二人の距離
夢を見た。
いつの事だろう。
また忘れない…あの夢を……見たんだ。
「あれ…。」
気がつくとそこは宿場だった。
俺は重い体を起こし、辺りを目で見渡す。
「俺…何で。」
頭がボーッとして、今は何も考えられない。
その時、一番奥の扉が開き、ライムと目が合う。
「あぁ、気がついたか…大丈夫か?」
「んー、大丈夫…だと思う。」
「そうだよな…あんまり無理するなよ。」
「おぅ。」
ライムはアゲハの横に置いてある、お客さんようの椅子に座り、何をすることなく窓ぺを見ていた。
「…」
「…」
お互いまだ整理がついてない、そんなことはよく分かっている。
「ねーちゃんとマカは?」
「ライトさんは今治療中で、マカが付き添ってる。」
「そっか…」
亦会話が途切れた。
ライムも内心焦りながら、とにかく何かを話してこの重苦しい空気を無くしたいと思ってはいるが、なかなか話を切り出せないでいた。
(…あたしがなんとかしないといけないんだ…、ど、どうしよう。)
「な、なぁ。」
「…何だ?」
「え、えっと、何か飲むか?」
「…いらねーよ。」
「そっか…」
(いやいや待て!!どうする!?向こうはどんよりモードだし…まー、そうなるのも仕方ないけど…でもこのままじゃ…)
焦りで目が回りそうになるのを堪えながら今にも押し潰そうとしている空気に負けそうになる。
「あのさ。」
「何だ。」
「何か、食べる?」
「…今は何も欲しくねーよ。」
「あ、そっか。」
(もーダメだ)
潰される。
このままじゃ…この空気に潰されてしまう。
「あのー。」
「…は?」
「時間かかるって言ってたし…外にでも出てみるか?…そのぉ、キバラシニ…。」
表情一つ変えずに受け答えをするアゲハに何故か棒読みで、外へと誘い出そうとしたが、やはり気が向かないのだろう…首を横に振り、悲しそうな顔をしていた。
(こんなアゲハを見るの…初めて…なんとか元気になって欲しいのに…どうすれば。)
今マカとの出来事を話すと余計に落ち込ませてしまう。
「えっとー。」
「はー、何なんだよ…さっきから。」
アゲハは少し怒りながらライムの方を睨み付ける。
「あのさ、いつまでもさここにいても何も…その出来ないし…外にでも行かないか?新しい武器とかも買っといた方が…良い…と、思う。」
「…一人で行けよ。」
「あたし一人じゃ…その、あれだろ!?どれが良いか分からないだろ?アゲハも武器が切れてるし、買っといた方が良いと思う…よ。」
アゲハはライムに睨みをきかせると、溜め息を吐きながら怠そうにベッドから立ち上がる。
どうやら一緒に武器屋へ行ってくれるみたいだ。
宿場を出て、賑わった町に出るとさっきの空気が少し軽くなった様な気がする。
アゲハは膨れっ面をしながら目をそらして歩いているが、ライムは少しほっとしていた。
武器屋にたどり着き、武器を購入するときも無言で指を指すだけで、何も言わなかった。
(あぁ、何か、ダメだ。)
武器屋を出ると、アゲハから声を出す。
「俺もう宿場に戻るぜ…。」
こちらの答えも聞かないうちに背を向けて歩き出すアゲハの腕を無意識に掴む。
「まっ!」
「…なんだよ…離せよ。」
「…そ。」
「?」
「そんなに暗い顔してたら…ダメだよ。」
「ライムには関係ねーだろ!」
「ある!大有りだ!だいたい今宿場にいても、何にもならないだろ?」
「…そんなの。」
「…?」
「そんなの、分かってるさ!!でも、」
俯きながら、両手を握りしめるアゲハに少し戸惑ってしまうが、やはりいつもとどこかおかしい。
「分かってるけど…ダメなんだ…俺…。」
「だ、ダメなんかじゃ…」
「俺は何も出来ないけど…でも、今はそれ以外何も思い浮かばないんだ!!」
「…こ、ごめん…。」
「ねーちゃんがこうなったのも…元は俺のせいなんだ…。」
「え…。」
「俺が…こんなゲームやろうっていったから…だから…ねぇちゃんは…。」
「そ、そんなこと無い…」
「ねぇちゃんはきっと俺の事怒ってる。」
「…怒ったりしないと思う。」
「はぁ?なんで、そんなことが分かるんだよ!!」
「…なんとなく…まだ会ったばかりだけど…ライトさんは優しいよ…それはアゲハが一番よく知ってるんじゃ無いのか?」
「…そこがダメなんだよ…。」
「?」
「ねぇちゃんは確かに優しい…でもそこがダメなんだ…。」
「…え?」
「俺は分かるんだ…ねぇちゃんは本当は…俺の事嫌いなんだ。」
「な、なんで、そんなことがわかるんだ?!」
「分かるさ!」
声を荒げ、顔を上げたアゲハの瞳には涙が貯まっていた。
「…何が会ったのかは知らないけど…決めつけるのはよくないと思う、とにかく行こう!!今はこんなところにいる場合じゃない。」
「お、おい!」
走り出したライムの瞳には光が映っていた。
(何とかして元気付けないと!)
がんばる二人に希望の光は差すのだろうか…




