素材アイテムを求めて
「ダークスライムたち、お願いしますね!」
至るところに散らばっている素材アイテムを回収するよう、ダンジョン内にいるダークスライムに指示を送った。
「それじゃあ……。フィナ、デーモンウルフを倒しに……」
フィールドマップへ行こうと誘うと、フィナはおでこに手を当てた。
「これからプレイヤーが多くなる時間帯だから、肉から集めにいくのが無難かもしれない」
「プレイヤーの人数を気にしはじめた……!?」
:プレイヤーが多くなる時間帯があったか
:オシリスのギルド周辺だと午前中ねぇ。やはりレアモンスター狙いが多いと聞くが
:どのみち、肉を集めるのが難しくなるのは分かりきっている
:さて、どうするか
:他の素材集めはどうなのか
:他は、たぶん行けそうか
:おそらくは、可能だと思います
配信ログをみた感じだと、やっぱりそうなんだ。
モンスターがいくらでも沸くとはいっても、モンスターの数が減ってしまう状況なら効率も落ちてしまうし、何よりも他のプレイヤーと接触してしまう機会が増えかねない。
もし他のプレイヤーと戦闘になったら、手加減できる自信もないので出来ることからやっていくのが良いのでは、ということなのだろう。
「それでは、素材アイテムとなる土から集めましょう」
レアモンスターのことも気になるし、可能ならばフィールドマップの探索が良かったのだけど。
私は割り切っていった。
「それで、パルトラには行くアテがあるのか?」
「この辺りで土の採取、ですよね……」
私は、目の前にあるダンジョンマップを拡大表示する。
最も手っ取り早く採取できるのは、このダンジョン内であるが……。
果たして採取することができるのか。
プレイヤーが入手したという情報があれば完璧だったのだけど、だいたいはダークスライムが倒してしまっていたので、採取なんて余裕はなかったに違いない。
「うーん、ここはギルドに尋ねてみようかな……」
「わかった。いまのところ、このダンジョンで入手出来たという確認は取れていないという認識で大丈夫そうかな」
「ぎくっ。……そ、その通りですね」
フィナに見抜かれていた。でも、フィナの笑顔をみてると、私も笑ってしまいそうになる。
私もフィナも、心の奥底から楽しんでいるのだろう。
「ギルドに行くのか。それならオシリスのギルド周辺に、あたしの記憶の石像を置いているので使うか」
「その必要はありませんね。私についてきてください」
「そうなのか……?」
「そうです」
ボス部屋の奥には便利なワープゲートが存在することを、私がちゃんと伝えないといけない。
記憶の石像はひとりのプレイヤーにつきひとつ。
フィナの記憶の石像は、もっと便利と思える場所に設置してもらったほうが、ダンジョンの製作がよりスムーズに繋がる。
「ここ、あたしとパルトラが戦った奥地だよね?」
「そうですよー」
「ふむ、ボス戦後にワープゾーンか。記憶の石像とは、別物なのか……?」
「別物ですね。私、ダンジョンクラフトというスキルを持っていまして……。恐らくですが、ギルドへの一方通行となるワープゾーンも作ることが出来るみたいですね」
「一方通行、か……」
悪くないかも。という表情がフィナの顔に出ていた。
:脱出用か
:さて、脱出だっ!
「パルトラさん、フィナさん、お疲れさまです。本日はどうされましたか?」
ギルドに入ったら、いつもの受け付けのお姉さんが挨拶してくれる。
「腐敗した土を採取できる場所は、何処にありますか?」
「なるほど……公式が提供している検索機能をお使いになるのですね。かしこまりました」
受け付けのお姉さんがそう言うと、一冊の本が受け付けテーブルに出現した。
それが開いて、空間上に浮かび上がってきたのは文字列だ。
モンスターやアイテム等の基本情報に関しては、ゲーム内だとここで問いかけることで知識を得ることが可能ということかな?
メニュー画面の図鑑項目だと、自身が触れたものしか分からなかったので、現状だとギルドから提供されたほうが情報を得ることが出来そうである。
「現在のバージョンでの、迷宮神殿オシリスの周辺で入手できる素材一覧になります」
受け付けのお姉さんが丁重に説明してくれる。
「ありがとうございます。フィナ、みてみて!」
「えっと、パルトラが探しているものはどれだろう」
フィナの視線が迷走しそうだったので、私は素早く目的の名前を見つけ出して指をさす。
「ここですね。腐敗した土となる素材は……黒い酸の砂?」
「それっぽい名前だな」
「このアイテムの入手方法は、水の都アクエリアとの境界付近ですか……」
採取しに行くのは問題なさそうだが、時間はそれなりに掛かるだろう。
国の境界線は、ギルドからやや距離があるように設計されている。なので、通常であれば乗り物のアイテムが必須とも言われている。
若しくは記憶の石像でひとっ飛び。
しかしながら、私とフィナの記憶の石像は近辺にある。
他にフレンド登録はいないので、どうしたものか。
「どうにかして、この酸の土を採取できる方法はないものですかね……」
「クエスト受注してみるのはどうでしょうか?」
「ここで、クエストをするのですね」
たしかに、クエストを利用すれば現地まで即座にワープできる。
でも、帰りはどうしよう。
ダンジョンクラフトの移動も、私が作ったダンジョン自体が近くにないと使えない。
他に取れる手段としては、モンスターとかに倒されてリスポーンで戻ってくる方法があるが……。
そもそも私が杖で攻撃を受け切って、ダメージをもらわない自信しかないので、やり方が現実的ではないだろうし。
あと、冒険者にいきなり襲われるのは嫌なので。
ここは他の手段を考えるしかない。
「クエストの受注を避けるとなると、残された手段は……」
「行商人がやっていそうな他のプレイヤーから買い取る行為をする、とかになりそう」
「フィナも、アテがないのね……」
「その通りだな。お役に立てなくて、すまない」
「フィナが謝ることではない。それに」
「それに……?」
「アイテムを集めるのが簡単にいかないほうが、作りがいがありそうだしー」
:ポジティブだな
:前と比べると、ホントよねぇ
「フォロワーさんも、見てくれてありがとうございます」
唐突にだけど、お礼を伝えたくなった。
:そこはリスナーでは?
:俺らのことはリスナーと呼べ
:リスナーだよ。この配信を聞きながらのほうが、別の作業が捗るからさぁ
「では、リスナーさん。ありがとうございます」
配信中のカメラに一礼した。
その後、メニュー画面を開いて息を吞む。
「パルトラ、いまからどこに?」
「ないものは、私のダンジョンで作ります。何故なら、私がそうしたいから」
「……やっぱり、そうなるか。くふっ」
笑いを堪えるフィナは、私の顔から視線を逸らす。
「えっと、私……変なことを言いましたか?」
「そんなことないが?」
「それなら……うーん……」
私の発言が、変だったのか。
けど、フィナが和やかな気分をしていた。
「ダンジョンに戻ったら、新しいアイテムの作成を始めようと思います!」
「そうだな。パルトラ、一緒に頑張ろう」
「はい。私、頑張ります!」
目標を定めると、私とフィナはそれぞれメニュー画面を開き、クラフトルームへと移動した。
いきなり素材アイテムの作成とか大変なんだろうけど、ひとつずつ。
私自身が、もっとやれることを増やしていきたい。
ひとまず目標は、出来る引き出しをどんどん増やして、楽しくダンジョンを作っていく!
その為には、まず酸の土を作成する。
何をすれば良いのかな?
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