表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

Phase8 NPCであるということ


 NPCとは、ノン・プレーヤー・キャラクターの

略称であり、ゲームの進行やクエストの窓口ポータルである。


 説明するまでもなく彼ら・彼女らは一定の繰り返しの定型句しか持たないし

肝心のクエストを受注するまで、延々と世間話をされても現実リアル時間と

同期しているこのゲームでは、受注の時間を惜しむ輩も当然いる


 それでもクエストをNPCからメニュー形式で選ばないのはVRMMO特有の

NPCとの会話のコミュニケーションを重要視してるからである。


 クエスト受注でも

例えばこんな感じである


プ 「ねぇ今、何かある?  そうねぇ サキュホーン狩りしたいのよ」

NPC 「サキュホーンなら○○砂漠付近か ○○平原ですね

   時期も時間も今なら丁度、頃合いですね」


プ 「そっ、 それじゃこのサキュホーン狩りのクエスト受けるわ」

NPC 「では、お受けします リーン硬貨をお支払下さい」

と言われ

此処で、プレーヤーが

「うわっ 高っ おまけしてよ」

と愚痴を言ったとしても

女性NPCは 「このクエストに規定の料金をお支払いくださいませ」

男性NPCなら 「おぅ、規定の料金払ってくんな」

とNPCの外観や性別に応じた、定型句しか返さないだろう


 それが普通で、今ボク:メアがリアと会話しているような”やり取り”は無いはずである

ボクはこの ノン・プレーヤー・キャラクターものカテゴリに入ることで

実に豊かな感情のやり取りがNPCにもあったことを初めて知った。


 ヒナは相変ずポンポン頭を叩くと

「や〜っと 非番になったわ ”たった”3日だけどね

イプシウス社の機器搬入はそれからだから メアはその日ナビゲート・マウントにいてね

何か起こっても涼兄ぃのそれ(アバター)外部からは、どうにも出来ないからね」

「うん 分かった」

と少しオンナノコを意識していた。

「へぇ、すこし らしくなってきたんじゃない? 」

「五月蝿い」

ポカポカ と彼女のアバター(仮想体)を殴るも対して効果はないウンディーネ族の翅が

ゆらゆら揺れるだけであった。


「まぁ、今夜は制限時間迄付き合ってあげる ”寝落ち” して中身無くなったら

メアが守ってよ」

「いいわ ヒナちゃん」

「涼兄ぃ オンナノコみたい」

「やっぱ やめようかな」と

拗ねると

「いやぁ ゴメンゴメン さぁ ”ユノン” を見に行きましょ

肩車してあげる 現実リアルだったら逆なのにね」

とひょいと彼女の首の後ろに視点がいって

あっという間に、肩車の完成である


 ヒナがまだ小さいころボクが小さい躰でふらつきながら肩車してやったっけな

と今は逆に肩車をされながら、昔に想いを馳せた。


「さぁて いよいよ ”ユノン” の登場です 沢村サワムラ 昇一ショウイチ手掛ける

最新アバターモデルの登場です」

と司会の女性アバター(仮想体)が手招きしたのは


淡い、脚まではあろうかと思えるアイスブルーのウェーブ・ロングの髪

と、ややおっとりしただが意思の強そうなアメジストの瞳

パウダーピンクの唇。

雪の如く白い肌

背は遠目ではあったが現実リアルのヒナくらいである

服は、有名デザイナーグループ ”ロレッタ・バレッタ社” のゴシック・ロリータ部門の

ピンキィ・ロレッタシリーズである それらの最新モードを着ての登場であった。

 

 これも仮想衣服でゲーム内でデータ販売され現実リアルでも販売されるアイテムである

ゴシック・ロリータは現在でも今だに人気が高く現実リアルでも主役の女性のみならず

小柄な男性にも”コスチューム・プレィ”としてや、気のはいった

パッショナーになると、普段着としても着こなす人がいるくらいである

エイト(永都)・ホライズン・グループともタイアップで

ハーフサキュバスと男の子の恋モノを歌に綴った


”ギリギリ♡(はーと)にキリキリMind(マインド” 

