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仮想世界

やっと仮想世界に行きます

段々VRMMOらしくなってきました

「えーと、こっはーはどこだ……」


 仮想世界の広場。本来オンラインモードにすると見知らぬプレイヤーでごった返すのだが、今はフレンド広場にアクセスしている為その心配はない。

 ただ、空間型モニターだけの殺風景なこの場所に広さだけが残る為、フレンド探しに苦労することは変わりないのだが。


「おーいシンジョー! こっちこっち!」


 少し遠くにある赤いモニターの傍、声がした方向にオレンジ髪のアバターが見えた。

 響改めこっはーだ。

 現実世界と同じく、オレンジのショートヘアーにフード付きのパーカー姿。

 強いて違う点といえばネコ耳型のヘッドホンを付けたり顔に星型のペイントメイクをしているくらいか。

 余りにも現実と相似点が多すぎてたまに仮想広場で生放送する時、顔バレしないか不安だった。

 が、偶然か奇跡なのか、今までそういった事は一度もない。

 本人曰く、「堂々としているからだよ」とのことだが多分そういう事ではない。

 お前が特殊すぎるだけだ。


「おー、やっと見つけたぞこっはー」

「シンジョー遅いよ。スタシアサービス開始まで後十分だよ? インストール終わらせた?」

「おう、お前を探してる間に終わらせたぞ」


 仮想世界上で「シンジョー」と「こっはー」として話す俺達。

 俺達はこの世界にいる時、実況以外でもニックネームで会話する事にしている。

 まあ、仮想世界を実名でプレイするやつの方が少ないし、特段おかしい事でもないが。


「あー、じゃあどうしようか。サービス開始まで後10分くらいあるし暇だなー」

「ならサービス開始前に撮影するか? 前置き的な感じで」

「お、それいいね! やろやろ」


 早速空間ビット式カメラの準備をする。

 前置きか……発案しといてなんだが俺ソロのフリートーク苦手なんだよなあ。

 面白い事は思いつかないし仮にしゃべっても編集でカットされる、ソロでもガンガン喋れるこっはーがほんと羨ましい。

 と、段々後ろ向きになっていく俺はカメラを撮影モードにし、電源をONにした。


「どうも! 西山オフラインのこっはーです! そして!」

「西山オフラインのシンジョーです……」


 いつも通りこっはーは元気よく、やや自信のない俺は暗く、とそれぞれカメラの前であいさつをした。


「もー暗いよシンジョー! せっかくのサービス開始前なんだからもっとアゲてこ!」

「いや、俺フリートークとか苦手だし……」

「えー!? 前置きやろうって提案したのシンジョーじゃん!」

「いや、暇で何もやる事ないって言ったのはお前だ。俺はただ提案しただけに過ぎない」

「あー! 責任転換するなんて汚い! それにシンジョーだって……」


 ぎゃーぎゃー騒ぎながらフリートークを進めていく。

 基本こっはーが切り出し、俺がそれに突っ込むか絡まれる。

 そこから言い合いをしながら最後、どちらかがソロで軽くフリートークをしてから本編が始まる。

 西山オフラインのフリートークは大体こんな感じだ。

 もちろん本気で切れてる訳ではなく、ただのじゃれあいなのは俺達もリスナーも周知の事実なのでご安心を。


「あ、もうすぐサービス開始するね! もうタイトルでバレてるけど詳しい企画内容とかはログインしてから言いますのでお楽しみに! それじゃ! 最後シンジョー、締めの言葉よろしくっ!」

「え、お、俺かよ……まじかあ……」


 げっ、何とかしてこっはーになすりつけたかったが上手く行かなかった。

 まいったな、急に締めろと言われてもそんなすぐには思いつかないぞ……


「ほーら、早くしないとサービス開始するよ!」

「え、う、うーん…………よし」


 こうなったらアレだ。

 昔ネットで流行ったと言われているあのセリフでいこう。

 もうヤケだが仕方ない。

 当たって砕けろ! 俺!


