【最終話】浮気される気持ち
…お昼休み……
ノエルは余裕が出てきたのか、
「ねえ、シーちゃん、さっき『屈強な男10人』とか言ってたけど、ほんとにそんな人居るの?」
と、少しニヤつきながら聞いてきた。
なので私は、
「ほんとだよ。私、ウソ嫌いだから。すぐ呼べるよ?」
と言った。
するとノエルは、
「じゃあ、試しに呼んでみてよ。」
と、ニヤニヤしながら言ってきた。
…だいぶ、余裕が出てきている様子である。
…10分後…
『お待たせしました!シークレット様!』
私は屈強な男を10人呼んだ。
頭にネジが刺さっている男、片手に棍棒を持っている男、レスリング100キロ超級の格好をしている男、様々だった。
……ノエルの顔は真っ青だった。
「下がっていいわ。ありがとう。」
私は屈強な男たちを帰らせた。
…ノエルはしばらく無口になった。
そして、
「し、シーちゃん、俺、暴力は良くないと思うんだ。」
おもむろにノエルが話し出した。
「暴力?」
私が聞き返すと、
「あ、あぁ…。ほら、俺、平和主義だからさ…。」
ノエルがそう言うので私は、
「私、暴力なんて一度もふるってないわよ?それに、さっきの件だって、おもいっきり引っ叩いていいって言ったのはノエルくんだよ?」
と言った。そして、
「自分から解決方法に『暴力』を持ち出しておきながら、暴力は良くないとか、それって『ウソ』じゃないのかしら?」
と言った。
すると、
「ごめんごめんごめん!何でもない!」
と、すぐに引っ込んだ。
「…ただ、『全身再起不能』とかはやりすぎかな、って感じがしただけなんだ…」
そういうので、
「じゃあさ、浮気された女の子の気持ちって、ノエルくんはどう思う?」
と聞いた。
「…そりゃあ……イヤだろうね。」
とノエルは答えた。
「それだけ?」
と私が言うと、
「うーん…」
と、よく分かっていない様子だった。
なので私は、
「女の子にとって、誰かを好きになるって事は、大切な『自分』を差し出すって事なの。生物学上、女性は何人もポンポンと子孫を残せないから、異性の選択には物凄いシビアなんだ。」
と言った。
ノエルの頭の上にはすでにクエスチョンマークが並んでいるように見えたが、続けた。
「だから、『大切な自分』を差し出したのにも関わらず、『浮気』なんていう、しょーもない事されたら、自分をものすごく馬鹿にされた気分になるし、それ以上に『自分の選択は間違えていた』というショックも受けるの。」
ノエルは無言だった。
「だから、浮ついた気持ちで『浮気』をしたならば、それに相応しい『罰則』としては、屈強な男10人に全身再起不能にされるって、結構バランス取れてると思わない?」
…ノエルの顔がどんどん暗くなっていく。
「じ、じゃあさ!『一夫多妻制』とかどうなるの!?あれも浮気みたいなもんじゃん!」
ノエルが、『思いついた!』って顔で言ってきた。
私は答えた。
「確かに、そういう形をとっている国があるって事は聞いた事あるわ。」
そして、
「でも、それは妻同士に『内緒』にしている事じゃないでしょ?妻の同意の元でそういう形をとっている。『浮気』は、女性同士の同意は得てるのかしら?」
そういうと、再びノエルは無口になった。
「それに、『一夫多妻制』といっても、いわゆる『ハーレム』状態みたいなのとは全然違うわよ。奥さんは平等に扱わなければいけないし、平等に養わなければいけない。そして、奥さんの親族も、場合によっては平等に養わなければいけない。もし奥さん同士で不平等な扱いが起きたら…。」
…ノエルは静かに聞いていた。
「…場合によっては誰かが命を失う事だってあるわ。それくらい繊細なの。人間の気持ちって。」
ノエルは大分、消耗してきているように見えた。
「だから、『浮気』みたいな事をするならば、まさに『命懸けでやれ』って事を言いたいの。私は。」
…ノエルは脂汗をかいていた。
その時!
