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混浴②

「なんか、もう、吹っ切れた……」


 いつの間にかタオルが取れていたと分かって、大きな悲鳴を上げた後、しばらく落ち込んでいた女の子はそう一言呟くと、タオルを置いて全裸のままお風呂にポチャンと入った。


「一度見られちゃえば、後は何回見られても同じだし……」


 明らかに元気を失っているが、大丈夫だろうか。


「ま、元気出せよ。女の体なんて飽きるほど見たから、お前の体で一々欲情したりはしないって」


「それはそれで腹立つんだけど……」


 女心って難しい。


「えーと、お前の体、別に恥ずかしがるようなもんでもないと思うぞ? 女の体は飽きるほど見たとは言ったが、たくさんの女を見た中でも、お前の体は圧倒的に綺麗だ」


 これは嘘偽りない本心だ。様々な女を見てきたが、この子の体はどんな女よりも良いと思う。もし俺が女そのものに飽きていなかったら、興奮で何も言えなくなっていたはずだ。


「ほ、ほんと?」


「ああ」


「そっか。えへへ」


 顔を朱くして、女の子は照れた。

 どうやら少しは元気になってくれたみたいだな。


「そんなこと言われたの初めてで、その、ありがとう」


 元気になったどころかお礼まで言われてしまった。


「そっかぁ。私の体、綺麗なんだぁ。えへへ」


 よっぽど嬉しかったのか、既に羞恥心というものは消え、むしろ俺に見せつけるように目の前に来た。

 あの、わざわざ見せつけなくてもいいんだけど……。


「でも、綺麗って言われたことないなんて意外だな。彼氏とかも出来たことないのか?」


 これだけの体を持っていれば、男なんていくらでも寄ってきそうだが。


「うん。トーブ一族は空が飛べるのが当たり前だから、私みたいな空が飛べない女の子なんて、皆見下した目でしか見てくれなかった。彼氏どころか、友達すら今まで出来た事も無い」


「お兄ちゃん」


「分かってるよ」


 女の子の言葉を聞いて、萌衣は決心したようだ。


「お兄ちゃんは、カッコいいお兄ちゃんだよね?」


「当たり前だろ?」


 俺はいつだってカッコいいんだよ、妹の前ではな。


「おいお前、名前はなんていうんだ」


「名前? どうして?」


「俺達全員お前の友達になるからだ。友達なのに名前も知らないってのはおかしいだろ?」


「友達? ほんとに?」


「ああ。な、お前ら」


 俺の言葉に、ミステと萌衣とカリバが頷く。


「ほんとにいいの? だって私、飛べないんだよ?」


「俺らだって飛べないさ」


「そっか、私、友達、できるんだよね? 良いんだよね?」


 目に涙を浮かばせながら、女の子は言う。


「えっと、私の名前はシュカ、これからよろしくね!」


 シュカの頬に、涙が伝う。だが、その涙は決して悲しくて流れた涙では無い。嬉しくて流す涙は、まるで宝石のようにキラキラと輝いて、やがて風呂の水面にポタ、ポタと落ちていった。


「よろしく。俺の名前はカプチーノ」


「うん。知ってる! さっき会話の中でそう呼ばれてたもんね。で、そこの二人は、ミステと萌衣でしょ? 着替える前にそう言ってたもん」


「凄いな、覚えてたのか」


「うん! で、どっちがミステで、どっちが萌衣?」


「そっちのちっこいのがミステで、妹の方が萌衣だ」


「よろしくね! ミステ、萌衣!」


『よろしく』


 ぺこり、とミステがお辞儀をする。


「いやあの、私一応、こっちの世界ではシスタって名前なんだけどな……」


「こっちの世界? どゆこと?」


「ははは、いや、なんでもないんだ。な?」


 その話題はまずいっての!


「もう、お兄ちゃんがいつも萌衣って呼んでくるから萌衣だと思われてるんだよ?」


「いやだって、今更呼び方とか変えられないし」


 ずっと萌衣って呼んできたのに、急にシスタなんて呼べない。


「とにかく、私はミステだからね! シュカちゃん!」


「よく分かんないけど、分かったよシスタ! で、そこのカプチーノの恋人さんは?」


「そいつはカリバだ。後、別に恋人じゃないからな」


「恋人じゃないのに、そういう関係なの!?」


「まあ色々あるんだよ。って、おいカリバ、なんで落ち込んでるんだ?」


 カリバは、ガーンという感じで落ち込んで硬直している。


「だって、カプチーノ様が、恋人じゃないっておっしゃって」


 カリバは今にも泣き出しそうだ。


「ごめんって。お前のことは大切に思ってるから! な?」


「ほんとですか?」


「ほんとほんと。信じてくれ」


「じゃあ、今すぐここで抱いて下さい!」


「なんでそうなる!! ここには子供もいるんだぞ!」


 前にミステが言っていた通り、こいつは淫乱なのかもしれない。


「さて、とりあえず全員分の自己紹介が済んだところで、友達が困ってるなら、助けてあげないとな」


「助けるって?」


「決まってるだろ。空、飛びたいんだろ?」


「飛びたいけど、でも」


「飛べるようにしてやるよ。俺達みんなで」


「ど、どうしてそこまでしてくれるの?」


「友達ってのは、そういうもんなんだよ」

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