10話 連れて行かれたホテルにて 5
本格的に風邪をひきました。
一週間熱が下がらず……微熱ですけど、長引くとつらいですね。
本当はもっと早く投稿したかったのですが…すみません。
主人公のターン!
本当は少し内気な(はずの)清香さんですが、怒ってちょっとキテます。
彼女のセリフの内容は、彼女の道徳観に基づいたモノですので、違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれません。ご容赦ください。
「人を侮辱するのもいい加減にしてください」
目の前の執事さん――もとい、セパシウスさんを睨みつける。
握っていた私の手をぱっと放したセパシウスさんの横を回り込み、つかつかと応接セットの脇まで進み出る。
絨毯の上にそのまま正座で座り込み、
「貴方と貴方、ちょっとここにお座りなさい」
‘貴方と貴方’と言いながら私が指さしたのは、セパシウスさんと公子サマ。‘ここ’と言いながら指したのは私の前の絨毯の床。
『~~、~……』
『---……』
びっくりした顔で何か喋ろうとする二人を
「いいからここにお座りなさい!!」
私の怒鳴り声――あくまでも低い――が遮る。
迫力に押されたのかおとなしく座るお二人。といっても胡座状態。
「これからお説教するんです。靴を脱いで良いので正座をなさいっ!!」
通訳少年の説明を受けて、慌てて靴を脱いで正座するお二人。
いつもの私だったら、お二人だけじゃなく通訳少年や黒服さんたちもがつられて正座している様だとか、勢いで両手が膝の上にピシッと伸びている――いわゆる居住まいを正している――様だとかに笑っちゃうところなんだろうけれど(というか普段ならこんなこと絶対にできないです)。
どこかが切れている私はすっかりお説教モードに入っていた。
「それは確かに‘買春’とか風紀が乱れているきらいはありますが、そんな女性ばかりじゃありません!
「そもそも貴方はなんですか!会ったばかりの女性に抱きついたり、き、キスしたり……
「その上、あ、あ、愛人になれだなんて、人を侮辱するにも程があります!
「それとも何ですか!?東の果ての島国の庶民の小娘なら侮辱しても構わないって言うんですか!?」
お二人に向かって一気に喋る私。
『--,-------……』
「あの〜、‘愛人’と言うのは……」
恐る恐る話すセパシウスさん。
「住むところに宝石だの服だのに月々のお手当だなんて愛人としか聞こえないでしょう!私にとっては侮辱以外の何物でもありません!!」
セパシウスさんにそう言い返すと、公子サマを睨みつける。
「だいたい、日本にはお仕事で来ているんですよね?」
『~,~~~~~~~』
「公国の公務です」
柔らかく答える公子サマ。
「公務ということは税金が使われているんですよね?」
こっくりと頷く公子サマに、私はすうっと息を吸うと
「税金使って愛人探しするなんて、恥を知りなさい!!」
今までで一番の怒鳴り声を浴びせた。
「税金は、国民が汗水垂らして稼いだお金であることは貴方も知ってるでしょう!
「税金を使うということには、国民に対する責任も伴っているんです。
「貴方は、自分の行いを国民の皆さんに胸を張っていえますか!?」
私の言葉に、心なしかしゅんとなる公子サマ。
『------,------------――』
「住まいとかお手当などはワタクシが勝手に――」
責められる公子サマを見かねたのか、口を挟むセパシウスさん。
「貴方も貴方です!」
びしぃっとセパシウスさんに指を突きつける私。
突きつけられた方はたじたじになっている。
『-----,---?』
「ワタクシ・・・ですか?」
「そうです!」
「貴方の方が年長者として分別が有って然るべきでしょう。それを止めもしないばかりか愛人条件の交渉とは言語道断!!」
「25年も仕えた大切な主なら尚更です!貴方が諫めなくてどうするんですか!?」
言葉もなく鯉みたいに口をパクパクするセパシウスさん。やがて
『--------,-----------------』
「申し訳ございません。ワタクシの不徳の致すところでございます」
詫びが入りました。
改めて公子サマに向き直る私。
「貴方がどう思おうと、海外にでれば周囲は貴方の振る舞いを通して貴方の国を見ます。
「貴方が無分別な行いをすれば、貴方の国貶められるんです。
「これからは、ちゃんと国を背負っているという自覚を持って行動してください。いいですね!?」
私の勢いに押されたのか、黙ってこくこくと頷く公子サマとセパシウスさんと通訳少年。
これで私のお説教は終わった。
ふう、と一息ついて部屋を見渡せば、お説教された皆さん――公子サマやセパシウスさんばかりでなく他の皆様まで、私の気のせいでなく小さくなっている。
……え~と、ちょっと言い過ぎましたでしょうか?
10話までいってしまいました。
次でホテル編は最後です。
当初の妄想はフェア会場で終わっていたのに、それがホテルまで続き、とうとうその後まで……
よろしければ続きもどうぞお付き合いください。