も併せての発表であった

甘い、チョコレートクレープの匂いのデータフレーバーは本日は無料で提供らしく

会場ではこの香りで満ちていて

ボクは、この外観も相まってオンナノコのような気持ちに酔っていた。


 現実リアルなら、男性整髪料の匂いのする自室か、

会社の汗臭い匂いのする会社の椅子か、そんな匂いにしか縁が無かった

ともかく、ボクには縁遠い匂いに変な気持ちになっていた


 ユノンはやはり素晴らしいモデルデザインで多くのパッショナー(古語でオタクのこと)

が息巻いていて

トレンド・ちゃんねるで事前タイアップ情報を掴んでいたらしく、過去作の

ピンキィ・ロレッタを着込んだアバター(仮想体)も多数見受けられた


 彼女:ユノンは歌を歌いながらピンキィ・ロレッタをリズムに合わせて切り替えて(着替えて)

いく

それに合わせて喚声が沸き起こり 既存のメンバー : ルンナ・リンナ・ユウナ・ネルリ・ツバキ・カナデ

もピンキィ・ロレッタの最新モードを着こなしていった。


<< 『......ア ......メアったら 聞いてる? 』 >>

と魚のナビゲートバディに変化していた ベリアからプライベートでチャットがはいった

<< あゴメン どうかした? >>

このプライベート・チャットは念話を模した物でパーティやナビゲートバディと音声に拠らず

会話が出来るのである。


<< 『貴女のチョーカー 光っているわ』 >>

<< ほんとだ、なんだろ >>

と首元がぼんやり光っていた これはアイテム受領を表す点滅であり

同時に腕輪の花輪もこれに連動していた

チョーカーメニューに触れると驚いたことにドレッサーメニューの項目に

一式衣服として

10点先程お披露目されていたピンキィ・ロレッタの最新モードが

全てフレイメア専用を表す フレイメアの の冠名付で登録されいていたのである

勿論、これらは一般プレーヤーも”後で”購入可能になるのだが

何故かドレッサーストレージに入っていた

そして コメントに


「 私は、”ユノン” 肩車の可愛い貴女にこの衣服をプレセント

実売は一ヶ月後だけど気に入ったら着てみてね

これ私のモデルデザイナー 沢村サワムラ 昇一ショウイチ からの応援アイテムよ

そして、私 ユノン をパーティに加えてくれますか? 

貴女のナビゲート・マウントって素敵なレーヴェンティールでしょ

是非、いってみたいの オ・ネ・ガ・イ♡ これは私の独自のAI判断よ

良かったら ショウニン してくれるかしら? 」

とコメントを視点を動かし読み終えると

同意を求めるメッセージがポップアップされたが 驚いたことに

承認ボタン”しか”表示されていなかった

「はやく シテ」

と促すメッセージまで出てくる始末。

「えい ままよ」

と独り言をつぶやき ホログラムの承認ボタンをタップする。

すると


アバター(仮想体) ユノンは貴女のパーティに正式に登録され

ナビゲートマウントが利用可能に成りました

彼女 ユノン は薬師兼古巫女ドルイドです

と職業が表示された。


 ステージの彼女は相変わらず会場に向けてライブをしている

マルチタスクの凄さを見せつけれた一面である

プログラマー視点でも全く処理落ちしないのはバックにどれほどのクラウドサーバーがあるのか

等と野暮な疑問が浮かぶ。


 ヒナに話すと

「嬉しいけど、私はブルーエアー・ホライズンのメンバーが良かったな」

とごちていた

そう言えば彼女は、小さい頃から 野性的でニヒルな風貌の ”ロウガ” のパッショナーだった

アバター(仮想体)アイドルは年を取ることがない永遠の若きアイドルである

立体ブロマイドや自室には、電子フィギュアが有ったのを見たことがあり

迂闊に触って大泣きされたこともあった。


 こうして バレンタイン イベント第一日は無事終了し明日の同時刻も開催され

10日後のイベントフィナーレには 沢村サワムラ 昇一ショウイチ氏の肉入りアバター(仮想体)

