ダンジョンを作ろう!
ただ、本当にダンジョンを作る方針でゲームを進めて大丈夫なのか心配になってきたので、配信ログをみる。
:このゲーム、ダンジョンを生み出すスキルなんてあったっけ?
:あたいは聞いたことない
:はて、そんなのがありましたかのう……?
配信ログのコメントが、そろいに揃って知らないという反応をしてきた。
「私、何故かあるんです……」
配信先に聞こえるのか微妙なくらいの小声で、囁いてみた。
:えっ?
:それ本当なのー?
:もしそんなスキルがあるとしたら、実際にみてみないと行けませんぞ
:期待してる
:同じく
視聴者に、謎の期待させてしまっている。
私はこのまま沈黙してしまいそうになったが、受け付けの人からの生暖かい視線を感じ取ったので、口が動きそうだった。
「受け付けの方の……すみません。ダンジョンの作り方ってわかりますか?」
「それでしたら、ダンジョンクラフトを使用すればすぐに出来るようになります。ダンジョンマスターにもなれます」
「私がダンジョンマスターに、ですか……?」
いきなりだったので困惑したが、少なくともこの場に否定する者はいない。
「えっと……ダンジョンクラフトのスキルですね、使ってみます。ありがとうございます!」
手早く受け付けのお姉さんにお辞儀したあと、早速スキルを使用してみる。
「スキル、ダンジョンクラフトを発動します!」
スキルを使用すると、星の形をした青色の魔方陣が、私の指先に出現していた。
はわっ?
体が……魔方陣の中に吸い込まれていく……!?
私の態勢が崩れてしまい、そのまま奈落へと誘われる感覚がした。
「うっ……ここは……?」
意識を取り戻して起き上がると、私は青っぽい円盤が床に刻まれている部屋にいた。
ここが、ダンジョンの製作場所なのかもしれない。
製作に慣れたら、クラフトルームと呼ぼう。
とりあえず地図を出してみたい。
でも、どうやって出すのだろう?
やり方なんてわからない。けど、とりあえず出てきてほしい。
配信ログでは、何か重要なことが書き込まていたりするのかな?
:あれ、何処なんだ?
:見たことない
:知らぬ
:もしかしたらあの世とか
:それはないかと
:少なくとも、ゲームの世界で間違いないぞい
配信ログはここで止まっていた。
地図、地図がほしい。
そのような単語を頭の中で思い浮かべていた。
配信ログが進まないし、受け付けの方もいない。
これってもしかして、よくない状況?
「誰か、ダンジョンの地図をお願いしますよ!」
痺れを切らしかけて喋ると、地図が私の目の前にフワッと出てきた。
「なんか上手いこと出せた……。とりあえず見てみよう!」
私は地図に目を通す。見慣れない地形と、見覚えのある地名が書かれていた。
:これは迷宮神殿オシリスのフィールドマップだな
:フィールドかぁ。ところでいま何してるの?
:ダンジョンクラフトのスキルを使っているから、おそらくダンジョンを作っている最中なのかもしれないが
:ふむ、面白そうだね
:そうじゃな
:面白いのは当たり前。それはそうと、ここから何をするんだ?
コメントで言われた通り、私も何をすれば良いのかわからなかった。
そこで考える。
ダンジョンでフィールドの地図が必要なのは、何の設定なのか。
まだ決めていないことがあるに違いなかった。
「ダンジョンの、場所……!」
これは、ダンジョンの位置を決める重要な設定だと感づいた。
そうとわかれば、早速設定してみる。
ギルドの位置からやや北側を意識して、直感でフィールドの地形が描かれた地図に触れた。
すると。
『ダンジョンの座標を決定しました。パルトラ様は現在地から離れている為、座標地点までワープします』
というアナウンスとともに、ちょっぴり床が振動しはじめる。
けど、すぐに静まり返った。
移動が終わったということかな?
とにかく、次の作業に移ろう。
次は、部屋と通路の作成。
適当なサイズの四角いエリアをたくさんイメージしていく。
基本的に、ダンジョンの製作は全部ここでできるのかもしれない。まだ、よくわかっていないのだけど、見た目だけは汗水垂らして魔法を使うよりは早く完成しそうだ。
:すげー。次々と道が出来ている
:ダンジョンのネタバレにならないか?
