第二十二話 意外な一面
「よぉセレ、お帰り~」
「ただいまモリク。相変わらずゆるいねぇ」
村へと帰ってきた俺たちは、馬車ごと広場まで乗り入れてモリクさんが呼んでいた騎士団の者に盗賊たちを引き渡した。
メナールは騎士団の者と顔を会わせないようにか、先にギルドの中へと入っていった。
ほんと、こういうところにすぐ気が回るよな。
「セレさん、いつもご協力ありがとうございます」
「お安い御用さ。報酬はベルメラに」
「はい、承知しました。──では」
騎士団所有のごっつい二台の馬車に回収されていった盗賊たち。
方角的に、王都やハイケアではなく砦に連行したんだろうな。
ツークはルゥの背に乗って、その様子を見送っていた。
「ん? ……ベルメラ?」
報酬ってのは、きっと盗賊たちに懸けられた懸賞金……だよな。
なんでベルメラに?
「ん? この村の運営費は、あの子のギルドカードから出てるんだよ」
「え!? 運営費!?」
冒険者が持つギルドカード。
ある種の魔道具であるそれは、持ち主の魔力が込められているので他人が不正に利用することはできない。
出費も多く、あらゆる場所へと赴くことも多い冒険者のために、ギルドでは冒険者専用の代理銀行機能も備わっている。利用するにはギルドカードが必要だ。
つまり……、ベルメラはやっぱり村長……!?
子爵令嬢なら、あり得なくはないか?
「まぁ、わたしから言うのもあれだし……。今度、ベルメラに聞いてみるといいよ」
「お、教えてくれるかな……」
むしろ、近づけるだろうか。
「ほら。噂をすれば」
「え!?」
ちょ、まだ、心の準備が……!
「セレお姉さっ────、……」
ま。
そう口元が描いているのに、俺を見つけた途端、満面の笑みがとんでもない形相に変わった。
頭上では降っていた手が行き場なく止まっている。
「──、おじさん……? なにをしていらっしゃるの……?」
こ、こわい……。
静かな怒りに燃えているご様子。
さっき見た笑顔は幻だとでも言うように、目が笑っていない。
前回よりも機嫌がわるい気が……。
「こーら、ベルメラ。そんなに怖い顔しちゃだめじゃないか」
「っ、だ、だって、お姉さま……」
お、お姉さまぁ!?!?
俺との態度の違いが、ツークの誇るギャップよりとんでもない。
「盗賊をちょっと片づけたんだけど、リシトはメナールと一緒に駆けつけてくれたんだ。あんたからも礼を言いなよ」
「い、いや……。お礼なんて……」
それは間に合ってるから、むしろこの場を去りたい。
「…………。この度は、お礼。申し上げます?」
謹んで、お礼頂戴いたします!!!!
そう言わないと殺されそうな。
不本意。至極不満だとでも言いそうな顔で言われる。
俺ほんとうにこの村にいていいのか……?
「はぁ、この子ったら。よその男にはいつもこうなんだから。……だから誰もあんたと組まないんだよ?」
でしょうね……。
俺にも簡単にその光景が想像できる。
「ちがいますわ! わ、わたくしの方が、パーティなんて……その。必要としていませんもの!」
「それはAランクに回された依頼を選んでるからだろ? ただでさえメナールに迷惑かけてるんだから、たまには──」
「っ! もう、いいですわっ!」
なぜか機嫌を損ねたベルメラは、ふくれっ面で村の南側へと帰っていった。
「はぁ」
「な、なんか。すまない……」
「いや、リシトのせいじゃないんだ。男が嫌いなのはともかく、女だろうが誰ともパーティを組みたがらないのさ。わたしとはたまに一緒に行くんだけど」
「そうなのか……」
たしかにセレには懐いている様子だったな。
『あ、アニキィ! 大丈夫でしたか!?』
「ツーク。なにもないよ」
「おや。二人とも、ツークとすっかり仲良しだね」
『ピィ!』
『……』
馬車ではフゥとたくさん喋っていたようだけど、今度はルゥと話していたのか。
背中に乗せてもらって、仲良し三人衆といった様子だ。
……いや、ツークの場合……舎弟?
「盗賊の件は終わったし、わたしはそろそろ父さんと店の方に戻るかねぇ」
「そうだ。セレに聞きたいことがあるんだが、明日は都合いいか?」
「ん? なんだい、改まって。店で見掛けたら、いつでも言いなよ」
「助かるよ。今日はツークが獄炎鳥食べたいだろうから、また明日訪ねる」
「はいよ。またね」
討伐の件はメナールが手続きしてくれているだろうし、解体屋に行かないとだな。
大きい獲物だし、混んでなかったとしても時間がかかりそうだ。
セレには明日いろいろと聞こう。
「リシトさん、いろいろとお疲れ様でした」
ギルドの方からメナールが戻ってきた。
「メナールもな。途中になってしまったが、獄炎鳥。買い取ってもらわないと」
「はい。……解体中、その……」
「もちろん。俺からあとで食堂に来てくれと誘ったんだ。昼食、作るよ」
「! あ、ありがとうございますっ!」
「ハハ、大げさだなぁ」
『オレっちも! オレっちもぉ~~!』
「はいはい。当たり前だろ」
なんだか予想だにしないことが立て続けに起きたが……。
ひとまず、俺が思いついたことは昼食の時にメナールに伝えればいいか。