自ら、ユノンの解説をする舞台まで有るらしい

早速皆は、沢村サワムラ氏がどんなアバター(仮想体)で登場するかで話題は持ち切りである


 ゲーム内のギルド内では特設のブックメーカー迄が特別開設されていた

こうしたイベント内でなければ通常は19未満は賭け事は現実リアルでも禁止であるし

たとえ仮想ゲーム内でも

ギルドの一角にある専用の賭場にはアバター(仮想体)は立ち入る事すら出来ないのである。

逆に中の人の年齢さえ満たしていれば子供のアバター(仮想体)でも入場は可能である

勿論ゲームの住人であるNPCは関係ないので出入りは制限がない。


 イベントだけはこうした制限が解除されケーム内賭場でなく特設のブックメーカーなら

15才以上のアバター(仮想体)も可能になるのであるが

大当りはゲーム通貨であるリーンか低額な有料アイテムかの何れかである


 そんな楽しいイベントの真っ最中に

ボクにとって聞き捨てならない台詞が飛び込んできた


「今よぅ 攻略組から変な話が聞こえてきたぜ」

「へぇ どんなよ」

「王都:ギルトスって知ってるか? 」

「あぁ ここいらじゃ一番大きなオベリスクが有るトコだろ? 」

「あぁ 道中のPKフィールドがちょっとウザいけどな」

「ナビゲート・マウント無しじゃちくと難儀な場所通過しなきゃだもんな」

「で 話ってなにさ」

とウル族の女性アバター(仮想体)が割り込んでくる。


「あのな でたんだよぉ ”血” を流すエネミーがさ」

「ポリゴンエフェクトでは無しに? 」

「そうよ 豚犬一匹だったが 間違いねぇ

やっと始末したがよ 死体が消えやがらねぇし

生血はダラダラ ガキどもが大騒ぎってヤツ」

「うへぇ それで運営には連絡やったか? 」

「勿論さ、こういう”バグ”は見つけて連絡すっと 

リアルマネーかゲーム内通貨貰えるだろこのゲーム」


 このイゲン・ルート・オンラインでは、不正チート行為を防ぐ目的で

バグ発見者には現実リアルの日本円かゲーム内通貨のリーンを

貰えるのである


 人の手で作成されるプログラムには完璧は存在しない

この小さなバグがさらなるバグを呼ぶ可能性もある

プレーヤーに有利・不利問わずバグを報告すると

現実リアルにもメリットが有るようにすれば報賞金目当てのプレーヤーは

自ずと血眼になってくれるという訳だ。

勿論、空バグをやたら報告すれば運営には注意はされるが。

「あぁソイツは当然したと思うぜ 何せ、たかが豚犬で死にそうな目に有ってしかも

リアルの内臓モツ見てしまったんだ 気の毒にな」

「うへぇ ソイツは御愁傷様だな」

とウル速男性のアバター(仮想体)が二三人話し込んでいた


 ボクの髪の毛がざわりと動く

「ヒナ 聞いた? いよいよバグのお出ましだね」

「えぇ、 イベントどころじゃ無いわ メアはこのままでいいわ

ちょっと 聞いてきてあげる」

と肩車のまま集団に近寄っていく

「あの ちょっといまの話くわしく教えてくれない」

「おわっ ウンディーネのお姉さんびっくりしたぜ そのチンマイのは? ナビゲートバディか? 」

と視線はボクとベリアに向けられた

「えぇそうよ 攻略もあるし、PKからも邪魔されたくないしね

課金で購入したのよ」

とボク(フレイメア)が中身入りとなれば色々説明がややこしくなるので

ボクとヒナは予めそう設定しておいた。


「へぇ金持ちなんだな アンタ ......おっと済まねぇつい口が滑っちまった」

とワザとらしい弁解をする。

ナビゲートバディは攻略をしやすくしたりPKからアバター(仮想体)を守ってもらったリと

重宝するのである。

