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憂愁のヤマダハナコ  作者: ジョニー
チャプター2 1年生編 / 二学期
39/105

S6 マリーベルの追想 3

追想の最終話です。次回から3学期に入ります。

よろしくお願いいたします。



「鍛冶ギルド?」


 私は尋ね返した。




 11月も後半、ヒナちゃんは唐突に鍛冶ギルドに行きたいと言い出した。




「そう、鍛冶ギルド。この国ってさ、脚立が無いじゃない?お部屋の内装を弄りたくても天井の中央付近が触れなくて不便なのよね。」


「マリはこの世界で脚立を見た事ある?」


「キャタツ?・・・ああ、脚立か。・・・そう言えば無いなあ。」


「でしょ?・・・この部屋のシャンデリアだってどうやって付けたんだか。」


 ヒナちゃんはリビングの天井を見上げる。部屋に設置されたランタンの明かりを乱反射させる為のガラス細工のシャンデリアがぶら下がっている。


 以前に読んだ本に方法が書いてあったな。私が説明するとヒナちゃんは感心してくれた。




「まあ、在るんなら何処で売ってるか教えて貰えばいいし、無ければ作って貰おうと思って。」


「そうだね、在ると便利だね。」


 急に予想外の事を言い出すからヒナちゃんは面白い。でも、確かに在れば色々便利かも。




 ヒナちゃんは頷くと設計図を書き出した。


「・・・ヒナちゃん、そういうの画けるんだね。ソレに脚立の仕組みも良く知ってるね。」


 横で見ていた私は感心する。




 ヒナちゃんはフフンと笑った。得意げな顔が可愛い。


「まあね。前世でお父さんの趣味が日曜大工でね。ちっちゃい頃から手伝ってたから何となく解るんだよね。」




 そっかぁ。羨ましいな。家族との思い出など殆ど無い私には、ヒナちゃんのそんな思い出話がとても眩しく感じる。


「・・・素敵だね。」


 私はそう呟いた。




 するとヒナちゃんは言ってくれた。


「マリもこれからはあたしと一緒にやるんだよ。」


「・・・」


 一緒に・・・私がヒナちゃんと一緒に。


「・・・うん。」


 私は嬉しくてヒナちゃんに笑って見せた。ヒナちゃんも微笑み返してくれる。




 この大事な人の為に、私は来月、頑張らなきゃいけない事がある。そして多分ヒナちゃんは忘れている。




「もうそろそろ12月になるね。」


 私は言った。


「だね。」


 ヒナちゃんは設計図を描きながら頷いた。


「ヒナちゃんの誕生月だね。」


 彼女の手がピタリと止まった。


「忘れてたでしょ?」


 私が囁くとヒナちゃんは頷いた。


「忘れてた。」


 本当に忘れているヒナちゃんが可愛くて私はクスクスと笑った。




「笑うな~。」


 ヒナちゃんが照れ笑いを浮かべながら私の頭を抱え込む。


「あはは、痛い、痛いよ、ヒナちゃん。」


 ああ、幸せだな。




 次の日曜日に向かった鍛冶ギルドではギルドマスターの方が対応してくれて、ヒナちゃんのアイデアに賞賛を浴びせていた。


 やっぱりヒナちゃんは凄い。




 その後、ヒナちゃんは色んな処に依頼書を送っていた。何をするつもりなんだろう?




