17話 翌日自宅にて 6
談話室に入ってすぐ右手にはドアがあって、中はトイレ(主に来客用)になっている。談話室の中心には、入り口から見て縦方向にテーブル(間伐材で作った大きめのサイズ)と、その周囲に丸太椅子が8個ほどおいてあり、右手の窓側と奥の壁際にベンチ(板をめくると物入れ)が作り付けてある。奥の扉は納戸に続き、更に台所へと通じている。納戸への扉の手前の左側壁際に腰くらいの高さの棚を置き、その中にコップや茶葉、インスタントコーヒーをしまっていて、棚の上のポットのお湯で入れて自由に飲めるようにしている。
窓側の椅子に、公子サマを真ん中に、向かって右側に通訳少年、左側にセパシウスさんと座り、護衛の二人は外に通じる扉の近くと公子サマたちの後ろにそれぞれ立っている。護衛さんたちにも椅子を進めたのだが、「これが自分たちの仕事ですので」と断られた。
……‘逃走防止’とか‘取り調べ’とかいう言葉が浮かぶのは私だけでしょうか?
公子サマたちのお向かい、真ん中に私が、祥くんが私の右側に座り、テーブルの各人の前にコーヒーを注いだカップを置いて、一応話をする格好が整った。
まぁ、全員がこの位置に落ち着くまでにちょっとバタバタしたのだけれど。
冷凍庫に入れてあったアイスノンを公子サマにお持ちしたり――鴨居にぶつけたトコロにあてた方が良いと思ったのだけれど何故か断られた――とか。
消臭スプレーを持ってきてセパシウスさんに使い方を説明しながら差し出して泣きそうな顔をされたり――いえいえ、けしてセパシウスさんが臭うってわけじゃありませんから!――とか。
コーヒーもさすがにインスタントコーヒーは失礼だろうと思い、ほこりを被っていたコーヒーメーカーを引っ張り出して、他人から頂いて棚の奥にしまっていた挽いた豆から淹れたり――流石にインスタントより良い香りがしますね――とか。
ともあれ、こうしてテーブルに五人が座ったわけですが。
……これからどうしましょう?
いきなり「何の御用でしょうか」と聞くのも切り口上のような気がしてどうしたものかと悩む私に
『--------------------,----------------』
「事前のアポイントも入れず突然おしかけまして、誠に申し訳ございません」
そう言って頭を下げたのはセパシウスさん。
「おしかけるなんて…他に用事もありませんでしたし」
そちらから話の口火を切ってくれてホッとしています。
『------------,----------.--------------------,----------------------------』
「昨日申し上げましたが、再度ご紹介いたします。こちらのお方はクロウシェン公国の第三公子、クラウス・シェルツェン・フォン・クロウシェン様です」
もちろん、セパシウスさんが示したのは真ん中に座っている公子サマ。私の真正面に座っていらっしゃるので、しっかりお顔が観察――いえいえ、拝見できます。
細筆で引いたような眉に翡翠を嵌め込んだような瞳だとか、すっと通った鼻筋に厚すぎず薄すぎずの唇だとか、パーツがほぼ左右対称の顔に絶妙のバランスではまっている。窓からの光を受けて淡く輝く金の髪は柔らかい波を描いて額や耳にかかり、後ろだけ少し長くてシャツの襟の下くらい。
白馬に乗った王子様か背中に翼の生えた天使様かっていうくらいの美形サマです。
目が合うたびにオーラ全開で微笑まれると、一般庶民の私には眩しすぎて目の毒なんですが……。
『-------,--------』
「お歳は28歳、独身です」
そうなんですか。でも今時二十代で独身って珍しくないですよね。
『-------------------』
「恋人も婚約者もいらっしゃいません」
…………
…………
…………そういうのがそちらのお国の自己紹介なんでしょうか??
あけましておめでとうございます。
そして、更新が遅れまして申し訳ございません。
年末行事が立て込んだのと、またもや風邪をひいてしまったのと(いくら☆☆は風邪ひかないとは言え、ワンシーズンに何度もひいたら☆☆だろう自分…orz)、ネット環境の無い所へ帰省していたのと……なんかもう、本当にすみませんでした(平身低頭)。
年も明け、また週一程度の更新で頑張っていきたいと思います。
どうぞよろしく御願いいたします。