但し、サワムラ氏のような有名モデラーがデザイン及び監修することも多く

版権モノ同様データ製品にしてはお高めの価格である。


 フィールドでPKにあうとポータル・オベリスクまで戻されしまう上

ゲーム硬貨も奪われたりバインドアイテム以外を根刮ぎ奪われたりと

ゲームをする上で足枷になるので皆、PKには神経を尖らせているのである。

「いいじゃない 私が稼いだおカネよ私の勝手よ」

「まぁ そりゃそうだげどよぉ まぁなんだ そのオンナノコのバディや魚のバディが

あまりに ”出来” がいいもんで つい、妬みが出ちまった すまんかった」

とこんどは本気の謝罪らしい

「その件は、いいわ それよりさっきのバグの件聞かせてよ

”知り合い”に優秀なプログラマーがいてね 自身の向学のために調べたいんだって」

とヒナの視線がさり気なく上目になりボクは少し照れてしまった。


「そうか ここにはそういう目的で潜っているヤツもいるって事か? 」

中には、駆け出しのモデラーや若手のプログラマーも自身の向学のために

潜っている人も多いらしい事が今の会話で分かったことである。


「そう、彼はゲームとは縁遠くてあまり潜れないからこうして私が聞いて回っているのよ」

「教えるくらいならわけ無いぜ バグそのものはとっくに運営に報告済みだがな

えーっと 場所は王都:ギルトス西 知識と智慧の集積地で巨木 知の大樹:アルカーナ

付近だ ここな やたらとバグが発生しやすくてな

報奨金目当てや、そいつら目当てのPKの聖地になってる

行くんならそのナビじゃ心許無いぜ

まぁ、PKされんように準備やら俺らのような脳筋なウル族のプレーヤー雇うこったな

ガハハハ」

と嫌味のない大笑い。


「ありがと でもアルカーナ内はポータルでしょ? 」

「あぁ、巨大な大樹が空洞になっていてな ”中” はアンチ(安全地帯)だ

問題はその周辺ってわけよ」

「ありがとう えーとお礼は? アイテムいる? 」

「いんや、オレははそんなんいらねぇよ 今日はイベントが目的だし終われば

タンク役で引っ張り凧の身だからよ その度に貰っているからな 

アイテムなんぞインベントリ一杯だぜ なぁお前ら」

「あぁ オレもいらね」

「アタシもよ こう見えてもタンクでね 女のタンクは引く手数多というやつさ

なにせ女のアバター(仮想体)でタンクは少ないしねぇ

見た目も男のアバター(仮想体)よりは眼福モンだろうしさ」

「 ......という訳だ 話は後はないな なぁ? 」

一同頷く

男性ウル族2人、女性ウル族一人の一行はイベントの喧騒に消えていった。


「さぁいよいよ バグのお目見えか ヒナ レーヴェンティールで行くそれとも

徒歩で ”冒険”がてら行く」

ボクはまだこのゲーム自体は体感してないし出来れば

徒歩で行きたかった

あのレーヴェンティールは、遥か上空でボクを追随する筈である

そのことを言うと

「メアの希望に乗ってもいいわよ ババっと着いたらつまんないもんね

面倒になったら途中でレーヴェンティールに乗ってもいいし

イベントはあと9日かぁ 先ずは目的地ができたからイベント終了まではここにいましょ

後でまた キースを寄越すわ その時に非番のスケジュールも教えるわ」

また、あのキースが潜るらしい 賑やかになりそうな予感がしていた。


「ぼくの現実リアルの躰は? 」

ボクの意識が有る以上無事であることには違いないが

現実リアルの躰はやはり気になる。


「相変わらず、バイタルは恐ろしい程安定してる

医者の立場からしてもこんな ”病人” 経験ないわね」

とヒナの言葉を信じた

こと、自分の知見に関してはヒナはウソを付かない事は分かりきっていた。

 