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




「アビスコートさん。これから少しお時間頂けるかしら?」




 或る日の放課後。


 ヒナちゃんと帰ろうとしていた私にマルグリット先生が呼び掛けた。


「聖夜祭で侯爵家以上の生徒達に出し物をして貰いたくてね。ご相談させて欲しいのだけど。」


「あ、はい。承りました。」


 マルグリット先生はニッコリ笑って教室を出て行く。


 しょうがない。


「先に帰ってて。ヒナちゃん。」


 私はヒナちゃんにそう言い残してマルグリット先生の後を追った。




 会議室で高等部の生徒会長が話された内容は「聖夜祭で合奏をして欲しい」との事だった。


 この国の侯爵家以上の令息令嬢にとって楽器の演奏は必須の技能といえるものだ。王族の誕生祭などで祝福の演奏を行うのだ。


 ・・・と言うのも今は昔の話で、建国当初はそんな慣習もあったらしいけど、今では形骸化していて単なる教養の1つになっている。


 私も幼い頃にフルートの練習をさせられたっけ。良い思い出は1つも無いけど。とにかくフルートを吹けるのは私だけだったので、問答無用で私はフルート担当になった。


「フルートかぁ・・・。」


 あんまり気乗りしないけどやるしか無いか。






「ただいま、ヒナちゃん。」


 そう言いながら私は部屋に入って固まった。




 セーラさんがいる。しかもまるでヒナちゃんに躙り寄った感じで座っている。ヒナちゃんの顔は薄く紅が差している。




 なんかあった。




 直感で私はそう思った。




「セーラさん・・・いらっしゃい。」


 とにかく私は平静を装うため、彼女にそう言って挨拶した。




「お邪魔してます。マリーベル様。お帰りなさい。」


 セーラさんは穏やかに挨拶を返してくる。




「ただいま・・・。」


 私は何だか居たたまれなくなって自室に入った。




 ・・・落ち着こう。冷静に話を訊こう。何か在ったと決まったわけじゃない。


「フー・・・」


 深呼吸して私は自室を出た。




 けど、セーラさんはもう居なかった。私はキョロキョロと周囲を見回してからヒナちゃんに尋ねた。




「あれ?セーラさんは?」


「帰ったよ。」


 ヒナちゃんの目が泳いでる。




「そう・・・」


 私はそう言うとセーラさんの座っていた場所に座ってヒナちゃんを見た。




「ヒナちゃん。」


「な・・・何でしょう?」


 ヒナちゃんの目が所狭しと泳ぎまくってる。


「セーラさんと何してたの?」


「何も。」


「嘘。」


 私は何か在ったんだと確信させられてしまった。




「・・・ヒナちゃん顔が真っ赤だった。私とキスした後みたいな顔をしてた。」


「!?」


 ヒナちゃんの目が驚きに満ちている。


 嘘・・・ホントにキスしちゃったの?私はジワリと滲み出ようとしてくる嫉妬心を押さえ込んだ。


 いや、訊くまでは決めつけちゃダメだ。




「何してたの?」


 私がもう一回訊くとヒナちゃんは観念した様に告白した。


「・・・ホッペにチューされた。」


 ほっぺ・・・ほっぺかぁ・・・。私は気が抜けてハァと溜息を吐いた。ほっぺならまあ良いか。


 でも・・・。


「せっかくおまじないしたのに・・・」


 私は呟くとヒナちゃんに尋ねた。




「どっち?」


「はい?」


「どっちのホッペにされたの?」


「・・・左。」




 よし、もう一回おまじないだ。


 私はズイッとヒナちゃんに躙り寄った。




「マリ?」




 ヒナちゃんの戸惑いを無視して私は両手を伸ばし、ヒナちゃんの顔を押さえた。そして顔を近づけると左頬にチュッと口づけをしてくる。




「マ・・・マリ・・・!」


 忽ち真っ赤になったヒナちゃんを見て、私はやっと少しだけ安心する。




「うふふ、ヒナちゃん。顔真っ赤。」


「あ・・・当たり前だよ。」






 可愛く顔を赤らめる彼女に私は言った。


「ねえ、ヒナちゃん。」


「な・・・何?」


「私、ヒナちゃんの無防備さが不安だよ。・・・ヒナちゃんは気付いていなさそうだけど、ヒナちゃんはモテるんだよ?」


「・・・」


 ヒナちゃんは納得いってない顔だったけどハッとなって私を見た。




「ね、ねえ、マリ?もしかしてモテるって・・・」


 そうだよ、と私は頷いた。


「女の子に。」


 ヒナちゃんは少し悔しそうな顔をしていたけど恐る恐る訊いてきた。




「・・・因みに男の子には?」


「知らない。」


 私は首を振った。・・・でも、多分モテる。けど、ソレは言わずに話を戻した。


「もともと1学期の武術試験の時からヒナちゃんを気にする御令嬢は多かったの。それがね、リトル=スターでヒナちゃんが演じたロンディール様の姿と演技を見てファンが一気に増えたんだよ。ヒナちゃんにキスされてみたいって思ってる御令嬢は結構いるんだから。」




 ヒナちゃんは絨毯を見つめていたけど、やがて言った。


「・・・ここ、乙女ゲーの世界だよね?」


「え?・・・。・・・あ、ああ・・・そう言えば・・・そうだったね。」


 忘れていたけど、そうだった。


「・・・百合ゲーの世界じゃ無いよね?」


 ・・・ああ、そう言う事・・・。




「だ・・・だって、ヒナちゃんってカッコいいもん。仕方無いよ。」


 私は慌ててフォローを入れる。そしてハッとなった。




 私がヒナちゃんに抱く気持ちも、彼女にしている事も、百合ゲーの内容だ・・・。




「・・・ひょっとして・・・」


 訊くの怖い。違うと思いたい。


「・・・ひょっとして、私との事も本当は迷惑だった・・・?」




「・・・」


 ヒナちゃんはポカンと口を開けて私を見た。けど、突然、大声を上げた。


「な・・・!そんな訳無いでしょ!迷惑に感じるような人と・・・あ・・・あんな・・・チチクリ合う筈が無いでしょ!なんなら今すぐにだってマリとアレをしたいって・・・思っ・・・」


 ヒナちゃんは言いながら顔が真っ赤にして言葉を切った。




 私も真っ赤になる。


「チ・・・チチクリ・・・。う・・・うん。」


 そんな赤裸々な・・・。・・・でも良かった。




「・・・し・・・失礼な事を申しました。」


 ヒナちゃんが頭を下げたので


「い、いえ。と・・・とんでもないです。光栄です。」


 私も慌てて頭を下げた。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 暫くすると鍛冶ギルドから脚立が2脚届いた。


