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当たりとハズレ

日刊74位ありがとうございます

モモカというヒロインですが前作、懸賞彼女に登場した桃ヶ池桃華を元にしています

 ピコーン!


「お、止まった……」


 独特の音と共にスロットが止まる。

 そして止まった場所は……


「えーと、魔法戦士? これって……」

「おめでとうございます! これがランダム限定のレア職業の一つ、魔法戦士です!」

  

 え、マジでレア職業引き当てたのか。

 スロットでも十分動画のとれ高はあるのにこの展開は美味しすぎる。

 

「え!? 俺引き当てちゃったの? え? え?」

「凄いですよこの職業は。武術も魔術もこなせる戦闘のエキスパート……成長すれば高レベルモンスターだって余裕で相手に出来ます」

「こっはーおめでとう。まさか引き当てるとは思わなかったわ」

「シンジョー、モモカちゃん……うん、ありがとう!」

 

 嬉々とした表情をするこっはー。

 まあ最近ガチャでもハズレばかりだったし、そのツキが回ってきたのだろう。

 何にせよ、幼なじみの喜ぶ顔は俺にとっても嬉しい事だ。

 

「さて、次は俺だな……」

「シンジョー、頑張れー!」

「あー、まだ主様が残っていましたか。とっとと終わらせて下さいねー」

「こっはーの時と態度違いすぎだろ……」

 

 幼なじみの俺を素直に応援してくれるこっはーに対し、興味がないのか完全に塩対応なモモカ。

 どうせ俺がハズレ引く、とでも思っているのか?

 なら、見せてやる。

 ソシャゲのピックアップガチャ動画における最高レア引き率84%の実力を……。

 別にステマとかじゃないよ?

 ちゃんと正当性を持って動画は撮影しています。

 

「ランダム選択!」


 スロットが再び現れ、職業の書かれた部分が回りだす。

 そして妙な緊張感が再び場を立ち込めた。


「おー回りだした」

「早く終わらないですかねー。これ地味に長いんですよ。ふわぁ……」

「寝るな寝るな、せめて止まってからに……お」


 ピコーン、という独特の音と共にスロットが止まる。

 えーと、俺はどんな職業に……


「……グローイング?」


 聞いた事がない職業、という事は……。


「もしかしてレア職業……?」

「え、本当!? シンジョー凄いじゃん! おめでとう!」

「はは、まさか来るとは思わなかった……」


 腰が引け、その場に座り込む。

 まさか西山オフライン二人がレア職業を引き当てるなんて。

 いやー嬉しい。

 アンチからまた「企業ステマだ!」とかいちゃもん付けられそうなこの結果。

 しかもこれは俺達が引き当てた、不正も何もない事実なんだ。


「どうだモモカ! これで俺の事……」

「クスッ……ぷくく……」

「? 何がおかしい」

「あはは、まだ気づいてないんですか? くくっ……」


 何故かモモカは笑い転げていた。

 俺の髪に何か付いているのだろうか?

 ガサゴソ、うん何もない。

 じゃあ何だ?


「おい、しらばっくれないで早く言ってくれよ」

「ふふっ、なら教えてあげます。そのグローイングっていうのは」


 笑いながらモモカが何かを言おうとする。

 その内容とは……


「レア職業でもない、むしろその逆……このスタシアにおける一番のハズレ職業ですよ!」

「……は?」


 モモカから告げられる衝撃の事実。

 グローイングが……スタシア一番のハズレ職業……?

 どういう事ですかモモカさん?

 こんな展開、動画的には美味しいですけどゲーム的にはマズいですよ?


「えーと、どの辺がハズレなの?」

「グローイングはとにかく弱いんです。ステータスが余り上がらない、武器は装備できない、し魔法も使用出来ない。アイテムは通常職の四分の一しか持てないしスキルも一切ありません。つまり、本当に何もできないゴミです」

「……」


 嘘だろ……?