「もう メアったら 心配症なんだから 涼兄ぃは安心してオンナノコを満喫して問題ないわ」

と優しく頬にキスをされ、

アバター(仮想体)越しでも柔らかい感触が伝わって現実リアルの肉体の鼓動が早くなり

それが更にフレイメアのアバター(仮想体)にフィードバックされた。


「うわっ 制限時間が来ちゃった 一時間程休憩とらせて

お腹も減ったし、生理現象もね まぁ医学的に言えば 尿 ......」

「おっと ヒナそこはいい もうすぐ今日のイベントはが終わるし

又、潜る? 」

「う〜ん、 又来るかも知んない どうしよっかなぁ〜」

とワザと間をもたせるように言う。


 潜る制限時間は有るが、インターバル(休憩)時間には制限が無い

従って、カイバーウェアがリンクインを受け入れる限りは何度でも

可能である。


 ボクは スカートをモゾモゾさせ肩車の上でヒナの頭を ぽこぽこ 叩く

「こらっ 叩かないの 何処かの国では頭は神聖な場所よ」

「いーだ ここはその何処かの国じゃないし いいでしよ? 」

とまるで幼いオンナノコのように駄々をこねた

「へぇ もうそんな事までやるようになったのかな メアちゃんは? 」

「うわっ つい このアバター(仮想体)だとこんな事してもいいかなって」

「まぁいいわ、 まぁ一時間だけレーヴェンティールで待ってて これからの方針を立てるわ

徒歩だし改めてスキルや武器を確認しなくちゃって ......何も変わらないか

でも ユノンさん来るかな 彼女の職業って薬師と古巫女ドルイドでしょ

後で詳細訊いておかなきゃね 私、その職とパーティ組むの初めてなのよ

治癒師ヒーラーが二人、被るしね立ち回りを決めておかなきゃね」

「あぁ なんとなく分かる」

「でしょ うぅ 生理現象がぁ〜 カイバーウェアが警告出してるわ」

「早く落ち(リンクアアウト)なよ いい大人が ”お漏らし” 

なんて黒澤くろさわ君には知れたくないだろ? 」

「もぅ メアのバカッ!! 知らない」

とヒナはボクを降ろさずそのログアウトして、そのままヒナのウンディーネの

アバター(仮想体)が掻き消える 必然的にボクは派手に尻餅を付いてしまい

辺りの皆の格好のネタにされてしまった


「さて、今夜のイベントは終了です 明日も同時刻に開催します 

ユノン他六名のアバター(仮想体)の共演をお楽しみに!! 」


 と司会が挨拶して


ワーッ

 

と喚声が巻き起こる。


「今回のイベやけにカネ掛かってんな」

「そりゃ そうかも 新アバター(仮想体) ユノンちゃんのお披露目だぜ」

「ユノンちゃんと、フレンド登録してぇな」

「おれも 以下同文」

「でもよ、ぜってー 無理だぜ」

「そうだな、熱心なパッショナーでもこればかりは ダメだー」

「なぁ もしフレンド登録したら職業は何だと思う? 」

「さぁな でもそれ賭けないか このゲーム内だと 運営に注意されるから

トレンド・ちゃんねるでな」

「おっ いいね 早速、いた申請してみるわ トレンド・ちゃんねるの運営も 

ユノンの宣伝になるなら許可降りるかもよ」


 ちなみにこのいたというのは、掲示板の大きなカテゴリの事を指し

新たにカテゴリを増やすには運営に許可申請して 有益と認められれば即追加の運びとなる

そして、パッショナー達の意見が通り

トレンド・ちゃんねるには ユノン関連版 として見事板いたが立ったのである


 やがてチョコレートクレープ・フレーバの匂いも薄れ人々がリンクアウトしていく

NPC曰くエトランス達がポータルで世界に還った状態になり

残ったのは熱心な、なりきりゲーマーぐらいである。


「あの ちんまいオンナノコ もしかして ”肉入り” かな そうだとすれば声掛けたいな」

「でもよ NPCだったら バカみるぜ お前どうするよ? 」

「いんや 興味あるが今はやめとくわ もう少し ”人柱” が欲しいトコだな」

どうやら先程のヒナとのやり取りやウル族アバター(仮想体)との一連のやり取りを見ていて

気になって来たらしく ボクにもやや好奇な視線が向くようになる

ボクとしてもヒナとのやり取りが嬉しい誤算を招きそうでワクワクしていた ......が

まだ確信が持てないらしい 遠巻きに見ているだけである。


 そのうち眠くなってきて 可愛い欠伸を一つ

ベリアも

『まぁ 貴女の精神はいくらアバター(仮想体)のいえども

疲労は免れないわ レーヴェンティールで ベルと軽く話をすり合わせたら? 』

「そうだね」

とチョーカーメニューからポータルのレーヴェンティールを選択

ボクは一瞬で転送された。


「......あ 行っちゃった 残念今度こそ声かけなきゃね」

と悔しがる一人のアバター(仮想体)が居たのはボクはまだ知らなかった。


「あの レーヴェンティールにいっちゃった 早く ”オフ” にならないかしら」

こんな”独り言”を言って

ユノンはアイスブルーのウェーブ・ロングの髪をさらりと散らしステージ裏へ下がる

演出をした。


「いい? ユノン あのはこの私、沢村サワムラ 昇一ショウイチ

友人の 新国にいくに氏の息子さんよ 訳あって血はつながって居ないけど」

それを無視してユノンはとろりと視線を緩ませた

「ねぇ わたしカワイイ? 」

とおねだりするような ユノンはパウダーピンクの唇を

沢村サワムラ 昇一ショウイチ氏のこのゲーム内アバター(仮想体)