「1つはマリの物ね。」


 そう言ってヒナちゃんは1脚を私にくれた。




 追加料金は如何ほどかと尋ねたら「追加は要らない」そうだ。その代わり商品化したいから「ハナコ様に相談させて欲しい」と申し出を受けたのでヒナちゃんは快くOKしていた。


 商品化か。ハナコ家ならではのお話よね。楽しそう。




 そして更に数日後。




 お休みの日。私は午前中、合奏の練習で学園に行っていた。そして女子寮に帰ってくるとロビーに大きなモミの木が植木鉢に入ってドーンと置かれていた。


「?」


 なんだろう?アレ。




 そして部屋に帰ってくると、たくさんの飾りが入った箱が幾つもリビングに置いてあった。






「・・・」


 私はドキドキしてきた。まさか・・・。


 ヒナちゃんは私を見てニコニコ笑っている。




「ヒナちゃん・・・コレって・・・」


 私が尋ねるとヒナちゃんは頷いた。


「そう、クリスマスツリー。」


「キャーッ!ヒナちゃん素敵!!」


 私は叫んでヒナちゃんの胸に飛び込んだ。




「おふぅっ・・・!」


 ヒナちゃんから変な声が漏れてくるけど、私は構わず彼女をギューッと抱き締めた。




「さ、マリも手伝って。午後から一緒にツリーの飾り付けをするよ。」


「うん。」


 嬉しくて嬉しくて。私はニコニコ顔で頷いた。




 午後から私とヒナちゃんは脚立に跨がってモミの木に飾り付けをしていった。綿を乗せ、鈴を飾り、金粉や銀粉を塗した飾りを付けていく。偶にぶら下げる人形はもちろんサンタクロースだ。




 この世界にはツリーを飾る風習は無いしサンタクロースも居ない。でもそんなの関係無い。ヒナちゃんが用意してくれたこのクリスマスツリーを完成させる事に意味が在るんだ。


 生まれて初めてのツリー作成。私、生涯忘れない。






 いつの間にか周囲を御令嬢方で囲まれていた。




「コレは何?」


 アイナさんとフレアさん、それにセーラさんが脚立の下から興味津々の顔で私達を見上げていた。




「うふふ。聖夜祭を祝うモニュメントよ。」


「・・・!」


 ヒナちゃんが答えると3人の顔が輝く。


「楽しそう!」




「なら、飾り付けを手伝って。上はあたしとマリ・・・ーベル様で飾るから、下の方をお願いしたいのよ。」


「分かったわ!」


 3人が飾りの入った箱に走っていく。




 私は他の御令嬢にも声を掛けた。


「皆様も、もし宜しければ下の方の飾り付けをしてみませんか?」


 3人を羨ましげに見ていた御令嬢方の表情も輝いた。


「宜しいのですか?」


 私は頷く。


「勿論です。こういうのは皆でするのが楽しいですよね。」




 その瞬間、御令嬢方がキャーキャー言いながら飾りの箱に殺到していった。何しろ飾りは未だ未だたくさん在るのだから大いに楽しんで下さい。




 みんな楽しんでくれてそうで嬉しい。私とヒナちゃんは顔を見合わせてニッコリと笑った。




「最後はヤマダ様にお任せします。」


 私はそう言って、天辺の星はヒナちゃんに任せた。




 そっと・・・そぉ~っと・・・。


 金粉を塗した大きな星がツリーの上に乗っかって完成した。




「やったー!」


 夕日も沈みかかった冬の空に御令嬢方の歓声が上がった。






「大人気だったね。」


「予想以上に好評だったね。」


 興奮冷めやらぬ様子で喋りまくって自室に帰って行った3人を見送ったあと、私とヒナちゃんは一息吐いた。




「急に始めるからビックリしたよ。」


 私は微笑んでヒナちゃんにそう言った。


「ふふふ。ビックリさせたかったんだもん。最初に脚立を作ろうと思ったのは、コレがしたかったからなのよ。」


「ツリー?」


「うん、そう。マリへのお礼がまだだったなって思って。」


「お礼?」


 何のお礼だろう?私、ヒナちゃんにお礼される様な事してないけど・・・。




「そう、お礼。武術祭の前にあたしが弱ってたとき、マリは本当に心配して色々してくれたでしょ?あたし、アレが本当に嬉しくてさ。何かお礼をしたいって思ってたのよ。」


「・・・ヒナちゃん。」


 ・・・そんな前の事を。




「でね、思いついたのがマリと一緒にクリスマスツリーを飾る事。きっとマリはこう言う事した事無いんじゃないかなって思ってさ。楽しい思い出をお礼代わりにしようと・・・」




