15話 翌日自宅にて 4
「14話 翌日自宅にて 3」に出てくる主人公の幼なじみたちの名前を変更しました。
わたしの住むこの地域は水田と山に囲まれた本当に田舎――日本の原風景!という感じの――で、その中に立つ見た目からして‘洋物です!’というお三方と‘その筋ですか?’というお二方というのは目立つことこの上ない。
おまけにここいらの家は街中と違って塀で敷地を囲んでいない――家によっては生垣で遮っているところもあるけど少数である――ので、お隣さんとかお向かいさんとかから田んぼを数枚隔てても皆さん丸見えなのである。
後でご近所の女性陣(老若無関係)の推測&噂話に巻き込まれないためには証拠隠滅……じゃなくて来客隠匿(?)したいところなのだけれど、そもそも皆さんがどうして私を訪ねて来たのかさっぱりで。
逸らしていた視線を公子サマのお顔に合わせると、ニッコリとスマイルを向けてきました。
う、わ~。昨日のオーラ全開の微笑みもすごかったですが、今のこれは……‘甘い’って言うんでしょうか?これぞ‘王子様’スマイル?(実際は‘公子’サマだけど。)
写真に撮って恭子さんや綾ちゃんたち昨日フェア会場にいらした皆さんに送ったら狂喜乱舞するのではないでしょうか。
「おい、さや、この‘客’どうするんだ?」
祥くんに小突かれて、昨日のフェア会場の皆さんの盛り上がりっぷりに飛んでいた思考が引き戻される。
「どうするって言われても……」
とりあえず、ご用件を確認しなきゃ、ですよね?
公子サマはにこやかな笑顔だし、お付のセパシウスさんと通訳少年を除いては昨日のフェアと同様の警護以外の人は居ないようだし、雰囲気からいって不敬罪で云々ということは無いと思う…というか思いたいです。
「あの…皆さんはどうしてここに?」
思い切って尋ねてみると、セパシウスさんが一歩前に進み出て右手を胸に当て言った。
『----------,---------------.----------,----------------------?』
「前触れ無く突然ご訪問いたし、誠に申し訳ございません。ご多忙のところ恐縮ですが、少しお時間を割いていただいてよろしいでしょうか?」
なんだか恐縮してしまうような‘恭しさ’に、ご丁寧にありがとうございます、と意味も無くお辞儀をしてしまう。
こうなったら外で立ち話というわけにもいかないのだが、さすがに昨日のことがあるので私一人で対応するのも避けたいところ。
というわけで、ツンツンと隣の祥くんの腰のシャツを引っ張る。
「うん?」
「昨日会ったばかりの方たちなんで、一緒に話を聞いてもらいたいんだけど良い?もし何か用事があるんだったら無理にとは言わないけど…」
体を傾けて位置を下げてくれた祥くんの耳に手を当てて、小さな声で立ち会ってもらえないか頼んでみた。
またもやゾクッと感がしたが、三度目なので気にしない。
祥くんはちらっと公子サマご一行に目を向けると、
「しょうがねぇな」
と言ってOKしてくれた。
「ありがとう!持つべきものは親切な幼なじみだね!!」
お休みを取って用事を片付けている忙しいはずの祥くんに心から感謝していると
「ここでさや一人放っておいて後でアイツらにバレたら殺されるしな」
と溜息混じりで返された。
あー、そう言う事ですね。納得です。
「俺は先に車に積んでる鶏糞降ろしとくから、さやは客を案内しとけよ」
そう言って軽トラックに向かう祥くん。
「うん、わかった……って、ええっ!?祥くん、鶏糞積んだ荷台に皆さん乗せてたの!?」
思わず叫んでしまいましたよ。
鶏糞というのはその名のとおり鶏の糞のこと。有機肥料として販売されているものなのだけれど、結構臭いがする(ちゃんと袋詰めしてあるのに臭うのは不思議です)。
道理でセパシウスさんがご自分の服をクンクン嗅いでいるわけです。
「しょうがねぇだろ。お客たちが乗ってきた車じゃ大きすぎてここまで入ってくるのは無理だったんだよ」
もしかして昨日のあの黒い、後部座席が対面になっている車だったのでしょうか?再度納得です。
自宅の周囲の公道は舗装こそしてあるもののその大部分が車一台分の幅しかなく、すれ違ったりする時には公道に隣接した家の庭先を借りたりしなければならない。交差点もやっぱり狭いので、あんな長い車じゃ絶対に曲がれない。
消臭スプレー出してこなきゃいけませんね。
そう思いながら、公子サマご一行を家へとご案内した。
田舎の旧道とかはここまで車社会になるなんてことを考えてないので狭いものが多いですよね。
慣れている人は結構スピード出して走りますが、助手席に乗っていて怖いです。
そして公子サマそっちのけで幼なじみとばかり絡んでいる主人公…(汗)