優しい気持ち
揺れる茂み…そこから出てきた二つの影に向かってアゲハは剣を降り下ろした。
「おりゃぁあ!」
「え!?ストップストップ!!!」
「は!?」
間一髪の所でアゲハは剣を止める。
目の前にいたのはモンスターでは無く、マカだった。
しゃがみながら恐る恐る顔を上げたマカは剣を見ると驚きへたり混んでしまう。
「び、ビックリしたぁ!」
「なにしてんだ?アゲハ。」
「いやー、敵かと思ったんだ!すまねぇなマカ!」
「もー、あれ?ライトは?どこ?」
「あーーーーーーー!!!!」
突然の声に二人は驚く。
「こんなことしてる場合じゃない!ねーちゃんが大変なんだよ!」
アゲハはすぐさま向きを変え、ライトの方に走り出した。
二人も後を追う。
ライトは何とか人魚を振り払うと、体制を立てなおたすため、後ろへ下がる。
マカはアゲハの横に並び相手を見ると、ニコリと笑いかける。
「なーんだ!人魚さんじゃん!大丈夫だよ二人とも!怖くないよ♪」
マカは手を振りながら人魚に駆け寄ると、さっきまでとはずいぶん違う雰囲気に少し驚くがまた笑顔になり話しかける。
「マカ!あぶねーぞ!」
「マカさん!逃げてください!」
二人が叫ぶがマカは不思議に頭を傾けたまま、離れようとはしない。
ライムも状況が読み込めないままだが、なんとなくさっき見た人魚とは違うとはわかっていた。
「…どうなってるんだ?」
「道を聞こうとしたらいきなりあいつが襲いかかってきたんだよ!」
「!?そんな、まさか…。」
アゲハの言っていることは本当なのだろう。
それなら、先程までの人魚とは違う人魚なのか?いや、髪の毛も同じ色だし、あいつで間違いないだろう…じゃぁなんで、襲ってくるんだ!?
ライムは頭のなかで考えるが答えが見つからない。
マカは振り返り再び人魚へ振り向く。
「歩けるじゃん♪それなら、一緒に行こうよ!」
手をさしのべるが、帰ってきたのは鋭く尖った爪だった。
ジャ!
「いた!」
人魚はマカの肩を鋭い爪で引っ掻くと、もう一方の手で、マカに襲いかかってきた。
「な、なんで!?」
マカも怪我をした肩を押さえながら、反動で目を瞑る。
パァン!!
一つの銃声が鳴り響き、マカは目を開ける。
目の前には肩を撃ち抜かれた人魚が痛みに悶えていた。
「に、人魚さん!」
「マカ!そいつはさっきまでの人魚じゃない!近寄ったらまた殺られるぞ!」
ライムは銃を構えたまま人魚を心配して近寄るマカに警告をする。
「さっきまで?知ってるんですか?人魚の事を。」
ライトは不思議そうな顔をし、ライムに質問を投げかけた。
「ちょっと前に道を教えてくれたんだが、またここに戻ってきたと言う事は、はめられたんだろうな…。」
「はめられて無いよ!」
マカは三人の方を向き、精一杯の声をあげ、険しい表情で、三人を見ていた。
「きっと、教える道を間違えたんだよ、この人はいい人だよ?ライムだって知ってるでしょ?」
「…あのときはな…でも今さっきだって…怪我させられただろう!?」
「で、でもさ…。」
「マカ!後ろあぶねー!」
アゲハの声にマカは後ろを振り向く。
目の前には大きく振りかぶった、人魚がマカを狙っていた。
もう爪も目の前まで迫りマカは絶体絶命だった。
ライムは引き金を引こうとするが、このまま発砲すると、マカも傷つけてしまうことになる。
「とうすれば!!」
誰もが絶体絶命だと思ったときだった。
ピタリと人魚の動きが止まる。
マカも襲って来ないことに不思議に思い、人魚の顔を見る。
きっと前の自分を取り戻したんだ。
そう思った。
だが、違った。
人魚は方向を変えるとアゲハに向かって物凄いスピードで迫っていく。
「人魚さん!」
「俺かよ!」
アゲハはそう呟くと剣を振り上げる。
「やめて!アゲハ!」
「でも、こうするしか!」
マカの声に少し躊躇したのか、剣の動きが弱まり、その隙にアゲハと人魚の距離は一気に縮まり、アゲハの肩に向かって手を降り下ろした。
「!あぶね!」
間一髪でよけると、人魚は目で追いかけ、次の攻撃の準備体制をとり、左手をあげる。
「まか!これじゃ良知あかねーよ!」
「で、でも。」
そのときだ。
偶然にもアゲハの避けるときに振り回した剣が、人魚の顔を覆う、仮面に当たる。
ピキピキ、!