 ヒナちゃん、ずっと考えてくれていたんだ。


 そうだよ。私、前世でツリーを飾った事なんて一回も無かった。ツリーの無い年も遭ったくらいなんだよ。今日、私は生まれて初めてツリーを飾ったんだよ。貴女と。みんなと。生まれて初めて。




 堪らなくなって私はヒナちゃんに抱きついた。


「マ・・・マリ・・・?」


 ヒナちゃんの戸惑った声が聞こえる。


「ヒナちゃん。」


 私はヒナちゃんを見上げた。視界がぼやける。




「・・・とっても嬉しい。」


「え・・・えへへ。そう?なら良かった。」




 ヒナちゃんは顔を真っ赤にしながら照れ臭そうに笑った。




 私は黙ってずっとヒナちゃんに抱きついていた。ヒナちゃんもされるが儘に私の背中に手を回してくれる。胸に耳を押し当てると彼女の鼓動が心地良く耳に響く。




 どのくらいそうして居たのか。やがて私はゴソリと動くとヒナちゃんの耳元に囁いた。




「大好き。」




 誰よりも。一番、貴女が好きです。






 翌朝、ツリーの所に行ってみると、何処から持ってきたのか彼方此方にテーブルと椅子が置かれていて御令嬢方がツリーを見ながら朝のティータイムに興じていた。 




「・・・ホント、予想以上だね。」


「凄いね。」




 みんな初めて見る聖夜ツリーに感極まっている様子だ。




 和やかに挨拶をしてくる御令嬢方に私達も挨拶を返しながらロビーを出た。門にはハナコ家の馬車が待っている。




 実は、脚立が届いた翌々日にヒナちゃん宛にヒナちゃんのお父様から手紙が届いていた。


『都合の良い日に一度、実家に戻って来なさい。』って。




 何のご用件かと思えば、『脚立』をハナコ商会の新商品として本格的に売り出したいからヒナちゃんの許可が必要だと言う事だった。ヒナちゃんは恐縮しながら了承譲渡の旨をハナコ様に伝えていた。




 この方達なら・・・。私はそう思った。震える手を押さえて私はハナコ様を見た。


「あの・・・」


「何でしょう?」


 ハナコ様が柔らかな視線を向けてくれる。大丈夫。きっと、この方は馬鹿にしたりしない。


「1つ検討して頂きたいモノが在るんです。」


「ほう、それは?」


「車椅子を作って頂きたいんです。」


「クルマイス?」


ハナコ様は初めて聞く単語に理解が追いつかない様だった。




「其れはどう言う物ですか?」


「椅子に車輪を付けた乗り物です。」


 私は何とか身振り手振りを交えてハナコ様に説明する。




「ほう。・・・何故そういった物が必要なのでしょうか?」


 ハナコ様の質問に私は少しだけ躊躇った後、話し始めた。




「ハナコ様は私の家での事情をご存知かと思います。」


「・・・存じております。」


 良かった・・・。私は少しホッとして話しを続けた。


「私の母も似たような境遇でした。侯爵家には歓迎されて居なかった。そんな母は病に伏せった後、頻りに外の景色を恋しがって居りました。でも、・・・外に出してあげる手段が無かった。結局、母は外に出ることも無く亡くなりました。」






 転生した後、徐々に取り戻していった『貝崎茉璃が宿る前』のマリーベルの記憶の中で。


 母様は弱っていく中、穏やかな瞳を窓の外の庭に向けて


『もう一度、マリーベルと散歩をしたい。』


 と仰っていた。


 幼かった私は、母様を支えて外に出してあげる事も叶わず、せめて見たモノ聞いたモノを、毎日母様に話してあげる事しか出来なかった。


 せめて侯爵様が母様を散歩に連れ出してくれれば・・・。本館に近づけなかった私は、侍女達に侯爵様に伝えて貰うよう一生懸命お願いしたが、煩わしさを隠そうともせずに彼女達は断り続けていた。


 そして母様のささやかな願いは亡くなるまで叶うことは無かった。






「今になれば思うんです。座ったまま移動出来る物が在ったら外を散歩させてあげる事も出来たんじゃ無いかって。多分、世の中には私の母と同じ様な方々もいらっしゃるでしょう。足腰が弱って満足に歩けないお年寄りの方も。・・・そんな方々の足になってくれる物が在ればと思ったんです。」


「・・・」


 ハナコ様は無言で背もたれに身を預け、息を吐いた。


「・・・。」


 呆れられてしまっただろうか。車椅子を作った処でそんなに売れるとも思えないし、ましてや『厄介者』の私の願いでは御迷惑でしかないだろう。・・・やっぱり言わなければ良かった・・・。




 やがてハナコ様はマリを見た。


「マリーベル嬢。」


「は・・・はい。」


 私は緊張して返事を返す。




「・・・大変、素晴らしいお考えです。感じ入りました。そのご提案、検討致しましょう。」


 ハナコ様の目はとても優しかった。


 ああ・・・解ってくれる人がいた・・・。


「・・・有り難う御座います。ハナコ様。」


 私は嬉しさで視界が滲みそうになるのを堪えて微笑んだ。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 学園から打診が掛かった。女子寮ロビーに置いてある『聖夜ツリー』を学園の中央ロビーに移さないかというもの。