シルフ族の少女 イーリアに唇を寄せる。


「だ〜め それはあのにとっておきなさい

それに カワイイ? なんて愚問よ ユノン 

だって貴女はこの イーリアがデザイン監修したんだから」

「そうだったわね イーリア」

名残り惜そうな目でウィンクする。 


 沢村サワムラ 昇一ショウイチ氏はこのゲームのモデルの監修を依頼され

特別にGM(ゲームマスター モデル部門)の肩書を運営から貰っていて

このイーリアもまた彼の特別製であり イベント期間中のみ このイーリアで

潜っていたのだ。


9日後のモデルは彼の本番アバター(仮想体)でまだ全容は見えていない


「そう じゃ後でね」

とポリゴンブロックになりログアウトしていった。

「今は ゆっくり休みなさい 貴女にはやってもらうことがいろいろ有るからね」

となにやら思惑顔の イーリアであった。


 こうして、ボクはレーヴェンティール内に戻り雰囲気重視と割り切って

可愛いネグリジェに”着替えて”ベッドで休む

明日朝一にはヒナを迎えて先ずは

装備のスキルチェックも兼ねて近場のフィールドを探索する事と決めていた。


 自室に戻ったヒナはモニター越しに兄:涼のバイタルの報告を受ける

[ 涼の兄貴なら恐ろしい程安定してら でももう寝たぜ 睡眠時特有の脳波が観測されてるぜ

まだレムとノンレム繰返しではないから深くはないな ]

「そう どうしようかな 食事も済んだし潜っていいかしら? 」

[ ”いいかしら” でもなんでもいいけど アンタの自由さ 雛お嬢様? ]

「そう じゃあまた三時間潜って、これの制限がきたら後は

現実リアルで睡眠ね シャワーはその時にするわ」


[ へいへい 好きにしな ]

と 雛はヒナとして例のレーヴェンティールにまた降り立った

メアは可愛いネグリジェに着替えて可愛いベッドで既に眠っていた


 ヒナの心は揺れる

目の前には、愛してやまない兄としての涼と、現実リアルだったら世間の注目を間違いなく

集めるであろう 可愛いオンナノコの二律背反の感情が渦巻く

心理学者でもある彼女はこんな時でさえ、冷静に

(あぁ 私ってこのメアに嫉妬してるんだわ 嫌だなぁ 中身は間違いなく

”涼兄ぃ”なのにな)

と多少苛立ちを覚えながらも メアの額にキスをする


んんっ ...... ん


と軽く身を捩る動作は本当にオンナノコの反応そのものである

それを何処で見ていたのか、

彼:涼の据え置き型量子応用コンピューター ”ベルゼーティア”が

「あら、ヒナ ヤキモチね いいわぁ人間って そんな感情があるんですもの

ちょっとこっちいらっしゃいな」

と急に腕をヒナに回してきて 唇を奪った

「えっ なになに? 」

「涼の代わりよ 女でごめんね つい ......ね

人間の愛情表現のマネゴト ......よ 他意はないわ」

としれっとのたまった。


「あ......れ もしかかして、お邪魔だった? 」

と後ろから先程のイベントで聞き知った声が聞こえてくる

「あ ......そのウンディーネの中のひと”男性”かしら そういうプレイ? 」

ここで、中の人が居るのはメアとヒナの二人だけであり

キスをしていたのはヒナだけである

当然視線はヒナを指していた。


「いやぁ 違う違う 中の人は ”オンナ” ですっ!! 」

と慌てて抗弁した。

「なにも弁解しなくてもいいのよ からかっただけよ」

と悪びれもせず平然と言ってのけたのは

ユノン そのアバターであった。

お待たせいたしました

次回 9話 悩める ヒナ

お楽しみに


注釈1

[] と 「」 について

作中で”キース”や”ベルゼーティア”が[]と「」で会話していますが

[]はモニター越し 「」は直接アバター(仮想体)で会話をしています

『』はベリアなどのシステムに関わるキャラクター会話としています

間違いがありましたら 気付き次第修正致します。


語句、ニュアンスの調整は有るかも知れません

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