どんな勝負でも絶対に勝利する女
「で、あなたはどんな勝負がしたいの?」
カリバにチカが聞く。
カリバの勝負か。カリバは萌衣と比べるとレベルも高い。だが、決して強いというわけではない。戦闘をするとなると、絶対に勝てると言われている相手には勝てないと思っていいだろう。さて、どんな勝負なら勝てるか。
「情報収集勝負で、どうでしょう」
情報収集勝負? さっき爺さんから簡単に情報を聞き出せたからって甘く見過ぎのような。
「分かった、ルールは?」
「決められたお題の情報を、聞き込みで先に集めた方の勝ちです」
「それなら簡単に終わりそう。お題はどうするの?」
「私達二人が知らない情報で、何か一つ」
「じゃあそこのあんた、お題を決めて」
「え、俺?」
お題なんて言われても分かんないって。
ここでさりげなくカリバが知っているお題を出せば百パーセント勝てるのだが、そんな勝ち方に意味はない。ここは二人とも知らなそうな――
って。カリバが知らないことを俺が知るわけなかった。何せ、俺は異世界に来てからまだ一年ちょっとしか経っていない。元の世界でのことならいくらでも二人が知らないことは知っているが、そんなのはいくら聞き込みしたところで情報など手に入るはずもない。
「あんた、いつまで悩んでるわけ? さっさと決めて」
「んなこと言われても」
そう簡単に決められるわけがない。
「早く!」
「じゃ、じゃああそこに止まってる鳥の名前で」
急かされて、なんか適当に決めてしまった。ま、鳥の名前なんてチカだってカリバだって知らないだろうしいいか。いや、普通に知ってるかも……。日本におけるカラスみたいに誰でも知っている鳥だったらどうしよう。
「あの鳥、ですか? 分かりました、頑張ります」
お、この反応は知らなそう。結構マイナーな鳥なんかな。
「鳥の名前ね。オーケー」
チカの反応はなんとも言えない。これは知ってるのか? それとも知らないのか?
「ではスタートです!」
カリバが自分で合図をし、早速動いた。近くにいるお爺さんに、いきなり質問する。
「あの鳥って、なんて名前か知っていますか?」
「いや、知らないねぇ」
「そうですか、ありがとうございます」
一人目は失敗。まあそう簡単には分からないか。カリバはめげずに、すぐに他のお爺さんに聞きに行った。
「知らぬのぅ」
が、またもや知らなかった。まあまだ二人だ。焦ることは無い。
今度はチカの方を見てみる。
「あの鳥の名前教えて」
カリバが敬語でやっている分、チカの聞き方はなんだか感じが悪く見える。まあ俺も敬語を使えないし人のことは言えないのだが。
「あの鳥? あれはヤンバリュキュイニャだけど、それがそうかしたの?」
チカに質問された女性は、悩むことなく答えた。
「なんでもない、ありがと」
試合、終了。チカはすぐに鳥の名前を手に入れてしまった。
あのチカが質問した女は仕込みか?
いや、問題はついさっき決めたばかりなのだからそんな簡単に仕込みなんてできるはずがない。
「カリバ、戻ってこい。もう勝負は決まった」
「え!?」
「ヤンバリュキュイニャだってよ。さっきチカが聞いてた」
「いくらなんでも早すぎませんか!?」
「早い。だけど、それが事実だ」
「そんな……」
カリバは、落ち込んでしまった。まああれだけ自信ありそうだったからな。
「簡単な勝負でよかった。で、次はそのちっこい子だよね」
カリバが落ち込んでいることなど全く気にせずに、チカは言った。そういえば、さっき萌衣が泣いていた時もこいつはどうでもよさそうだった。
「お前、負けた相手のことをなんとも思ってないのか?」
「まあね。だって負けた人のリアクション、いつも同じだったから飽きちゃった」
飽きた、か。こいつにとっての勝負ってのは、俺にっとての女みたいなものなのか。それなら、認めたくはないが少しだけチカの気持ちも分かる。
「ほら、早く次の勝負やろうよ」
「分かったよ。ミステ、頑張ってこい」
『了解』
と言っても、ミステの勝てるものってなんだ? ひょっとすると、何も無いのでは……。
『徒競走』
「え?」
『徒競走で勝負』
「ああ、うん」
ミステって、足が特別速いわけでもなかったような。
ま、いいか。ミステが自ら徒競走って言ってるんだし、徒競走をやらせてあげよう。
その後。予想通りミステは負けた。いったいなぜ徒競走を選んだのか、ミステ以外には誰にも分からない。
ミステの勝負が終わり、いよいよ残すは俺の勝負だけとなった。
「君は、アタシを楽しませてくれるんだよね」
「どうだかね」
正直、こいつの勝つ仕組みが分からなすぎる。果たしてどんな戦い方をしてくるのか。
勝負をするための闘技場へと移動している間、俺はずっとさっきの三人の試合でなぜチカが勝てたのかを考えていた。
闘技場に着き、俺とチカは少し距離をとってから互いに向き合った。
「ルールは先に気絶した方が勝ち、これでいいか?」
「分かった」
俺の言葉に、チカは頷く。
「じゃあカリバ、試合開始の合図をくれ」
「分かりました。では、試合開始!」
さて、どう来る。
まずはじっと待ち、どんな攻撃をしてくるか、じっくり見させてもら――
突然だった。
チカの姿が目の前に見えたかと思うと、俺は地面に倒れていた。
何が起こったのか分からない。痛みは無いが、何故か起き上がることはできない。
少しずつ、少しずつ意識が薄れていく。
――俺は、負けたのか。
ただ一つ、それだけを認識し、カプチーノは意識を失った。




