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繰り返しのゲーム  作者: 赤ずきん
繰り返された未来
22/74

占いの家

新しい町は都会的で人で溢れかえっていた。


見渡す限り、高い建物ばかりで、建物と建物の隙間からはきれいな青空が見え隠れしていた。


スカイタウン


別名空に伸びる町。


天高く伸びる建物はまるで空に向かって伸びているようだ。


そんな町の門を四人は入っていった。


そのとき、門の横にあった掲示板に目が止まる。


どうやらこのまちにある施設の案内や観光名所みたいなのもあるらしい。


「色々とあるなー…、回ってみるか?」


ライムも広告を見渡しながら提案をする。


「楽しそうで良いと思いますよ…?この占いの家とか楽しそうですね♪」


ライトが隅っこにある小さな目立たない紙切れを指差す。


乱雑に切られた白いかみに《冒険者はよっといで!あなたに一番最適な武器を教えます。》

とだけかかれた紙が貼ってある。


「うわー!楽しそう!ねー!いこうよー!」


マカも読んだとたんに目を輝かせ、横にある古い地図をみて、場所を確認する。


「武器かー、まー俺はこのままが一番に決まってるな♪」


アゲハもマカの横で地図を確認すると、意外にもそこは近いことが分かり、四人は占いの家を目指すことにした。


門を入ってから10分ほど歩いた所にそれはあった。


回りの建物は皆高いがなぜかそはの家だけは古くさく、窓ガラスに埃がたまって、 玄関には掃除用の藁のホウキが転がったままだ。


しかも屋根の上には床板を剥がして繕ったような板で、《占いの家》と細い時でかかれていた。


しかも傾いている。


見た目から推定してショボそうだ。


「おおう、何か、それっぽいよ!」


「…こんな都会にこんな建物どう見ても似合わねぇな…」


「…インチキそうですね。」


「インチキだったらぶっ飛ばす。」


個々に思うことはあるが、とりあえずは入ってみることにした。


薄暗い廊下の端には、ゴミなのか道具なのかわからないくらいものが乱雑に置かれ、一種のゴミ屋敷状態だ。


廊下の向こうは変な置物ばかりがこちらを向いて置かれており、その向こうに扉が見えた。


「まさに悪趣味だな。」


アゲハは薄気味悪い置物の一つを手に取りつつくと、置物についていた埃を吹く。


ふわりと置物の周りが白くなり、何日も掃除されていないことが分かる。


置物を置くと、マカが扉を開き始めていた。


固く重い扉を開けると、そこには一人のおじいさんがシャツのまま床に寝転がっていた。


「すみませーん!占って欲しいんですが…」


ライトはおじいさんにカウンター越しから声を掛ける。


おじいさんもその声に反応し、大欠伸をしながら席に座った。


「なんや、まだ、新聞の集金の日やなかろがな。」


「いや、占って…」


「それともあれかいな、家賃の集金か?もう今月は払わへんで!来月も払わん!」


「…。」


四人はなにも言わず戻ろうとした時だ。


おじいさんは近くにあった眼鏡をかけ、まじまじと四人を見る。



「…て、あれ?お客はんか、しもーたなー、ワイはてっきりいつもの手口かと思たわ!!よー、きたなー、まー、そこにすわりなはれ。」


ようやく占いをしてくれるのかカウンター越しに椅子を四つ並べ、上に積もった埃を払うとそこに座るよう誘導する。


「いやー、お客はんなんて久しぶりやからなー♪ほんとすまんなー、んで、誰から占ったろか!?」


身を乗り出しながら目を輝かせる老人の顔は一気に明るくなり、いきいきとしていた。


「はいはーい!あたししてほしいー!」


元気よく手をあげるマカはおじいさんと向かい合わせに座り、期待でいっぱいだった。


「お前さんは今はどんな武器をつこうとるんや?」


「あたしはねー!黒魔法を使ってまーす!」


「そがいなか!そんやった、この町にはたくさんの黒魔法を教えてくれる人がおるけー、そいつらにまたおしえてもらったらエエわ、黒魔導師やな、ふむ、あんたに一番よう似合ったるでー、じゃがな、魔法の使いすぎには注意せーよ。」