もともと古くさく、ヒビの入った仮面はさらに深く皹が入り、破片が飛ぶ。
「ああああ!!!きゃーーーーーーー!」
その瞬間いきなりもがき出す人魚にアゲハは剣を構えながら動転していた。
「な、なんだ!?」
「たぶんだけど、仮面に皹が入ったからでしょうか?」
「仮面を壊したら良いって事か?」
「やってみる!」
アゲハは、剣を振り上げ、狙いを定める。
「やめて!」
マカは必死に止めようとするが、アゲハは自分の目の前に座り、悶える人魚に向かい、剣を降り下ろした。
「しんぱいすんなって!」
マカに一言そういうと、剣は人魚の顔の前を通り、地面へと突き刺さった。
マカは、急いで人魚にかけより、優しく話しかける。
「に、人魚さん!」
ライムとライトもその場にかけより、様子を伺っていた。
ぱりっ!
パキッ!
何かが割れるようなおとがなり、仮面は真ん中を境にきれいに崩れた。
仮面があったお陰か、顔に傷はないようだ。
そのまま倒れこむ人魚をマカは受け止め、目から涙を流す。
「ど、どうよう、人魚さん、どうしよう。」
何の反応もない人魚の体からは黒い煙のようなものがでてくると、肌の色は戻り、ライムとマカの見たあの人魚の姿に戻った。
「どうなってるんだ?」
ライムは不思議そうに沼を眺める。
「…グスン…どうしよう。」
「大丈夫ですよマカさん、気絶してるだけですから…。」
泣き出すマカをライトは優しく宥める。
「でも、…あたし…。」
マカの涙が近くにあった仮面の欠片に落ちたときだ。
人魚の回りに光が放ち、マカと人魚は一気に光に囲まれた。
「何?!」
マカも眩しくなり、瞼を閉じる。
「目……を………開いて」
聞き覚えのある声、これは。
マカは瞼を開け、そこにいたのは先程まで動かなかったはずの人魚だった。
「ありがとう、あなた達のお陰で長い呪縛から放つことができたわ…ごめんなさいね…怪我をさせて。」
「長い…呪縛?」
「そうよ、私たちは呪われているわ、あの仮面をつけている限り、私たちは怪物と一緒なのよ。」
「それじゃあ、もう、仮面も壊れたんだし!一緒に旅も出来るよね!?」
マカは人魚の手を握り、嬉しそうに飛び上がった。
だが、人魚は表情を曇らせ、首を横に振った。
「どうして?」
「私たちはこの仮面があるから今まで不老不死のままだった…でも、いまは違うわ…仮面が壊れた今…私の寿命はすでにつきてる、だからあなたたちと旅をすることはできないの。」
悲しそうに答えを出す人魚に、マカは抱きつく。
「ごめん、ごめんね、結局私何も出来なくて…。」
「いいのよ…あなたたちは私の仮面を壊してくれたのだから…これで私も眠れるわ…だからあなたも前に進んで。」
「うん、うん!!」
マカの瞳からは涙が溢れ出していた。
それはとても暖かい涙。
返答が無くなり、光は消え、人魚も光の粒となり消えていく。
それを見ながらマカは最後までいなくなった人魚を抱き抱えていた。
辺りはいつのまにか今までの風景にもどり、三人も何が起きたのかわからず、戸惑っていたが、その場に人魚が居ないことと、マカが泣いている状況を見ると、たいていの状況は把握し、誰もが黙ってマカのそばについてくれた。
その三人にマカは自分の胸を押さえながら語りかける。
「…なんだか、…暖かくて…優しい。」
そういうと、マカは涙を拭き、心配な顔で、見つめる皆に最高の笑顔を見せた。
三人もそれを見て優しく微笑み、マカも立ち上がる。
すると、茂みの隙間から最初に出てきた鳥が現れる。
「「「「あ!!」」」」
四人が声を揃えて言うと、あっという間に虹色の光が四人を包み込む。
「ここは、出口みたいですね…。」
次の瞬間景色は一変し、立ち入り禁止の看板と、反対側にはなにやら騒がしい音が鳴る町が見えていた。
たぶんだが、あの鳥にまた四人はワープさせられたのだろう。
「…マカ…その、ごめんな。」
アゲハはマカの近くにより、頭をかきながら謝る。
だがそんなアゲハにマカは優しく微笑み、首を横に振る。
「ううん、もう大丈夫だよ!さ!あの町に行こ!」
元気に笑うマカを見て、アゲハもニッコリとし、四人は新たな町へと足を進めるとのだった。




