交わした約束
「そう、あれはもう何年も前のことなのよ。」
顔を覆った人魚は話し出す。
辺りは魔物一匹も現れず、さっきまでいた森と同じようには思えないほど静かだった。
「この沼はね、本当はきれいな湖だったのよ…でもね、ある日私たちは近くの町に人魚狩の被害に遭ったのよ。」
「人魚…狩?」
マカは疑問に思い顔を傾げる。
「人魚を殺すことよ、あたしたちはモンスターを食べて生きてたから、このままじゃ自分達も殺されるとでも思ったんじゃないの?」
「でも、そんなので殺すなんて酷い!」
マカはうつむきがちで怒りのような悲しみのような気持ちが混ざりあい、なんとも言えない気持ちが込み上げてくる。
「でもね、食物連鎖っていって仕方ないのよ…この沼は汚れてるわ…仲間の血、殺した人間の血が混ざりあってるんだもの…。」
人魚はそう言うと辺りを見渡しため息をつく。
「私もいつかは…化け物になるのね。」
そう呟くと再びマカの方を向き、にこりと目が笑う。
「ごめんなさいね♪こんな話をして…森を出たいのならこの先をいくと良いわ、そしたら出られるはずよ…。」
そう言うと人魚は一つの道を指差す。
「ごめんね…何も力になれなくて…。」
マカはうつむいたまま泣きそうな顔を人魚に見せないようにする。
「あなたが謝らなくても良いのよ。」
その言葉を聞き、マカは勢いよく顔を上げると、人魚に手を差し伸べる。
「ねぇ!あたしたちと一緒に旅をしようよ!こんな所に一人じゃ寂しいよ。」
「え!マカ!?」
いきなりのマカの言葉にそこにいた誰しもが驚いた。
「それは無理だろ!だいたいどうやって歩くんだよ…。」
「あたしが背負うよ!」
「いや!ムリムリ!!ずっと背負うんだぞ?」
「うん!その時はライムも背負ってくれるから大丈夫!」
「えぇえええ!!」
マカとライムのやり取りを見ながら人魚は面白そうに笑う。
「ふふふ、貴方たちと一緒に旅をしたら面白そうね♪でも、彼女の言う通りよ…、あたしは歩けないから…それにここで一人でいる方が良いわ、仲間もここで眠ってるしね♪」
そう言うと人魚は微笑む。
目しか見えないが微笑んでいるようだ。
「で、でも。」
マカは再び泣きそうな顔をし、人魚の前にはしゃがみこむ。
「なにかできることある??あるんだったら言って!!」
「ありがとう、それじゃあ…また、遊びに来てね♪今度はお友だちと一緒にね♪」
「うん!!絶対来る!!その時は一緒に旅をしようね!!」
「え!?わ、わかったわ♪お願いね♪」
「うん!約束ね!!」
二人は約束を交わし、マカとライムはその場を離れ、とりあえずは森の出口を目指そうと足を進ませ始めた。
二人が見えなくなるまで人魚は見守ると、再び元いた岩に座り、両手で顔を覆う。
「…ごめんね…二人とも。」
そんな言葉を残して、人魚は沼の中へと身を潜めた。