「はーい!」


「ほい!次!」


マカはスキップしながらもとの場所に戻る。


スキップするごとに埃が舞い上がり、やはりこの老人の言う通りあまりお客は来ないのだろう。


「んじゃ!俺!」


アゲハも老人と向かい合わせに座り、おじいさんはアゲハが前に座ると鼻の下を伸ばして顔が緩くなるが、口元で手を組み、隠しているようだ。


嘘臭い咳払いをしながら赤面した顔を隠し、話を続けた。


「ん、で、で、そのあんさん名前は?」


「ん?アゲハ。」


マカには聞かなかった質問が出てきたため少し不思議そうな顔はしたもののアゲハは占いをまだかと待ち望んでいた。


「ほ、ほんで?あんさんは武器は何をつこうとるんや?」


「剣。」


「ワッツ!!剣!あんさん見た目から想定出来へんわ…その剣本間に使いこなせとるんかな?」


驚きを隠せず立ち上がる老人を顔色ひとつ変えずアゲハは見ながら淡々と答えていく。


「使いこなせてるって?」


老人は深呼吸をすると、もう一度同じ姿勢で座り直す。


「良いか?アゲハはん!あんさんはどう見てもや!剣を使うような容姿やない!世の中にはジョブゆうてな、なんや使いこなせるものゆうて、種類があるんやで?」


無言のまま頷くアゲハを時々確認しながら老人は話を続ける。


「ほんでや、アゲハはんの容姿からして!あんたは音使いがええ思うんや!!」


「なんだ?音使いって…」


頭の中で色々と想像しては嫌そうな顔しか見せないアゲハに老人は首を振る。


「いいか?音使いちゅうのはな?さまざまな音を駆使し 、仲間を回復させたり、隙を作ったり…いわばサポート的なやつやな、使い方は人それぞれやがな…なかには相手を即死させるようなことも出来るらしい、まー、そのかわりに?体力の消耗が早いんやがな、どうや?今からでもおそない!音使いにならへんか?」


「なるって言われてもよー、どうやってなるんだ?」


「あんさんは元々のジョブが音使いやからいつでも使えるはずや、それを積み重ねることによって!使える用途も広くなる。」


「ふーん、やってみるかなー。」


「よしゃきたー!!!そしてわしとはぐしてくれー!」


老人は話終えるとアゲハに向かって唇をつきだしながら覆い被さろうとする。


「うわ!キモい!」


反射的に体を避け、後ずさりをする。


「なんでやー、キモくないがなー。」


乙女なポーズをして目をうるうるさせる老人にアゲハはチョップをかわす。


「俺はホモじゃねー!ホモでもお前みたいなやつ誰も相手にしねーよ!」


「アゲハ!そんな趣味が?」


ライムはそういうと、表情はいつもと変わらないがゆっくり2・3歩後ろへ下がる。


「待て!ヤメロ!俺違うから!断じて違うから!あー!もー!ホモホモうるさいわー!」


「ええいもうどうでもエエわ!ワイと付き合ってくれーーー!」


「やめろーーー!」


必死に抱きつこうとする老人を振り払いライトの後ろへ隠れると殺意の眼差しで老人を睨み付ける。


「 もう、シャイなんやからーん!」


「シャイじゃねー!」


「んー、じゃ!またお預けね!」


乙女チックな声色を出すと、また先程の場所へもどり、座り込む。


「次は?誰や?」


「ラ、ライトさんいきますか?」


「あ、じゃあ、このまま占って頂ければと。」


「いや、ワイは男に興味はあらへん、ええで、座っても。」


少し覚めた顔を見せる老人は指で合図を送る。


ライトは近くにあった椅子にすわり、「ここでいいです」と断りを言う。


「で、あんさんは?何使っとるんや。」


「槍を使ってます。」


「うむ、あんさんは見たところどっちでもいけるなー…あんさんは剣術師やな、槍もいけるかもしれへんが、剣の方がええ思うで。」


「ありがとうございます。」


「ほな、そこのじょうちゃんで終わりやな、ん!ちこうよれ!」


「嫌!」


ライムに向かって手招きをする老人は鼻の下を伸ばしているのだろう。


手で隠してあるが、まるわかりだ。


ライム即答し横にあった椅子に腰かける。


「そんなー、せっしょうなー…お願いや!何もせんがなー!」


「嫌。」


ガーン


あまりにも速い答えと冷めた目を感じたのか老人はそれ以上何も言わなかった。


「んで!名前は?」


「…ノーコメント」


「趣味は!」


「…ノーコメント。」


「好きな男のタイプは!」


「…。」


質問に帰ってくる言葉はなく、老人は渋々占いに入ったようだ。


「…全くー、シャイじゃっ「速くしろ!」はい、あんさんはなー、ジョブは子悪魔タイプやな 、釜とかそういう系統の武器がええやろーな、今は何をつこうとるんや?ちなみにバストサイズは?」


「銃。」


「あの~バス「銃だ。」はい、銃ですね、まーなんや、このタイプはな、用途が非常に多くてな、サポートにも回れるし、攻撃にも回れる、いわば何でもありや、だが、小悪魔タイプが一番使うっちゅうのはやっぱり鞭とか、まー、銃もそうやが、釜も使うのー。」


「わかった。」


「んで、これからのワイらの事やが、どや?やがては海の家を建ててその近くでハネムーン!」


次々と妄想を膨らませ、一人で淡々としゃべっている間に占い分のお金だけ置き、黙々と四人は部屋を出ていった。



「いや、でもアゲハはんも忘れてないんやで?でもなー、マカはんも好きなんやで?いやー、もてる男は困る!ちゅうかな……………。」


老人は照れ笑いを浮かべながらちらりと四人の様子を伺う。


そこには袋に包まれたお金以外誰もいなかった。


「おらへんーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


老人はそう叫ぶと再び一人孤独に浸っていた。

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