お友達を探しに
「すみません。私と一緒に、ダンジョンを作ってくれる方がほしいのですが……!」
私は受け付けのお姉さんに、直接問い合わせていた。
ダンジョンの発展には探索する冒険者が必須であり、私個人的にもお友達を欲している状況だ。
必要性のありさまを、心の片隅で薄々感じている。
:おっ、言った
:言えたねぇ
:そうですぞい
配信ログに書き込んでくる者たちも、これからの私に期待したいのだろうか。
少しだけ、そわそわしていた。
「ところでダンジョンマスター様、ダンジョンの名前はお決まりですか?」
「うーんと、出現モンスターのスライムってなんだか粘土っぽくて……。クレイキューブの地下迷宮……とか……」
「なるほど」
「あの、どうしましたか?」
「迷宮神殿オシリスのギルドから北の位置に、クレイキューブの地下迷宮というダンジョンが出現しました。このダンジョンの最深部に到達した者は、レアスキルを二つも持つダンジョンマスターと相対する権利を得られます!」
受け付けのお姉さんは、大声で口に出してきた。
その直後だった。
ゲーム内にあるイベントのお知らせ項目が、更新された。
「これって……ええっ……!」
シクスオ緊急イベント発令中!!
迷宮神殿オシリスのギルドから北の位置に、クレイキューブの地下迷宮というダンジョンが出現しました。
このダンジョンの最深部に到達した者は、レアスキルを二つも持つダンジョンマスターと相対する権利を得られます!
:うわ、これはヤバそう
:討伐イベント発生?
:見ごたえはありそうだぞ
受け付けのお姉さんが大胆に各位プレイヤーへ告知を出してきた影響で、配信ログもざわつく。
「あのー、私は一緒にダンジョンを作ってくれそうなお方を探しているのですけど……」
「ダンジョン作成のお供に相応しいプレイヤー様を探しだす手段として、剣を交えてみるのはどうでしょうか?」
「うーん。ダンジョンを自力で進めることのできる実力くらいは欲しい気もしますけど……」
「それではパルトラさん、頑張って下さい」
「あっ、はい。がんばります……」
なんか良い感じに、言いくるめられてしまった。
そして受け付けのお姉さんとの会話が、途切れる。
「実力に見合った者同士が手を取り合ってダンジョンを作り、他のプレイヤーを倒す。……ですか」
目標を実質ここに置いてきたようなものか。
とてもこのゲームらしいやり方なのかと思えば、納得は出来てしまうけど。
:戻らねぇとヤバいんじゃね?
:その通りぞい
:そうだねぇ
「そうですね……! って、配信ログをみている場合ではないです。急いで私のダンジョンに行かないと!」
至急、ダンジョンに戻っておかないといけない気がした。
探索したプレイヤーがたどり着くであろう最深部に、ダンジョンのボスが不在だなんて笑えない。
あと、私のことをプレイヤーとしてではなく、ボスモンスターと告知したのも、何かの意図があってなのだろう。
その確認もしたいので、ダンジョンに直行する。
ダンジョンの直行は、ダンジョンクラフトのスキルを行えばすぐにできてしまった。
とりあえず、クラフトルームで待機する。
「えっと、まずはダンジョンを探索する者の様子を見ておいたら良いのかな? ダンジョンマスターとして……」
告知されて早々、ダンジョンを探索する者が現れていた。
プレイヤー達は早速、ダークスライムと戦闘している様子だった。
戦闘している様子を見守るのも悪くないけれど、私自身のことについて再確認したくて。
「うんと、あった」
ステータス画面を隅々まで見ていた私は、発見した。エネミー判定のオンオフである。
現在オンであるが問題ないだろう。
これがオンだと、私自身がモンスター扱いになる仕様。そして、このゲームの仕様のひとつである、モンスターに倒されたプレイヤーは、所持しているアイテムや装備を落とすペナルティーが発生する。
おまけとして、残骸がその場に残る。
残骸が出現しても、あくまでもゲーム内なので、現実世界でプレイヤーは死ぬことはない。
一応、触れる判定はあるので各種素材に自由に使うことができる。
「これで確認できたことだし、いまの戦況は……。あれっ、皆さん地下一階でやられてますね……」
ダークスライムに蹂躙された冒険者の残骸が、たくさん出現していた。努力して地下二階まで進んだグループもいたが、強化されたダークスライムの数に圧倒されてしまい、あえなく全滅してしまった。
これ、もしかしてモンスターをとんでもない方向性で強化しずぎたのかな?