「ちょっと!ノエル!隣の女、誰よ!」
…巻き髪の女が絡んできた。
「あわわわわ…」
ノエルは隣でアワアワ言っていた。
「また浮気!?信じられない!」
巻き髪の女はものすごい剣幕だった。
私は、
「ねえノエル、アナタ、浮気してるの?」
と聞いた。
すると、
「してない……!」
と、ノエルは白目を剥きながら叫んだ。
「ウソよ!許さないんだから!」
巻き髪の女が怒っている。
私は、
「彼は浮気してるの?」
と巻き髪の女に聞いた。
女は
「いつもよ!もうほんと、許せない!」
と言った。
私は女に、
「『許さない』ならどうするの?」
と尋ねた。
女は、
「え、そ、そんなのどうでもいいじゃない!許せないの!」
と言った。
なので私は、
「いや、『許せない』のは分かったけど、許さない場合、アナタはどうするのか聞いてるの。」
と尋ねた。
女は無言だったので私は言った。
「ノエルがどうとかは一旦置いといて、『一般論』として話するわ。」
そして、
「アナタが望んでたのは『許せない』とか言って、相手が『ごめんよー』とか言ってきて、優しくしてくれるシナリオじゃないかしら?」
さらに、
「見せかけだけの『許せない』に対し、上辺だけの『優しさ』を出すという猿芝居、いわゆる『茶番』よ。」
女の頭の上にもクエスチョンマークが並んでいた。
「私、そういう女が居るのも許せないのよ。そういうのがいるから、男は『浮気なんて大したことないから大丈夫』と、勝手にハードル下げてくるのよ。もっと強烈なペナルティを課さないと、世の中の『浮気』に対する価値観、変わらないわよ。」
と、私が言うと、女はたじろいでいた。
私はノエルの方を向き直し、
「ところでノエル、今の話ってどうなのかしら?とりあえず一旦今から1名、準備しときます。」
私が指をパチンっと鳴らすと、まずはサーベルを持った屈強な男が1人、飛び出してきてスタンバイした。
ノエルは、
「浮気なんてない!ち、ちょっと早く向こうに行って!事情は後で話す!」
ノエルはそう巻き髪の女に伝えた。女も事態を察知したのか、全速力で逃げていった。
「浮気じゃなかったみたいでよかった。」
私はノエルにニッコリと微笑んだ。
ノエルの顔はすでに死んでいた。
…下校前の全校集会…
…ひととおり集会が終わった後、司会の先生が、
『それでは最後に、何か連絡事項がある方はいませんか?』
と、全員に尋ねた。
そこで私は挙手をして、壇上に上がった。
「……えー、私『シークレット』は本日、ノエルくんから愛の告白を受けました。」
…会場はザワザワしている。
『なんなのあの子!?ノエルは私とだって付き合ってるのよ!?』
などと言ってる女子の声も聞こえてくる…。
…ノエルの顔が、青を通り越して緑色になっている…。
「途中、『ノエルくんは浮気しているかも知れない』というような話もありましたが、それは一旦スルーする事にしました。」
そして、
「ただ、私は浮気とウソが嫌いです。今後、この学園内でそういった場面に出くわした時に、私はこうするってのを、今から実践します。」
私はそう言うと、
『ズバーーーーー!!』
…私は持っていた長剣を抜き、壁にかかっていたカーテンを一気に切り裂いた!
『ズバ!ズバ!ズバズバーーーーー!!』
場内にある、切れそうなモノを全部切り裂いていく!
場内はパニックに陥っていた!
『ワーーーーーーー!』
『キャーーーーーー!』
そして、
『ノエル!なんとかしろ!』
『ノエル!お前のせいだろ!?』
ノエルにも注目が集まり出していた。
ノエルはすでに放心状態で、全身 真っ白な灰になっていた。
「私は今日で、この学園は転校します。でももし、この学園で浮気とかがあれば、私はすぐに飛んできます。」
そしてノエルの方を向き、
「じゃあね、ノエル。これからもいい友達でいましょっ」
そして、
「浮気をするのなら、本当の『命』を懸けてやりましょう。」
と言い、壇上をおりた。
……ノエルは塩をまかれたナメクジのようになっていた。
この日以降、ノエルに限らず、学園内にて『不純異性交遊』は無くなったそうだ…。
「これにて一件落着っ!」
〜 おわり 〜
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