!」


悲鳴は上がったがすぐそれもなくなる。

心臓を食ったのだ、当然だ。

それから全身を食べ、骨になったドラゴンを見上げる


「おお、力が漲る。あと、美味しい」

『阿呆が』

「なんで!?」

『ドラゴンは高く売れるのに』

「……骨だよ、もう」


言うのが遅い。

美味かった。


「骨で剣とか作るか」

『剣なんか振れるのか』

「……ちっ」

『馬鹿め』

「骨は売れないの」

『売れる……どうやって運ぶつもりだ』

「……えー体に取り込んで、ぺっと出す。みたいな」

『空間魔法を使え』

「え、どうやって」


すると頭に情報が流れ込んでくる。

なるほど。これは便利だ。


ドラゴンの骨を空間に仕舞う。


「おおお!かっこいい!!!」

『馬鹿。それより翼を出せるんじゃないか』

「なんで?」


呆れかえったような空気を感じる。

なんだよ。何か言えよ。


『私を食ってヒト型を得たのだから、翼を持つ者を食えば翼を得るだろう』

「ほへー頭いいなあ」

『ものを考えろ、阿呆』


ちっ偉そうだな。


翼を出すと上に向かう。

青空が見えて森から離れる。


「お!あれが街かな」

『貿易都市トルチナ。3か国の要衝だ』

「ん?国境付近ってこと?」

『グベレラタ帝国の所有都市トルチナ。フェネラダ王国、エテラタ王国の国境に面している』

「ふーん」


そちらに向かいつつ俺は説明を聞いた。


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