グールを作成する
「さてと、これだけ集まれば事足りるでしょう」
私のアイテム欄は、腐敗のお肉で溢れかえっていた。
「たしかに回収は終えたが、この部屋はどうするんだ?」
「増えすぎた酸の土は、ダークスライムに食べさせてみようと思います」
「なるほど、新しいモンスターが出来そうだな」
「ギルドで閲覧したシクスオの基本情報からの憶測になるのですが、未開拓の領域はこうやって自分から探さないといけないと心積もりしておりまして」
「パルトラが見たことのない発見、あるといいな」
「そうですね。上手くいくと嬉しいですね!」
この後は、グールの作成を行いにいく。
私は風神の和太鼓を使って、ダンジョンの製作部屋に移動する。
「グールを生み出すのに必要なものは……」
腐敗のお肉と、冒険者の残骸。
私はエグゼクトロットで魔方陣を描き、闇の加護をもたらす精霊の源をかき集める。
シクスオに存在する六つの国には、精霊の源が対応している属性がそれぞれある。
迷宮神殿オシリスであれば、闇だ。
この精霊の源を使った魔法があるのだが、いつでもどこでも全部の属性が使えるというものではなく、それぞれの国でしか扱うことが出来ない仕様となっている。
流れとしては、召喚魔法を使っているようなものだ。召喚魔法で精霊の源を呼び出して、さまざまな事柄を発生させる。
「この大地に幸をもたらす闇の精霊よ、我の声に耳を傾けたまえ」
私は詠唱を終えると、黒い渦のようなものが私の前に現れていた。
二つのアイテムを混ぜ合わせて、グールの作成を行う。
手元にはたくさんあるので、グールをいっぱい作ることが可能である。作り出したら、すぐにダンジョン内に送り込んで、冒険者の反応を伺いたい。
とはいえ、グールは特別強いわけではないので、浅い階層に設置しておきたい。
消耗品みたいな扱いになってしまうのが気掛かりだが、ダンジョン攻略のゲームバランスの調整だと思って仕方ないと割り切っていた。
「パルトラ、上手くいったか?」
「はい。グールが出来た数が四百ほどですが、冒険者たちの新しい反応をみるには十分な数を用意できたと思います」
「それならよかった」
「それはそうと、倒された冒険者が残していったアイテムの整頓も、そろそろしないといけない気がしてですね……」
「宝箱の配置が先じゃないのか」
「このダンジョンでの、宝箱の運用をまだ考えてないのもあります」
「パルトラ、思いつかないなら冒険者が落としていったものを詰め込んでいっても」
「それはイマイチだといいますか……」
「駄目なのか?」
「はい。クレイキューブの地下迷宮での宝箱は、基本的に薬草などの回復アイテムと、アレイさんが作った装備品を詰め込みたいので」
「なるほど。たしかにそうなると難しいな……」
「ですので、冒険者が落としていったアイテムを上手く活用する方法を別口で探さないといけなくて」
「システム周りから探してみるか。プレイヤーを倒した際にはアイテムと、ゲーム内通貨と呼ばれるポイントが手に入るんだよね」
「たしか……そんなのがあったような……」
私にポイントは一切入っていなかった。
代わりに、エネミースコアというものが入っていた。
「ポイントというのがゼロで、エネミースコアというものが数万ありますね」
「エネミースコア……? なんだそれ」
フィナは、まるで聞いたことのない単語をはじめて耳にしたような態度を示した。
「エネミースコアは、私のステータスにあります。ポイントの下の欄にありまして」
「あたしのほうでも調べてみるか」
フィナは半信半疑になりながらも、人差し指を動かす。
「ほんとだ、エネミースコアがあったよ。あたしには五百くらい入っていた」
「フィナにも入っている……ということは、エネミースコアはポイントと同じような入り方をするもので間違いなさそうですかね?」
「恐らく、そうだ。基本はプレイヤーが、モンスターや他のプレイヤーを倒したらポイントが入っていくようになっている。それをエネミースコアに置き換えてみると」
「ふむふむ……。エネミー判定が入っている状態で、プレイヤー及びモンスターを倒せば、エネミースコアが入るということかな?」
「うん、そうだな。それで、ポイントを使って各種消費アイテムや武器ガチャの権利、髪型や性別といったアバターの外見を変えられる各種スキンと交換できるから、エネミースコアも同じように何かと交換することができると思うよ。……パルトラ、少しやってみて」
「わかりました。――フィナ、アイテム交換ってどこでも出来るのですか?」
「パルトラは……アイテム交換をやったことないのか?」
「シクスオを遊び始めてから、まだそんなに日が経ってないものでして。システムを把握し切れていないことが多々あります」
「それなら、いまから説明するか」
フィナは、頭をかいて照れくさそうにする。
「ステータス画面があるよな。そのステータスの端っこに、アイテム購買という画面があるから、それを押してみて」
「はい。いろいろ交換できるみたいですね」
「ちゃんと出来ていそうだな。そこの画面で、エネミースコアを使って交換できるものがないか探してほしいのだが……」
フィナの指示通り、画面上から引き換えできそうなアイテムを探してみた。
「あっ、ありました。モンスターが落とす素材が何個か……」
選択出来るのは肉と、上質なお肉のみ。
シクスオの中で私が手に入れたものだけ、交換できるみたいだった。
「お肉と交換できますね」
「手に入るのは現時点でお肉だけか。それなら、パルトラのエネミースコアは取っておくほうが良さげか?」
「合成して手に入る系はエネミースコアで交換出来ないみたいですし、大量に必要となった際にはじめて重宝されるものだと、今は思っておきます」
「そのほうが気楽でいけそうだな。あたしも、パルトラも」
「はい。そうですね――って、つい、お話しが脱線してしまいました」
「別にそんなことないと思うが。冒険者が落としていったアイテムを、今後どう生かすか考えているんだろ?」
「それが問題ですからね……」
少し頭を冷やしたい気分である。
その場で座り込んだ私は、ダンジョンのマップを広げて眺めはじめる。
新たな冒険者がダンジョンを探索しだす様子を見守りながら、この問題についてしばし考え込むことになりそうだ。
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