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玉露の秘薬と、妃の影 〜後宮の片隅で香と医術をひそやかに〜  作者: 楠木 シオン
第一章:翠華宮にて
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第5話:消えた香包と、忍び寄る影

夜風が後宮の石畳を冷たく撫でるころ、シンファは薬房で香包の在りかを確かめていた。


先日、庭園で手にしたあの小さな香包――しかし今は見当たらず、彼女の胸に不安の影を落としていた。


「どこに……消えた?」


その問いは、答えを待つことなく自らの胸を締めつける。



前夜の書庫で見つけた紙片の警告から、後宮の誰かが暗躍していることは確実だった。


だが、その正体は依然として霧の中。


シンファは誰を信じ、誰を警戒すべきか迷いながらも、己の薬学の知識を武器に少しずつ真相へ迫っていた。



その夜、薬房の扉がそっと開き、沈婆が現れた。


「若いの、心配か?」


彼女の声は優しく、だがどこか鋭さも秘めていた。


「はい……何者かが後宮で毒を使おうとしているかもしれません」


「ふむ……おまえの勘は当たっているようじゃな」


沈婆は包み隠さず告げた。


「この後宮はただの楽園ではない。影に潜む者たちがいる。だが、おまえは一人じゃない」



その頃、李華は上層部との密談を終えたばかりだった。


「お前の言う通り、後宮の中には危険な力が渦巻いている」


そう告げられた彼の瞳に、一瞬の暗い光が宿る。


「だが、簡単に表沙汰にはできぬ。故に、お前のような者が必要なのだ」



翌朝、シンファは薬房の隅でかすかな痕跡を見つけた。


消えたはずの香包が、わずかに残した香りとともに――何者かの足跡と共に。


彼女の心は緊張で震えた。


「この陰謀を止めなければ……」


 

後宮の闇はますます深く、二人の影はより緊密に絡み合っていた。

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