ダンジョンを作ろう!
丁度ギルドにいるし、聞きたいことがあるから何かと都合が良い。
「すみません、ダンジョンの作り方ってわかりますか?」
受け付けのお姉さんに問いかけた私自身、やりたいことに対しての答えを半分知っていた。
「固有スキル、ダンジョンクラフトを使用すればすぐに使えるようになります」
「ダンジョンクラフトですね、ありがとうございます!」
私はお礼を告げると、早速スキルを使用してみる。
「スキル、ダンジョンクラフトを発動します!」
スキルを使用すると、星の形をした青色の魔方陣が、私の指先に出現していた。
はわっ?
体が……魔方陣の中に吸い込まれていく……!?
私の態勢が崩れてしまい、そのまま奈落へと誘われる感覚がした。
「うっ……ここは……?」
意識を取り戻して起き上がると、私は青っぽい円盤が床に刻まれている部屋にいた。
ここが、ダンジョンの製作場所なのかもしれない。
製作に慣れたら、クラフトルームと呼ぼう。
とりあえず地図を出してみたい。
でも、どうやって出すのだろう?
やり方なんてわからない。けど、とりあえず出てきてほしい。
しばらく頭の中で思い込んでいると、地図が私の目の前にフワッと出てきた。
「何故か上手いこと出せたし、とりあえず見てみよう!」
私は地図に目を通す。見慣れない地形と、見覚えのある地名が書かれていた。
この地形は……迷宮神殿オシリスとその近辺で間違いないのかも。
神殿の作りを連想させるギルドを中心に街があって、迷路のように入り組んでいる街路の地形があった。
その街路の外側はどうなっているのかと想像するも、見当がつかない。
いや、この外はたぶんモンスターがいたような地形で合ってるはずだ。タクトと戦闘を行った周辺にモンスターがいたから、ダンジョンのひとつやふたつあっても違和感がないし……。
私のダンジョンを建てるなら、迷路のように入り組んでいる街路の外側にするのが良いかもしれない。
リスポーン先となる場所は絶対に避けて……ギルドの北側を意識してみようかな。
ダンジョンの位置は、私が直感で良さげと思ったところに決めた。
『ダンジョンの座標を決定しました。パルトラ様は現在地から離れている為、座標地点までワープ致します』
というアナウンスとともに、ちょっぴり床が振動しはじめる。
けど、すぐに静まり返った。
移動が終わったということかな?
とにかく、次の作業に移ろう。
次は、部屋と通路の作成。
適当なサイズの四角いエリアをたくさんイメージしていく。
基本的に、ダンジョン作成は全部ここでできるのかもしれない。まだ、よくわかっていないのだけど、見た目だけは汗水垂らして魔法を使うよりは早く完成しそうだ。
こうして、かれこれ作業すること数時間。
難解のパズルピースを全部はめきったような、達成感が得られた。
目の前に出ている画面上で、ダンジョンの外見と内部、ボス部屋を合わせて6層分が完成したのだ。
私のダンジョンは、地下深く潜るほど強いモンスターが出てくる。それだけを意識した。
そして、ここからモンスターの配置となると、別の工程が入る。
あっ、私の手元にダークスライムのコアが三つある……。
地下5階層の奥のほうに置いてみよう。
小部屋を作って、設置する。
それと通路も用意して、既に作成済みの場所と一体化しておく。
コアの形が歯車だから、三つが噛み合うようにするのかな。
うにょーん。
回りだした歯車から、ダークスライムが出てくる。
これで良いのか……?
いや、駄目かもしれない。
難易度が低いと、熟練の冒険者はすぐに飽きてしまう。ボス部屋への到達率も上がりそうなので、このダンジョンに出現するモンスターは強めが望ましいかも。
では、どうしようか。
コアに刺激でも与えてみようかな。
魔法とかで。
コアを一度回収したら、詠唱を開始する。
「常闇に染まりし、デモンスライズ!」
魔法を放つと、ダークスライムのコアが少し黒く変色する。
これで再び設置してみよう。歯車が動き出し、ダークスライムが誕生した。
このダークスライム、ちょっと色味が変だ。
これまで見てきた個体より、ふたまわりくらい色味が濃い。
サイズもさっき誕生した個体より大きかった。私はそのまま様子を見守ってみる。
すると、最初に誕生したダークスライムが、濃い色味のダークスライムに丸呑みされてしまった。
後から誕生したダークスライムのほうが、もしかして強いのかな。
冒険者と戦闘したらよりはっきりした強さが分かると思われる。
うにょーん。
歯車が回転して、ダークスライムを量産する。
ダークスライムのことは、これでしばらく置いておく。
他のモンスターをダンジョンに出現させるには、まだやり方が分からない。
ギルドで質問したほうが回答を得るのが早そう。
けれど、ギルドに向かうとなると、また危険が被るような……。
「ギルドに対しては、直通のワープゲートって作れないかな?」
一度やってみよう。場所はいったん、ボス部屋の奥にしたいから、新しく小部屋を作っておいて。
ここに作るとボス部屋を倒したあとすぐに帰還できるから、挑む側も安心できるだろう。
ただし、ボス部屋で倒すべく者を倒せればの話になるが。
「ギルドに一方通行のワープの作成……できるみたいですね。さてと、早速使ってみようかなっ!」
エグゼクトロットで床に魔法陣を描いた私は、ワープして製作部屋を出た。
魔法陣でのワープ先はボス部屋である。
そして、実験という意味合いも兼ねての行動。
「えいしょ!」
私自らワープゲートの上に乗った。
すると、ギルドの受け付けカウンターが視界に入った。
無事に迷宮神殿オシリスのギルドへ入り込めたようだ。
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