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クレイモア家の再出発

セシリアはダックス辺境伯から送られた証拠書類を手に掲げ、貴族たちに見せた。

「これが、ライザの不貞とトマスの裏切り、暗殺未遂の証拠です。あなたたちは、クレイモア家の名を汚し、私の命を奪おうとした。だが、私は生きている。そして、今日、ここで正義を執行します」


「トマス、あなたはライザと恋仲になり、侯爵家の権力を利用して私との婚約を破棄した。

ライザ、あなたは公爵家との婚約を解消された後、自身の名誉を守るため、私を断罪し、殺そうとした。

『正当防衛』という筋書きで、私を排除しようとしたのね。」

セシリアの声は冷たく、しかし力強かった。


広間の貴族たちはざわめき、トマスとライザに非難の視線を向けた。

トマスは顔を真っ赤にして立ち上がり、

「セシリア、でたらめを言うな!お前がライザを虐めたからだ!」

と叫んだが、セシリアは動じなかった。


「虐め?その証拠はどこにあるの?あなたの言葉は、すべて嘘よ。

ライザ、あなたも知っているはず。

公爵家があなたの不貞に気づき、婚約を解消したことを。

あなたは早く嫁ぐ必要があったから、私を犠牲にしたのね。」

ライザは唇を震わせ、何か言い返そうとしたが、言葉が出てこなかった。


レノーラがリュートを軽く弾き、

「おやおや、反論がないようね。さすが、嘘つきは口が重いわ。」

と皮肉を飛ばした。

ルートが

「フム、ワガハイもこの展開には満足じゃ!」

と偉そうに言うと、どこからか拍手が起こり、会場を包んだ。


セシリアは視線を父、クレイモア伯爵に向けた。

彼は広間の隅で、顔を青ざめさせて座っていた。

「そして、お父様。あなたはクレイモア家の衰退を救うため、侯爵家の金に目がくらみ、私の婚約破棄に加担した。だけど、殺そうとするつもりはなかったと言うの?それでも、あなたは私を裏切った。貴族の誇りを捨て、娘を見捨てたのよ。」


クレイモア伯爵は立ち上がり、震える声で言った。

「セシリア、私は…ただ、領地を救いたかっただけだ。マックバート家の支援があれば、クレイモア家は再興できた。殺すつもりなど…」

彼の言葉は途切れ、広間の貴族たちの冷たい視線に耐えきれなかった。

セシリアは目を閉じ、深呼吸した。

「お父様、あなたの言い訳は聞きたくないわ。クレイモア家の名は、領民を守り、誇りを持って生きることでしか取り戻せない。あなたはその務めを果たせなかった。」

彼女の声は静かだったが、広間に響き渡った。

「あなたは即時、隠居してください。クレイモア伯爵家は、ジョアンお兄様が継ぎます。」


ジョアンがセシリアの隣に立ち、頷いた。

「セシリアの言う通りだ。父上、あなたはもうこの家の主ではない。領地の立て直しは、俺が引き受ける。」

彼の声は落ち着いており、貴族学院で鍛えられた知性と決意が感じられた。

セシリアは兄を見上げ、信頼の笑みを浮かべた。

ジョアンなら、祖母メリダの遺志を継ぎ、領地を立て直してくれると信じていた。


トマスとライザは、衛兵に連行され、貴族たちの非難の声に晒された。

彼らの罪は、公爵家や冒険者ギルドの証拠により、貴族評議会で裁かれることになるだろう。

クレイモア伯爵は、屋敷の奥深くに幽閉されることが決まった。

セシリアは父の背中を見送りながら、複雑な思いを抱いた。

裏切りへの怒りと、かつての父への愛情が、彼女の心でせめぎ合っていた。


パーティーの喧騒が収まり、広間は静けさに包まれた。

セシリアはレノーラに近づき、感謝の言葉を述べた。

「レノーラ、あなたの歌がなければ、こんなに鮮やかに真相を暴けなかったわ!本当に、ありがとう!」

レノーラはニヤリと笑って答えた。

「お嬢様、約束通り派手な解決編だったでしょ?これで、メリダ様も満足するわよ。」

ルートがいつも通り

「フム、ワガハイもこの結末には満足じゃ!」

と偉そうに言っていて、その変わらない様子に、セシリアは心から笑うことができた。


その時、広間の入口に新たな人物が現れた。

筋肉質で精悍な美男子、マリウス・フォン・ダックス。

ダックス辺境伯の息子であり、セシリアの婚約者だった。


彼はセシリアに近づき、優しく手を差し出した。

「セシリア、よくやった。君はクレイモア家の誇りを取り戻したよ。これから、俺たちの未来を一緒に築こう」

セシリアはマリウスの手を取り、胸を張った。

「ええ、マリウス。クレイモア家とダックス辺境伯領、共に繁栄させるわ。それが、祖母の遺志よ。」

彼女の声は力強く、未来への希望に満ちていた。

「セシリア、俺も負けないぞ。クレイモア家を、必ず立て直す。」

と、ジョアンが負けじと約束した。


セシリアはマリウスと共に、クレイモア伯爵家の屋敷を後にした。

背後には、兄ジョアンが新たな伯爵として立つ姿があった。


彼女の旅は、試練と裏切りを乗り越え、ついに一つの結末を迎えた。

だが、それは新たな始まりでもあった。

マリウスの手を握りながら、セシリアは遠くの地平線を見つめた。


祖母メリダの試練は終わったが、彼女自身の物語は、これからも続いていくのだ。

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