:いや、それはないじゃろう。でも記憶力があれば、出来てしまうか……
:それだったらあれだね。嫌ならみるな
:俺は、可愛い姿で作業している様子を見続けたいだけだが!?
:うわ……
:配信者は、かわいい可哀想だったかのう(本日二回目)
:それは誤解だって! みんなのこと信じてるからっ!!
:ドン引きしたわ
そんな配信ログが永遠に流れ続けた気がしたのだが……。
いざ作業が終わると、難解のパズルピースを全部はめきったような、達成感が得られた。
目の前に出ている画面上で、ダンジョンの外見と内部、ボス部屋を合わせて六層分が完成したのだ。
私のダンジョンは、地下深く潜るほど強いモンスターが出てくる。それだけを意識した。
そして、ここからモンスターの配置となると、別の工程が入る。
:モンスターの作成方法が知りたいな
:何かキーとなるアイテムが存在するのでは?
配信ログに流れている通りのアイテムが実在します。とは言い難かったけど、間違ってはいなさそうだ。
私の手元には、ダークスライムのコアが三つある。
コアの形が歯車だから、三つが噛み合うようにするのかな。
うにょーん。
回りだした歯車から、ダークスライムが出てくる。
これで良いのか……?
:ついにモンスターが出たけど弱そう
:よわよわ
:かわいいじゃん
いや、駄目かもしれない。
難易度が低いと、熟練の冒険者はすぐに飽きてしまう。ボス部屋への到達率も上がりそうなので、このダンジョンに出現するモンスターは強めが望ましいかも。
では、どうしようか。
コアに刺激でも与えてみようかな。
魔法とかで。
コアの歯車を一度分解したら、詠唱を開始する。
「常闇に染まりし、デモンスライズ!」
魔法を放つと、ダークスライムのコアが少し黒く変色する。
これで再び合わせてみよう。歯車が動き出し、ダークスライムが誕生した。
このダークスライム、ちょっと色味が変だ。
これまで見てきた個体より、ふたまわりくらい色味が濃い。
サイズもさっき誕生した個体より大きかった。私はそのまま様子を見守ってみる。
すると、最初に誕生したダークスライムが、濃い色味のダークスライムに丸呑みされてしまった。
:さっきと同じ……?
:いや、見た目が少し違うから、ひょっとして強くなったのか?
:強くなったことを期待する
配信ログでは、強さが気になったご様子。
やっぱり後から誕生したダークスライムのほうが、いくらか強いのかな。
冒険者と戦闘させたら、よりはっきりした強さが分かると思われる。
ひとまず、ダンジョンにたくさん湧かせたいので、コアを地下五階層の奥のほうに置いてみよう。
小部屋と通路を新たに作成してから、コアの設置をする。
うにょーん。
歯車が回転して、ダークスライムを量産する。
ダークスライムのことは、これでしばらく置いておく。
他のモンスターをダンジョンに出現させるには、まだやり方が分からない。
ギルドで質問したほうが回答を得るの早そう。
けれど、ギルドに向かうとなると、また危険が被るような……。
「ギルドに対しては、直通のワープゲートって作れないかな?」
一度やってみよう。場所はいったん、ボス部屋の奥にしたい。
ここに作るとボス部屋を倒したあとすぐに帰還できるから、挑む側も安心できるだろう。
ただし、ボス部屋で倒すべく者を倒せればの話になるが。
ワープの作成方法は、製作部屋で場所設定した際と同じようなことをすれば、大丈夫なのかもしれない。
ボスフロアに小部屋と通路を追加してから、ダンジョンマップと睨めっこした。
ワープゾーンを作りたい場所に向かって、茶色い杖の先端を当てるとアナウンスが流れる。
『ダンジョンからの脱出用のワープゾーンを作成しました』
:おっ?
:ほほう……
:ダンジョンクリアしたら、すぐにギルドへ帰還できるワープゾーンが!?
少人数しかいない配信ログでは、皆が驚いていた。
「どうやら、ギルドに一方通行のワープの作成……できるみたいですね。さてと、早速使ってみようかなっ!」
茶色い杖で床に魔法陣を描いた私は、ワープして製作部屋を出た。
魔法陣でのワープ先はボス部屋である。
そして、実験という意味合いも兼ねての行動。
「えいしょ!」
私自らワープゲートの上に乗った。
すると、ギルドにいる受け付けのお姉さんと、テーブルが視界に入った。
無事に迷宮神殿オシリスのギルドへ入り込めたようだ。
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