 そんなの本当に何もできないじゃないか。

 こんなゴミ職業、一体、どうすればいいんだよ……。

  

「利点とかはないのか……」

「一応、どの職業にも無い無属性っていう特徴はありますが……まあ、生かされる場面なんてありませんね」

「そうか……」

「ふふっ、まさかハズレ職業をレア職業と勘違いするなんて。AIなのに心から笑いましたよ」

「はあ、好きなだけ笑えよもう……」


 モモカに怒る気すらおきない。

 くそ、ゲーム開始していきなりハードモードかよ。

 さっきスタシアを最速で完全攻略すると宣言したばかりなのにこれはなあ……。


「ちなみに戻って職業選択の画面に戻れますが……」

「いや、いい」


 その案は最初から切り捨てている。

 俺はミーチューバーだ。

 そんな勝手なことをすればリスナーは失望し間違いなく炎上する。

 確かに編集でいくらでも誤魔化せるかもしれない。

 しかし……


「動画的に美味すぎるんだよなあ……」


 最強のレア職業と最弱のハズレ職。

 奇跡的に上手い事対比の関係になっていた。

 ここで無難な職を選ぶよりかはハズレ職のままで行った方が動画的には良いだろう。

 動画のネタなんて、いつ振ってくるか誰にもわからない。

 だからこそこういう展開は逃せない、動画が命のミーチューバーとしてなら尚更だ……。


「ではお二人共、職業の確定してよろしいですか?」

「う、うん。でもシンジョーいいの? 取れ高なら俺のレア職業で十分だし変えてもいいんだよ?」

「ん? あー別に大丈夫だ。ハプニングは多い方が動画的に得だし……それに」


 心配そうな表情をするこっはーを見て、


「俺は元々縛り実況者だしな」


 真っ直ぐ強い意志を伝えた。


「そうだったね……わかった! シンジョーがそう言うなら俺、応援するよ!」

「ああ、ありがとうこっはー」


 俺の考えを否定せず、肯定してくれたこっはー。

 まあ、動画の進行もこっはーがいればグダグダになる事もないだろう。

 案外、レア職業とハズレ職業というのは動画的に相性がいいのかもな。


「そう言えば主様、縛り実況者でしたね。なら、グローイングはピッタリなのでは? 別に希望が無いわけでもありませんし……まあ、がんばって下さいねー」

 

 モモカの言う通り、西山オフラインを結成する以前、俺は縛りプレイを主に行う実況者として活動していた。

 別にその活動自体を引退した訳ではない。

 ただ、事務所に所属した事で今まで以上に動画の価値を求められ、時間も労力も掛かる縛り実況を減らさせざるを得なかったのだ。


「そうだな……」

「あれ、意外と平気?」 


 趣味に仕事が絡み、色々と制限がかかる現状に対して不満は無い。

 ただ、昔から見てくれたリスナーからの“縛りプレイもうやらないの?”という声には答えたかったのだ。

 なら、久しぶりにやるしかないよな。

 神様、これは動画のネタ的に最高のハプニングだったぜ、ありがとう。

 古参も既存も飽きさせない、最高の動画を作れるチャンス、絶対に生かして見せる!


「さて、そろそろ進みますねー」

「俺の決意くらい言わせろよー」

「んなの心の中で終わらせて下さいよ。いつまでも職業選択に時間取られる訳にもいかないんですよ」


 最もだが相変わらず塩対応すぎるモモカ。

 俺に対しその塩の中に砂糖を混ぜる日はいつ来……当分来ないな。


「これでチュートリアルは大体終了です。ここから先、何かわからない点があればサポートAIに聞いてくださいね」

「おう、モモカありがとうな」

「モモカちゃんありがとう!」


 なんだ、チュートリアル終了か。

 モモカがさっさと進めたがったのはこういう事だったのか。

 なんか申し訳無いことをしたな。

 

「それじゃ最後にシアターへの転送を行います。二人とも頑張って下さいねー」


 俺達のいる周辺が光りだし、ここに来た時のようなふわっとした感覚が再び訪れる。

 さて、次はシアター管理か。

 このゲームのメインでありスタシア完全攻略に必要な要素の一つである。

 戦闘では役に立たなくても、カスタム要素なら活躍出来るかもしれないしな。


「さて……頑張りますか」


 視界に光が集まり、やがて目も開けられない程眩しくなる。

 ここからスターライト・シアターズが本格的に始まる。

 縛りプレイで最速完全攻略、条件こそ厳しいが可能性は0ではない。

 敢えて茨の道を進み乗り越える、それが縛りプレイヤーという物だ。

「なぁ、グローイングってそもそも職業なのか?」

「ボクにはわかりませんね。設定上は無職以下のクズとしか書いてませんが……」

「無職以下とか人間かよ……」

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最後まで読んで下さりありがとうございます!

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