 御令嬢達の高評価が学園の運営陣の耳にも入り見に来たそうだ。


『コレは珍しい。来客にもウケるのでは無いか。』


 と算段が立ったそうだ。




 はっきり言って不愉快だ。コレを作りあげた令嬢達への配慮がまるで感じられない。




 そしてその話がヒナちゃんに直接来た。




「どうかしら?」


 マゼルダ婦人が困った様な顔でヒナちゃんに訊いている。


「はぁ・・・。」


 ヒナちゃんはポヤッと答える。




 マゼルダ婦人も御不快に思われているだろう。婦人も聖夜ツリーは気に入っていらっしゃったから。


ヒナちゃんはそんなマゼルダ婦人の心中を知ってか知らずか・・・いや多分知らないだろうけど、良い返しをした。


「・・・あのツリーはあたしとマリーベル様だけで無く、たくさんの御令嬢方にも手伝って頂いたので皆さんの意見も訊いて下さい。皆が良ければ構いません。」


「そうね。そうするわ。」


 マゼルダ婦人は良い断り文句が出来たと笑顔になって立ち去って行った。




「?」


 要領を得られずにヒナちゃんが首を傾げているので私が説明した。


「実は寮母様もツリーの移動は反対みたいなの。寮母様もツリーを気に入って下さってるから。『動かしてしまうのは寂しいわ』と仰ってたわ。」


「じゃあ、何でマリはあんなに怒った顔をしてたの?」


 あ・・・見られてたんだ。


「・・・学園は格好付ける事ばかり考えていて、生徒達の気持ちを考えてないからソレに腹が立ってたの。」


 怒り顔に気付かれていたのは恥ずかしいな。




 後日、怒り狂った御令嬢達から猛反対を喰らった学園は、仕方無く新しいツリーの発注を農林ギルドと裁縫ギルドに出したそうだ。最初からそうしておけば良かったのに。






「聖夜って何でこの日が聖夜なの?」


 ヒナちゃんが訊いてきた。


「ロンディール様がアルテナ様と結婚した日なんだって。ロンディール様はアルテナ様にガーネットのブローチを贈って、アルテナ様はロンディール様に白いパンジーの花冠を贈ったそうよ。」


「へー。」


 ・・・私のプレゼント・・・気付いてくれるかな?




「因みに今までの聖夜祭って何をしてたの?」


「王都では教会主導のミサが開かれて、後はお祭りをするらしいよ。私は行った事無いけど。」


「じゃあ、あたしと行こっか?」


 ああ・・・!なんて魅力的な提案なの!でも・・・。私は首を振った。


「多分、時間が無い。学園でも聖夜パーティーが開かれるから。」


「そっか。ソレは残念。」




 それから聖夜まで、私達は色んな人から聖夜ツリーについて訊かれたり、アイナさん、フレアさん、セーラさんの衣装を作りに行ったり。そして定期考査を受けたり。色々な事をした。そしてヒナちゃんの誕生日と聖夜祭が同時にやってくる。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




「ヒナちゃん、誕生日おめでとう!」


「おめでとう!」


 私の祝辞にみんなが続いてヒナちゃんの誕生日会が始まった。




「ありがとう。」


 ヒナちゃんが照れた様に笑ってお礼を言う。




「やっと最後の1人が14歳になったね。」


「え?・・・最後?」


「そうだよ。ヒナちゃんが最後。」


「・・・」


 ヒナちゃんは自分が1番最後の誕生日だった事に引っ掛かっている様だった。




「・・・え?・・・フレアは?」


「私、4月。」


「セ・・・セーラは?」


「私は9月よ。」


「・・・」


 ヒナちゃんは暫く黙った後、ポソリと呟いた。




「あたしが一番ちびっ子だったの・・・?」




 私達は笑い出した。


「ちびっ子って。」


「もうちょっと言い方があるでしょう?」


 もう・・・ヒナちゃん、そういう処がホント面白い。




 プレゼントに私はガーネットのブローチを贈った。・・・意味に気付いてくれるかな?・・・無理だろうな。良いんだけどさ。


 アイナさんは山吹色のスカーフ、フレアさんはルビーをあしらった小さな短剣のオブジェ、セーラさんは銀の髪飾りを贈っていた。




「へへへ。ちょっと、感動しちゃった。」


 ヒナちゃんが照れ笑いを浮かべながら目元を拭うと、みんなとっても優しい笑顔で返していた。




 そろそろ聖夜パーティーの時間だ。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 聖夜パーティーが始まった。




 私達5人は同じ格好でパーティーに臨んだ。開催が宣言されて、出し物が披露され始める。行かなくちゃ。


「じゃあ、行ってくるね。」


 私がそう言って席を立つとヒナちゃんは


「行ってらー。」


 と手を振った。




 舞台袖には侯爵以上のメンバー12人が集まり始めていた。私もフルートを持ってチェックを始める。


曲目は『しどけなき宵闇の連環』。


 昔の作曲家さんが、愛する妻失った事を嘆き悲しんで作った曲らしいけど、甘く優しい曲調と、時に物悲しい旋律が大人気の曲だ。因みに私も大好き。


 そしてこの曲にはフルートのソロがある。


 ヒナちゃんの前で上手に吹けるかな?




