乱闘中
先程の会話をしたせいか、お互いに口を開かなくなる二人はアゲハ達を探すため、森の中をさ迷っていた。
「……」
「……」
会話の声が聞こえない分草木を掻き分ける音や、動物達の鳴き声が耳に入っていた。
ライムは先程の話を思い出しながら、ライトの背中を見ていた。
(さっきの事ほんとなのかな、でもそんな風には全然見えないし……うーん、でもお母さんって何か懐かしいな)
そんなことを思いながらもはぐれてしまった二人の事を心配していた。
先程より霧は晴れたが、森の中だからか薄暗く、先程みたいに急に何かが飛び出して来そうな気がして、ライムは辺りを気にする。
「……ほらまたそうやって」
「え?」
ライムが声に反応し振り返ると、剣が降り下ろされようとしていた。
「!」
間一髪の所で免れたが、いきなりの事で驚き、ライトの顔を見る。
「隙だらけですよ」
「な!」
にこりといつも通りに笑いながらゆっくりと迫ってくるライトに恐怖を覚え、少しずつ後退りをしながら、必死にライトに訴える。
「ライトさん! どうしてこんな事!」
「うーん、それはほら成り行きですよ、貴女を殺せばこのゲームから出られるかもしれないんですよ? 誰だってこの状況だったらこうするのでは?」
(騙された!)
ライムはその答えを聞きそう思ったがもはや遅い……相手は着々と距離を詰めてきているのだ。
「さぁ、行きますよ」
にこりと微笑むライトを見て、顔を俯かせ拳をぎゅっと握りしめる。
メニュー表を出すと何かを決意した様に顔を上げ鎌を取り出し前に構えた。
「! ……こんな所で……死んでたまるか!」
鼻で笑いながら一気に距離を詰めてきたライトに武器を装備しライムも構える。
カキーン!
鎌の部分でライトの剣を受け止めるとそのまま両方で押し返し、一気に走り出す。
「絶対殺す!」
「絶対死なない!」
鎌を横に振りながらライトに向かって振りかかる。
だがその攻撃は相手には当たらず、武器を押さえられ、剣を突き刺す。
顔面スレスレの所でライムはメニュー表からもう一つの小さなナイフを取り出し、それで剣を防いだ。
その間に押さえられていた鎌を引き、相手がバランスを崩した所を狙い、一気に鎌を振り下ろした。
「甘いですね」
だがその攻撃も難なくかわすと軽くあしらわれ、頭に向けて一直線に振り下ろされる。
「!」
避けようとし後ろに下がったが、肩を切られ血が吹き出す。
必死に声を堪えたが、左肩からは血が流れ指先から滴り落ちていた。
「楽勝ですね」
「これじゃ……」
余裕ぶった様に剣を引きずりながら歩いてくるライトを警戒しながら作戦を立てていると相手は鼻で笑う。
「だからそういうところが」
一気に走ってライムの目の前まで来ると剣を振り上げた。
「隙だらけなんですよ!」
(もうダメ!)
瞼を強くとじ、反動で腕が動き何かを突き刺すような鈍い感覚を右手に覚えた。
数秒たって何も起こらない事に気付き、ゆっくりと瞼をあける。
「!」
自分の目の前には赤く染まる地面があり、上を向くとライトが仁王立ちをし、にこりと笑っていた、だがそのまま首だけがライムの目の前に生々しい音を立てて落ちてきた。
「ヒ!」
「あらら、これは一本取られましたね」
生首のまま喋りながらこちらを振り向くその姿は何とも不気味でライムは後退りすると一気に走り出した。
「いやぁぁぁぁああ!!!」
「逃げるなんて卑怯ですよー」
悲鳴を上げながら走っていると、後ろの方から生首を持ったライトが追いかけてきているのを見てライムは先程の強気とはうってかわり、涙目になりながら悲鳴をあげていた。
「誰だってこんな状況じゃ逃げるに決まってるだろーがぁぁああ!!」
「やだなぁ、ライムさん止まってください、なにもしないですから」
「さっきあたしを殺そうとしただろうかぁぁああ!!」
「やだなー、冗談ですよ! だーかーらー
さっさととまれぇぇぇええええ!!!」
後ろから思いっきり飛び込み、ライムの背後に目掛けて剣でぶった切る。
「いったぁ! 何すんだよ! おらぁあ!」
血が吹き出す中、血塗れになりながらも振り向き思いっきり鎌をライトの下腹部に通過させ、またもや血飛沫を浴びる。
「はぁ、はぁ……!」
肩呼吸をしながらデリートされていくライトの無惨な姿を見て正気を取り戻したのか、思い付いたかのようにその場を後に走り出した。
走って走って、血塗れの頬には涙が流れていた。
ライムはその涙を拭おうとはしなかった、何故なら今の感情を忘れてはダメだと思ったから、また同じことをしないようにそう心の中で誓っていた。
背中や肩の痛みよりも心の痛みの方が何倍も何百倍も痛くて悲しかったから、今は走るだけが精一杯止まってしまったら何もかもがダメになる気がしてしょうがない。
闇雲に走り続けていると暗闇から光が指したように急な明るさがライムを包み込んだと思い顔をあげると何かにぶつかりそのまま地面へと倒れ込む。
「……ったいなぁ……!?」
「ライムさん! 大丈夫ですか?! どうしたんですか!? その姿!」
目の前にはライトだけでなくマカやアゲハも一緒にいた。
目を丸くして驚き会う四人に暫しの沈黙があり、そのあとライムはゆっくり立ち上がった。
「ライム!? 大丈夫なの!? 何があったの?」
「おい、血だらけじゃん!」
「すみません、すみません、私全然ライムさんのこと見つけられなくて」
ライトが触れようとした瞬間、睨み付けながら手を思いっきり払う。
パシッ!
「!」
どうしたのかと思い驚くライトにライムは睨みを効かせたまま、鎌を装備し突きつけた。
「ライムさん!?」
「あんたには色々と教えてもらった……だから用はない、今すぐあたしの目の前から失せて! さもなくばもう一回この手で……!」
ライムは途中で話すのを止めると、鎌を持っている手に力を込めた。
微かに揺れるその両手はライムの心を表しているようだった。
「ライムやめて! どうしたの?!」
ライムの目の前に立ちはだかるマカを見てさらに揺れ始める心に渇をいれ、思いっきり鎌を振った。
だが当てようとしたのではなく、ただの脅しにすぎなかった。
「……マカには……関係ないことだから……放っといて!」
「そんな……」
「おい! どうしちまったんだよ! ちゃんと話せよ!」
「あんたにはもっとかんけーない!」
「もっとをつけるなよ」
ショックを受けるマカを横目で見ると一人城へとあるきだし、皆にこうつげた。
「……あたしが、終わらせる……」
最初は小言の様に口ずさむと皆の視線が一気にライムに注いだ。
「あたしが! このゲームを……終わらせる!」
皆にそう告げると、ライムは一人走っていた。




