エンジェルマーケットが気になるコルテ
「みゅー。パルトラさんの顔が緩んでいます」
「素材が美味しいので気にしないでくださいね。それで、予行練習でイメージはつきましたか?」
「生徒さんのことを考えると、シクスオではシンプルに前衛役と後方役のバランスを取った五人程度のグループで動いてもらうのが安定策です。そのような方針で学園長やヴィクタ国王へ伝えようと思いますが……」
『なるほどですわ。二から三人程度の少人数グループだと、纏まらなかった時に学習へ繋がるのか疑問がありましたわ。本当に、お嬢様の考えは素晴らしいですわ』
「エルトリス王国の代表のひとりとしてシクスオに来ていますから、これくらい当然です!」
アマノハクが喋るカボチャを拾い上げると、そのまま頭の上に乗せた。
「みゅー。なんだかしっくり来ません」
『お嬢様……?』
頭部の感覚が気に入らなかったのか、喋るカボチャをすぐに地面へと降ろしてしまった。
「みゅー。せっかく電脳世界に来ているのだから、おしゃれするのも悪くなくて……」
『お嬢様がイメージチェンジですか! 是非ともお手伝いしますわ』
「みゅー。あまり大きな声ではしゃがないでもらえませんか?」
少しばかり恥ずかしがるアマノハクは、ぴょんぴょんと跳ねながら道を進んでいくコルテを追いかけることになった。
私は二人の姿が視界から外れないようについて行く。
幸いにも他の冒険者やモンスターは近辺にいないので、慌てて戦闘態勢に入ることはなさそうだった。
『このダンジョンにはおしゃれ出来そうな、お店あったりするかな?』
「みゅー。コルテ、おしゃれするなら最大規模のエンジェルマーケットに行くのが無難なのです」
『エンジェルマーケット?』
「みゅー。この国からはだいぶ遠いので、すぐに連れて行くことは難しいのです。だから、また今度でも」
『それは残念だわ』
アマノハクに追いかけられながらも、何かを懸命に探していたコルテは一度止まる。
『そうだわ。お嬢様の用事が早く終われば、エンジェルマーケットに行くことが出来ますわ』
「みゅー? それは……」
アマノハクがコルテを再び拾い上げると、振り返って私と視線を合わせてきた。
「これからダンジョンの一階層へ移動して、モンスターの観察をしてあと、パルトラさんにどのくらいの時間があるかですが……」
「えっと、私?」
「みゅー。流石にパルトラさんがこの後何かご予定があるのなら諦めるつもりです」
「アマノハクさん、そこまで迫られても……」
じまじまと見つめられて、なんだか恥ずかしくもなる。
『じーっ……!』
「みゅー」
「えっと、セレネさんにお願いしたらすぐに連れて行ってもらえると思いますのでっ!」
二人の視線に耐え難かった私は、すんなりと風神の和太鼓を手元に出した。
世界樹の神秘道、第一階層へワープする。
「みゅー。冒険者がたくさんいるのです」
ワープ先にいたのは、たくさんの冒険者と白銀の像である。
『これは誰をモチーフにしているのでしょうか』
「みゅー? 拙者の頭の中に回答がないので、パルトラさんから聞き出すしかないような」
「私に尋ねられても……女神ネフティマです。その像から発生している加護によって、戦闘ダメージを無力化させているので、この場にたくさんの冒険者がいたとしてもいきなり襲われる心配はしなくて良いです」
すらすらと口がすべったが、アマノハクとコルテは真剣に聞き入れていた。
女神ネフティマの形をした白銀の像は、シクスオ観光名所のひとつにもなっている。そして、戦闘が行えないゾーンがダンジョン内にあるのは、シクスオの中でもかなり珍しいとされていた。
運営サイドもそうだが、ダンジョンマスターが作成したがらない為である。
ちなみにモンスターが出現するのは第ニ階層からになっており、アマノハクの目的を果たすならそこに足を踏み入れる必要がある。
「ちょうど像の裏手側に緩やかなのぼり坂ありまして、そこから第二階層へいくことが出来たはずで……」
「みゅー。行くのです!」
『お嬢様に後れをとってはいけませんわ』
アマノハクが駆け足で第二階層への道に急ぐと、その後ろをコルテがぴょんぴょんしながら追いかけた。
私も、二人の姿を見失わないようについて行く。
「みゅー。モンスターがいました」
生い茂る植物の道が続いていた第二階層に踏み入れると、アマノハクはすぐに立ち止まっていた。
くるくると回る白い花びらの中心部分に赤いにっこり顔がついている、サニーフラワー。
アヒルのような大きいクチバシと黄緑の毛をもった鳥型モンスターの、ライムバード。
世界樹の神秘道の第ニ階層に徘徊しているモンスターは、主にこの二種類である。
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