 指揮の先生の合図で曲が始まる。最初はフルートから。私は指揮棒に合わせてフルートに息を吹き込み静かに吹き始める。それに合わせて他の楽器も参入してくる。


 静かな曲調が次第に陽気なモノに変わっていき、やがてソレはもの悲しさを帯びていく。




 学園祭の時とは違って夜の講堂であるため太陽光を使ったライトは利用出来ない。キャンドルライトと壁に据えられた照明の炎しかない。そして観客の周りの炎は全て消されている。その薄暗い講堂の中で私達12人は演奏し続ける。




 演奏が止まり、私以外の全員が楽器を置く。




 ヒナちゃん、聴いていてね。


 私は1人フルートを吹き続ける。妻と死別した主人公が光りを見失った世界で、それでも天国で愛する人と再会する事を夢見ながら生きていく事を決意するシーンだ。




 愛する人と別れる・・・なんて辛い事なんだろう。私はヒナちゃんを思い浮かべながらフルートを奏でる。私は別れない。ずっと側に居る。貴女の側に。涙が流れそうになって私は目を閉じた。




 ソロのシーンが終わり、曲はクライマックスへ。・・・そして終了した。




「ヒナちゃん、ただいま。」


 侯爵家・公爵家の皆さんに挨拶を済ませると、私は舞台袖から降りてヒナちゃんの所に戻った。


「お帰り。」


 あれ・・・?ヒナちゃん、泣いてた?


「どうしたの・・・?泣いてたの?」


 私が尋ねるとヒナちゃんは恥ずかしそうに笑った。


「アハハ。マリのソロが綺麗過ぎてなんか感動しちゃったよ。恥ずかしい。」


 サンタの衣装を着たヒナちゃんの、その照れ臭そうな表情が愛らしくて、そして私のソロに感動してくれた事が嬉しくて。今すぐにでもキスをしたくなったけどグッと堪えて


「ヒナちゃん・・・嬉しいよ。」


 私も顔を火照らせながら笑い返した。




 その後、私達5人はお揃いのサンタコスチュームでパーティー会場を楽しんだ。


 ヒナちゃんの希望で手にしたチキンのお皿を手にして私達は口に頬張った。




 クリスマスと言えばチキン。そんなイメージが私にはある。前世でクリスマス前に流れていたフライドチキンのCMのイメージなんだろうけど。本当は骨付きチキンに齧り付いてみたいけど、流石にソレは無理だろうなぁ。






「セーラ。」


 その声に私達が振り向くと、4人ほどの御令息が立っていた。なんだか不満そうな視線をセーラさんに送っている。


 なんだろう、と思って見ていると、どうやらセーラさんと一緒に回れないのが不満らしい。




『誘っただろ』


『他の方と回ると言った筈ですけど』


『俺達は了承していない。』




 要約するとそんな感じだった。




 ・・・御令息達は随分と一方的な事を仰っているな、と思う。セーラさんも迷惑そう。このまま彼らに連れて行かれてしまうのは彼女が可哀想だ。私達はセーラさんが断れるように助け船を出した。更にタイミングの良いことにフレアさんとアイナさんを探しに来たエルロア様とエリオット様、それにリューダ様達がやって来て御令息達は引き下がってくれた。




 まあ・・・セーラさんは美人だから誘いたくなる気持ちは解るけど・・・今はムリだと思う。だってセーラさんは今、ヒナちゃんに興味が在りそうだから。


 それにしてもセーラさんも大変だなとは思う。ああいう事は多分、一度や二度では無いはず。その度に断ったり連れ回されたりしたのだろうか。


 マリーベルも美人だ。ソレこそ『貝崎茉璃』が息を呑むくらいの。意味の無い仮定だけど、もしもマリーベルが何の瑕疵も無い令嬢だったら、セーラさんと同じく窮屈な想いをしていたのかも知れない。そう思うと、ヒナちゃんと楽しそうに話すセーラさんの普段の想いが理解出来てしまい、少し同情してしまう。




