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第七十八話 メナールの頼み事【メナール視点】


「アドル殿、少しいいだろうか?」

「あ?」


 騒がしかった食堂内がいつもの雰囲気に戻ると、リシトさんは開店の準備に取り掛かった。

 先ほど鐘が五つ鳴ったので現在午前十時。

 あと一時間ほど時間がある。


 各々席について小休憩しようとするタイミングで、たまたまベルメラ嬢と鉢合わせた際助言されたことを早速実行することに。


「メシ……」

「アドル、まだ少し掛かるぞ」

「チッ」


 明らかに面倒そうな彼の態度を無視して、今回の主役も呼び出す。


「あと、──ツークも」

『っ!?』「ツーク?」


 リシトさんの肩に乗っていたツークは、明らかに動揺して飛び上がった。


「珍しい組み合わせだな?」

「たしかに……意外とない組み合わせですね」


 着席して既に本を開いていたアビーも驚いている。


「支度中にすみません。すぐに済みますので、……よろしいですか?」

「ああ、もちろん。ほらツーク様、Aランク冒険者からのご指名だぞ」

『~!』


 一度肩から降り、そこから私の目の前にあるテーブルに転移するツーク。

 先ほどとは打って変わって、どこか自信満々の様子だ。


「ここじゃダメなのかよ」

「ええ、ちょっとそこまで」

『?』


 必要な面子も揃ったところで、食堂の外へと彼らを誘導した。



 ◆



「──ハァ~~~~? んなくだらねぇコトでオレを利用すんじゃねぇよ」


 食堂前の広場、その南方にある木陰のベンチにて。

 事情を話すと案の定アドル殿は足を組み、面倒そうに言う。


「大体、エプロンが必要なほどオマエ料理すんのかよ?」

「そっ、それはこれから……」

『チチッ!』


 反論していると、私とアドル殿の間に立ったツークが何やら腕を組み凄んだ表情をしてこちらを見ている。


「? ツークはなんと?」

「『やっとアニキへのリスペクトを形にしようと思ったのか、やるな』だと……。口の達者な小リスだなコイツ……」


 先ほど会った際、ベルメラ嬢にお願いしたこと。

 それはリシトさんとお揃いのエプロンを作って欲しいということ。


 ベルメラ嬢からは色よい返事と共に、二つ提案された。

 一つはバーンスパイダーを一緒に狩ること。

 一つは、もしデザインもお揃いのものがいいのならば、相棒であるツークに許可をとってはどうかということ。


 ツークの言葉は主であるリシトさんか、相応の能力がある者にしか分からない。

 しかしリシトさんに頼むのもどこか気が引ける。

 そこでアドル殿に頼んだというわけだ。


「で、ではツーク──」

「『許す』だってよ」

「……! あ、ありがとう……!」

「……なんの茶番だ? こりゃ」


 呆れ顔のアドル殿には分かるまい。

 憧れの者に少しでも近づきたいという想いは……!


「せっかくだし、今のうちに聞いとけよ」

「? 何を」

「おっさんが居ない時にしか聞けないこと」

「!?」


 そ、それは考えていなかった……!


『ッ!』

「どんとこい、だと」

「聞きたいこと……」


 リシトさん自身に聞きたいことはたくさんある。

 どうやって料理を覚えたのだろう、だとか。

 私と出会う以前、どのような冒険をしてきたのだろうとか。


 ただ本人が居ない場となると……。


「その、リシトさんにとって……迷惑ではないだろうか」

『?』

「何がだ?」

「料理を、他人に教えるということが」


 彼が自分についてどう思っているのか。

 聞きたいことと言えば、それに尽きるだろう。


「……ハァ? んなワケあるかよ」

『~~~!!』

「ほら、小リスもこう言ってっぞ。『アニキはむしろ嬉しそう、勉強熱心なメナールにとても感心している』ってよ」

「! なら、いいのですが……」


 リシトさんは優しい。大らかで懐の深い人だ。

 だから他人の頼み事はあまり断れないだろうし、実際のところどう思っているのかは彼の反応からは中々窺えなかった。


「オマエ、意外と自分に自信がねぇのな」

「そうだろうか」

「いや、腕前とか剣士の信念ってのはアレだが。なんつーの? 対人関係?」

「それは、まぁ……」


 どんなに近しい者でも相手のことを分かったつもりになっていて、その実すれ違っていたという経験からか……確かにそういう節はあるかもしれない。


「でもアレだろ? 今回ド派手男の挑戦受けたのは、おっさんのためみたいなもんじゃん」

「……」

「自然と体が動くってのは、オマエにだって覚えあんだろ」

「……!」


 自然と体が動く、か。

 なるほど。


『~!』

「小リスも『そうだそうだ』って言ってんぞ」

「ふふ、それもそうか」


 謂れなき言葉に踊らされる時期を乗り越え、私は自分で自分の剣に意味を見出した。

 今の自分は充分救われている。

 いまさら他人にどうこう言われようが、自分が分かっていればいいと。そう思っていたのだが……。


「私は自分の剣に誇りを抱いているし、序列のある組織に身を置いていない以上……人を推し量るために振るうこともないと、そう思っていたが……。しかし、自分に関わった者の名誉を守るためには、それを厭うことはないのだと改めて気付いた」

「かってぇ~、もっと気楽にいけよ。ド派手男、ムカつく、ぶっ飛ばす。これでいいだろ」

『っ!』

「ほら、小リスも『やってしまえ』だと」

「ふむ。そのためにもアドル殿には稽古に付き合って頂こう」

「オレが勝ち越すまではな」


 剣術大会……必ずミゼルマイド()に勝利せねば。




更新遅くなりましたm(_ _)mスミマセン

次回土曜日の更新予定です。



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