誰も最深部までたどり着くことが出来ない。そうなれば、選別はしやすいだろうけどお友達を探すのに時間が掛かってしまい、あまりよろしくないと思う。
:やはりダークスライムが、強そうだ
:あのスライム、ガチで強いぞ
:うん。あれは無理ねぇ……
:お前ら潜ったのか?
:そうだけど
:見た目以上に、厳しいぞい
配信ログがこんな感じ。
時間経過とともに、探索を諦める者が増えていく。
そんな中、地下四階層を探索しているプレイヤーがひとりいた。
「これ、ちょっと気になるね……」
私はプレイヤーの姿を映してみた。
髪が長い金色のツインテールで、体格が小柄な女の子。魔法学校の生徒っぽい青色をベースとした服装を身に着け、右手に持った軽そうな白い剣でダークスライムを翻弄していた。
だが、白い剣ではダメージがあまり入っていないように思える。
そこで女の子は、剣の刃先をモンスターに向けた。
次の瞬間、剣が変形して拳銃になった。
銃の先端からは、僅かに赤みに帯びた魔法の弾が発射される。
「このプレイヤーの装備は、間違いなくSSRに匹敵すると思います……」
女の子は数発撃ち込んでから、ダークスライムの様子を伺う。
「気になる。この方の名前、何でしょうか」
私は検索をかけてみる。
そしたら、すぐに判明した。
プレイヤー名は、フィナ。
初回ログイン時から、女の子のアバターである。
調べてみたけど、どうしようか。
ここは……。
転送魔法を使って、接触を図ってみる。
「初めまして、こんにちはです!」
「はぁ、はぁ。貴方は、どちら様ですか?」
息を切らしていたフィナは、喋るのがやっとだった。
「このダンジョンのボスである、パルトラといいます」
「ダンジョンの……ボス……?」
突然のダンジョンボス登場に、フィナは物事を全く理解していない顔になっていた。
「その証拠は……あるか……」
「はい。ここのモンスターは、私の元で制御することが可能なのですよ」
近くのダークスライムには、フィナを襲わないように『待て』の命令をしていた。
「動きが止まったけど……。貴方はあたしをこの手で殺したいの?」
「まずは詫びたい……。このダンジョンに今のところダークスライムしかいないことに、です」
「いや、そんなこと気にしたことないが」
「あれっ、そうでしたか……」
冒険者といったら、未知なる遭遇の連続を望んでたりするものなのかなと思ったけど、違ったのかな……?
もし勘違いなら、私は申し訳なさでいっぱいである。
:冒険者を助けた?
:ほうほう、これまた素晴らしい百合ぞい
:いや、そこまで関係が発展していないでしょ
変な期待を持たれたら困ると思いつつ、配信ログから目を離す。
「あのぅ、失礼と思ったら申し訳ないのですけど……」
「うん……?」
「フィナさん。私と一緒にこのダンジョン、大きくしませんか?」
「ダンジョンの発展のお手伝い? ちょっと考えさせて」
「はい。私は、お返事をいつでもお待ちしておりますよ」
「うーん、ダンジョンの発展に手を貸すと、あたしはもっと強くなれるか……いやいや……」
首を横に振るフィナは、迷いがなかった。
「あたしは最深部に辿り着く。ダンジョンマスターさんはそれまでおとなしく待っていて!」
そう言ったフィナは、まるで今までの疲労が嘘と思える速さで駆け抜けていった。
「お友達勧誘、失敗したかな……?」
とりあえず、フィナが地下六階層に辿り着くことが出来るかの見物がしたくなった。
自身の足元に小さな魔法陣を展開すると、私はクラフトルームへワープする。
そこでしばらくの間、フィナの様子を見守ることにした。
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