「セーラさん。」


 リューダ様にヒナちゃんを取られて少しだけ不満そうな顔をしているセーラさんに私は話し掛けた。


「はい?」


 此方を見るセーラさんはやっぱり綺麗だ。清楚系の美人と言えば良いのかな?着物がとても似合いそうだ。私は少しだけ頬を火照らせながら微笑んだ。


「楽しいですね。」


 セーラさんはちょっとビックリした様な顔をしていたけど、やがてフワリと微笑んだ。


「はい。皆さんとパーティーが過ごせてとても楽しいです。」


 そしてセーラさんは私の手をキュッと握ってきた。


「え?」


 私は戸惑ってセーラさんを見上げる。


「それに、私、マリさんとも仲良くしたいなって思ってるんです。」


 ダイレクトに面と向かって言われると恥ずかしい。でも嬉しいな。


「はい、私も仲良くしたいです。セーラ様。」


 微笑む。


「でも、ヒナちゃんは譲れませんよ?」


「あら、負けませんよ?」


 2人で宣戦布告の微笑みを向ける。




 そして2人でヒナちゃんを見ると、ヒナちゃんとリューダ様が微笑み合っていた。・・・そうだった。強敵は此処にも1人居たんだった。


 私達を見て、ヒナちゃんがオドオドした様な表情になる。「なんでそんな顔してるの?」って言いたげな表情だ。




 やがて聖夜パーティーは、今学期の終了を告げらると共にお開きになった。




 ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆




 ロビーで話の流れからヒナちゃんは聖夜ツリーに変わる何かを飾る事を約束させられていた。相変わらずの巻き込まれ体質が心配だ。




 部屋に戻るとヒナちゃんはクタッとコタツに潜り込んで突っ伏した。だいぶ疲れていそう。


 ・・・どうしようかな?私は悩んだ。本当はもう1つ、ヒナちゃんに渡したい誕生日プレゼントがある。でも、ヒナちゃんがホントに疲れてるんなら渡すのは諦めた方が良いのかも。




 私は少しでも元気になって貰えればと、紅茶にハチミツを落としてヒナちゃんに勧めた。




「あ、甘い。美味しい。」


 ヒナちゃんが呟く。


「ハチミツ入れたんだ。ヒナちゃん、疲れてるみたいだったから。」


「あー嬉しい。」


 ムニャムニャとトロンとした表情でヒナちゃんは言った。


 ・・・眠そうだな・・・諦めようかな・・・。




「もう寝る?ヒナちゃん。」


「そうだね。」


 ヒナちゃんは伸びをしながら言った。ヒナちゃんの柔らかそうな胸が強調される。




 やっぱり諦めたくない。だって今日はクリスマス=イブなんだから。そしてヒナちゃんの誕生日なんだから。




「・・・今日は私のベッドで寝よう?」


 私は覚悟を決めて言った。臨機応変に行こう。ホントにダメそうならキッパリと諦める。




「あ、いいね。マリのベッドはフカフカで気持ちが良いから。」


 ヒナちゃんは無邪気に無防備無いな笑顔で賛成してくれる。私は真っ赤な顔で微笑んだ。




「うん、じゃあパジャマ持ってきて。」


「OK」


 ・・・良かった。何の疑問も持たれなかった。




「マリ、サンタコスは此処に置いておいて良い?」


 ヒナちゃんが訊いてくる。




「・・・うん。」


 私はドキドキしながら頷く。




「OK」


 ヒナちゃんは上を全部脱ぎ捨て、下のスカートも脱いだ。ヒナちゃんの真っ白な肌が私の前に露わになる。・・・今日は白の下着なんだ。頬が火照ってくる。そして彼女がパジャマを手にした時、私は後ろからヒナちゃんを抱き締めた。




「マ・・・マリ!?」


 ヒナちゃんの動きが止まる。そっと胸に手を当てると彼女の心臓がドキドキしてるのが解る。よし、言うぞ。




「ねえ、ヒナ。」


 私は少し背伸びして彼女の耳元に囁いた。




「今日はこのままのカッコで寝よ?」


「・・・。」


 ヒナちゃんの耳がドンドン赤くなっていくのがわかる。




「・・・うん。」


 ヒナちゃんは頷いた。




 ・・・よかった。




 私はは部屋の明かりを消すと、衣装をシュルリと脱いでベッドに潜るヒナちゃんの隣に入った。






「・・・」


 私の心臓がドッカンドッカン突貫工事を始めている。隣には裸のヒナちゃんが居る。恥ずかしすぎて横が見れない!