「きょ、今日も一日がんばるぞい……」

「……」


 空気が凍り付く。そして……


「さ、もうすぐ始まるね! 俺ワクワクしてきたよ!」


 あ、これカット確定だな。

 渾身のパロディーネタにガンスルーしたこっはーの様子から、俺はそう察した。


「じゃ、早速ログインしようか!」

「ああ……そうだな」


 テンションが高いこっはーとは対照的に、さっきのソロフリートークで俺は心にダメージを負っていた。


「ん? どうしたの? 元気ないね?」

「いやお前……そういう事か」

「?」


 すっとぼけた表情をするこっはー。

 どうやら、さっきのアレはこっはーにとって忘れたい物だったらしい。

 確かに俺も酷いと思ったが少しくらいフォローしてくれよ。なんか余計に傷つく。


「はあ、スターライト・シアターズ、スタートアップ……」

「スタートアップ!」


 スタシアへのログインコードを叫ぶ。

 視界が眩しい光に包まれ意識までもが真っ白になっていく。

 はあ、こんなテンションで実況ができるのか。俺は不安で仕方なかった。

 まあ、なんとかなるだろ……多分


◇◆◇


「ん……?」


 視界がはっきりとする。

 どこかの広場、中世を模したような建物の数々。

 ファンタジー系の世界がそこには広がっていた。

 まだログイン後の反動で動けないが辺りに人がごった返しているのはわかる。

 ああ、ついに来たんだな……スターライト・シアターズの世界に。


「おーいシンジョー! そろそろ動けるんじゃないの?」

「ん、そうだな……」


 隣にいたこっはーは既に動けるようだ。

 ならば、と俺も腕を動かそうとする。


「やっぱ重いな……」

「まあ、レベル一だしねー。新ゲーム開始直後はやっぱ慣れないよね」


 身体は動くも昨日やっていたVRMMOゲームに比べると重さを感じる。

 これはVRMMOをやり込んでいる物程感じやすい現象で、やり込み具合の違うゲームを複数やるとステータスの大きな差異でアバターの動かし方に違和感を覚えるのだ。

 この現象をネット等では【仮想幻覚】と呼んでいる。

 厄介なことに、この仮想幻覚は現実世界にも影響を与えており、合計三千時間スイミング系のVRMMOをやった物が仮想幻覚により現実の海で溺れかけた、という事例があるくらいだ。

 そういった事例が多発した為、現在VR機器は二十四時間の内、四時間まで使用する事が出来る、と法律で定められている。

 たった四時間しかできないのは少し物足りない気もするが、この規制によって従来の据え置き型ゲームの需要も廃れる事無く残っている部分がある為、なんだか複雑な気分である。


「んじゃ、カメラの設定するか」

「お、そうだね」


 スパークルファイズのメニュー画面を起動し空間ビット式カメラと一人称視点カメラの設定を行う。

 一人称カメラは自分の視界に映る物を映像として記録出来る物で三人称視点の空間ビット式カメラと組み合わせるとかなり迫力のある映像が出来上がる。

 まあ、その分編集に掛かる労力もバカにならないのだが……


「よし、こっちは終わったぞ」

「こっちもおーわりっ! じゃ、撮影開始するね!」


 空間ビット式カメラを俺達二人がフレーム内に入るポイントに設置する。

 そして……


「はい! ということでスターライト・シアターズの世界にやって来ました! いえいっ!」

「しかし、人が多いなー。サービス開始直後とはいえここまでは珍しいぞ」

「そりゃーねえ? てか、シンジョー理由分かってるでしょ?」

「まあ、大体はな……てかそれが今回の企画に大きく絡んでるし」

「その通り! 今回は普通にスタシアをやるだけでなくある企画にも挑戦しようと思っています! それはー?」


 その場でクルクルと回転しだすこっはー。

 この謎回転は毎回こっはーが企画発表する前に独自で行う物なのだが特に意味はない。

 まあ、別に好評という訳でもないがかといって不評という訳でもないのでどうでもいいが。

 

「今回、西山オフラインはこのスターライト・シアターズを最初に完全攻略し、五千兆円を手に入れたいと思います! どんどんぱふぱふー」


 そう、今回の企画内容にして最大の目的だ。

 恐らく賞金目当てで廃人やプロゲーマーが多数参入する事が予想されるだろう。

 そんな混沌としたバトルフィールドで俺達西山オフラインは五千兆円を手にする事ができるのか?

 先の読めないこの企画内容。

 不安はあるがそれ以上にワクワクの方が強かった。


「さて、ここからどうすればいいの?」

「んー、取り敢えずヘルプ画面見るか」


 放り出された形でスタシアにログインしたのでここから先の進み方がわからない。

 今時のゲームにしては初心者に厳しいな、と思いつつ俺はメニュー画面を起動しヘルプを見る。

 えーと、運営のあいさつ、世界観の説明、操作方法……お


「あった、チュートリアルは中心にある【クリスタルの柱】という所で受諾出来るみたいだぞ」

「へー、強制じゃないんだ。まあ取り敢えずチュートリアルやる?」

「そうだな。他ゲームと違う点もあるだろうし行くか」

「よーし、まずはクリスタルの柱へレッツゴー……あ、チュートリアルの過程が見たくない人はシークバーを飛ばしてね!」


 リスナーへの配慮をこなし、俺達はクリスタルの柱へと歩みを進めた。

 しかし、人が多い。

 大きな広場にNPCとプレイヤーが隙間なく存在しており、まるで満員電車に乗っているような気分だった。

 だが、こんなに大量のプレイヤーがログインしても鯖落ちや動作不良を起こさないだけ、このゲームは凄いなあと感心する。

 大体的に宣伝しておいていざゲームが始まると鯖落ち、バグ、メンテナンスの嵐でまともにプレイする事が出来ないゲームはゴロゴロと存在する。

 そんな中でもサービス開始時、スムーズにゲームが出来るゲームというのはそれだけで運営がしっかりしている事を感じさせるのだ。

 まあ、それだけで評価してしまうというのもあれだが……

「こっはー、お前締めの言葉っていつもどんな感じで考えているんだ?」

「んー? 頭に浮かんで来たのを繋ぎ繋ぎにして……後はノリと勢い」

「天才理論すぎる……」

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