 自分で仕掛けておいて今更だけど、私凄いことしてる。




「・・・」


 緊張しているのか黙って天蓋を見つめるヒナちゃんに私はポソリと言った。


「楽しかったな・・・。聖夜・・・。」


「・・・そうだね。」


 ヒナちゃんはそう返した。




 楽しかった聖夜祭までの数週間。あんなに楽しかった日々はもう戻ってこない。さっきまでの盛り上がりから一転して私は少し寂しくなってしまった。


「何か寂しい。」




「また、楽しい事をやれば良いんだよ。」


「え・・・?」


 ヒナちゃんは私を見ていた。


「楽しかった事も、今感じてる寂しいって気持ちも、全部忘れないように大切に胸に仕舞って。また、新しい思い出を作っていけば良いんだよ。」




 そしてヒナちゃんは言った。


「2人で。」


 ・・・2人で。私の中にその言葉が染み込んでいく。そうだ、この人が側に居てくれる限り私に寂しさが訪れることは無い。


 そしてそんな言葉をくれる彼女に心からの愛しさが込み上げてくる。




 私は微笑んだ。


「うん。2人で。」


 ヒナちゃんは私を見つめる。




 私は堪らなくなった私は身体を動かすとヒナちゃんにすり寄った。そして以前にも伝えた言葉をもう一度彼女に囁いた。




「大好き。」




 ヒナちゃんは頬を紅く染めながら微笑んでくれる。


「・・・あたしも・・・大好きだよ。」






 私は美しい彼女の肩越しに腕を伸ばしていき、優しく抱き締めた。顔が近づく。もう我慢出来ない。




「ヒナ。」


「なに?」


 私は伝えた。


「私、もう1つヒナに誕生日プレゼントを用意してるんだ・・・」


「・・・」


 ヒナは黙って私を見つめる。


「受け取って?」




 ヒナの顔が真っ赤になる。多分、伝わってる。彼女の綺麗なダークレッドの双眸が潤んだように見える。そして恥ずかしそうに囁いた。




「・・・うん、頂戴。」


 恥ずかしい。でも嬉しい。私は照れ笑いをした。




 そして。




 私はヒナの紅色の唇に自分の唇を重ねた。温かくて、少し湿っていて。そして甘い。


「・・・甘い・・・」


 ヒナが微笑んだ。


「さっきハチミツ入りの紅茶飲んだから・・・」


 ヒナの可愛い微笑みに私は恥に噛んでそう返した。




 衝動が沸き起こって私はグイッとヒナの身体を抱き寄せ、身体をピッタリとくっつけた。お互いの膨らみが擦れ合って私達はビクリと身体を震わせる。




「・・・!」


「・・・ビックリした・・・」


 ヒナが恥ずかしそうに呟く。


「うん・・・。」


 顔が熱い。でも・・・。


「でも・・・」


「?」


「・・・気持ち良かった。」


 私がそう呟くと今度はヒナがこれ以上は無いってくらいに真っ赤になって頷いた。




「うん・・・。・・・ねえマリ。」


 ヒナの呼び掛けに私は彼女を見た。


「うん?」


「・・・もう1回、しよ?」


 嬉しい。恥ずかしい。でも私ももう1回したい。私は俯きながら頷いた。


「うん。」




 私達はお互いに腕を相手の背中に回すと、今度は静かに身体をくっつけた。ヒナの膨らみに私の胸がくっついて身体がピクリと震える。もう1度擦り合わせると、更に敏感に感じてビクンと身体が跳ねる。




 先程のヒナの下着が脳裏に甦る。そして私も殆ど裸も同然だ。その恥ずかしさと背徳感の相反する気持ちが私の中に湧き上がる。そのせいも在ってか息が荒くなっていく。




 ヒナは私の頭に手を伸ばして引き寄せ唇を重ねた。私もヒナの欲求に精一杯応える。




「は・・・あ・・・」


 声にならない声がどちらからとも無く漏れていく。




 私はヒナの脚に自分脚を絡めた。ヒナの滑らかな素足に初めて触れ合う。サラサラと心地良い肌触りの彼女の脚が堪らなくて擦り付ける。ヒナが身を捩らせた。




 ヒナの唇に、胸に、脚に翻弄されて私の心はヒナの全てに絡め取られていく。




「マリ・・・。」


 ヒナが私の名前を呼んで抱き締める。




「ヒナ・・・。」


 私はウットリと彼女の耳に愛しい名前を囁き掛ける。




 私は今までで一番強くヒナを感じる事が出来た。




 それから私はヒナの唇を奪い、彼女の胸を手で撫でながら彼女の身体を貪った。私の行為に仰け反り喘ぐ彼女がとても愛おしい。


 そして彼女も激しいキスを私に返してくれ、その靱やかな手が私を弄る。




 ・・・どのくらいの時間そうしていたのか。長かったようで短かったような。私達は息を荒げて仰向けになった。お互いに離れる相手の身体に若干の寂しさを覚えながら。




「・・・凄く温かかった。」


「うん。」


 ポツリと呟いてコクリと頷く。




「マリの胸、大きくなったね。」


 ヒナちゃんがポツリと呟いた。


「もうっ。そう言う事言わないで。恥ずかしいから。」


 私は赤くなって言う。




「へへへ。」


 ヒナちゃんは笑いながら私の手を握った。




「ヒナちゃん?」


 私が首を傾げるとヒナちゃんは微笑んだ。


「2つ目のプレゼント・・・凄く嬉しかったよ。」




 ・・・良かった。喜んでくれて。私は心を込めて言った。


「ヒナちゃん。14歳の誕生日、おめでとう。」


「ありがとう。」




 ヒナちゃんのこんな笑顔を見られて私は幸せだな。





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