混浴①
「ほんとに入るの?」
「なんだ、嫌か? もうミステと萌衣は風呂入ってるぞ」
チビッ子組は、風呂に着いた瞬間さっさと服を脱いで走って行ってしまった。
「嫌に決まってるでしょ! なんであんたまで一緒なのよ!」
「そりゃ、家族風呂だし」
「だからなんで家族風呂なのさ!! 家族じゃないのに!!」
「皆で入った方が楽しいだろ」
「楽しくないし!!」
「口答えしないでさっさと入りますよ」
そう言って、カリバは勢いよく服を脱いだ。
「なんで!?」
「なんでって、お風呂に入るからですけど」
「いやそうじゃなくて、なんで平気なの! ここに男いるんだよ!!」
「だって、カプチーノ様ですし」
「意味分かんないけど!」
元気いいなあ、こいつ。
「では、先に浴槽に行ってます」
「おう、行ってら」
カリバは、俺に一礼すると浴槽へと歩いて行った。
「さて、俺も行くかなぁ」
いそいそと、服を脱ぎだす。
「羞恥心は!? 周り女の子しかいないんだよ!」
「ごちゃごちゃ言わずにお前も早く来いよ。俺は先行くから」
☆
「ふぅー、気持ちいいなぁ」
湯船に浸かると、今日一日の疲れが一気にとれる。
やっぱりお風呂は良いね。
「ねえねえお兄ちゃん。ここのお風呂、ただのお風呂じゃなくて、温泉みたいに効能があるらしいよ!!」
「へぇー。どんな効能なんだ?」
「美肌!」
「激しくいらない!!」
まあ逆に、いる効能はなんだって言われても分からないけど。
『極楽』
ミステも気持ちよさそうだ。
「にしても、あの子いつまで経っても来ませんね」
そういえば、まだ脱衣室から出てきていない。
「私、連れてきます」
「おう、頼んだ」
あいつのために風呂に来たのに、あいつが入らないのでは意味が無い。
「いーやーだー! 離して!!」
ドアの向こうから、抵抗する声が聞こえる。
あの子、多分萌衣と同じくらいの歳だろうし、普通に考えてカリバの力に敵うわけないんだから、無駄な抵抗ってやつだな。
「連れてきましたよ、カプチーノ様」
程なくして、予想通り女の子はカリバによって連れてこられた。
「あー! お風呂にタオルってダメなんだよ!」
『マナー違反』
女の子は、最後の抵抗なのか全身にタオルを纏っていた。
「だって、だって!」
「だって?」
「男の人とお風呂入るのなんて、初めてだし……」
もじもじと体を動かしながら、女の子は言った。
「うっわー。まだガキの癖にもう恥じらいとかあるのかよ~」
「お前が言うな」
ビシッ。萌衣の頭に軽いチョップを入れる。というか、お前らの歳くらいになれば普通に恥ずかしいもんじゃね?
「そ、そもそも、わたしが普通なんだからね!! 皆がおかしいの!!」
「一体、何がおかしいのですか?」
カリバは、まるで意味が分からないといった感じでぽかんとしている。
「何度言えば分かるのよ! 男と入るのがおかしいの! なんなのあんた、そいつともうそういう関係なの!?」
「ええ、まあ」
「そういう関係なのかよ!!」
この子、ボケ倒す系のキャラだと思ってたけどツッコミキャラだったのね。
「いや、マジでそういう関係なの? わたしの言っている関係の意味分かってる?」
「はい。肉体関係のことでしょう? それなら、もう何度も」
「……なんか、よく平然とそんなこと言えるね」
呆れた表情で、女の子が言った。
「別に、隠すことでも無いですし」
「隠すことだよ!」
「そうなんですか?」
「そうなんです!!」
別に、誰が誰とヤったとか隠す必要無くない? 大袈裟だなあこの子。
「にしても萌衣、お前は相変わらず胸ぺったんこだなあ」
萌衣の胸を突いてみるものの、カリバに比べてふにゅっという感覚が少なすぎる。
「それがわたしのわたしであるための特徴だからね!」
いや、普通にミステと胸の大きさ被ってるけどな。
「あーーーー!!!」
「なんだいきなり」
突然叫ぶなよ、びっくりするだろ。
「な、ななななんでその子のおっぱい触ったのさ! あんたの彼女はそこの黄色髪の子なんでしょ!」
「いや、わたし妹だから別にいいじゃん」
「妹!? もっと良くないよ!」
「えー、お兄ちゃんと妹がお風呂に入るって妹なら当然じゃないの?」
「当然じゃないから! 大体なんなの君! 実妹なの? 義妹なの?」
「実妹だけど」
「じ・つ・ま・い!? おかしい! 実の妹で兄と一緒にお風呂なんて普通あり得ないっての!! そういうのは、妹がいない人の妄想!!」
「いや、そんなこと言われてもね……」
事実、こうして一緒に入っているわけだし。
「で、そこのロリっ娘は! 君はなんで一緒に入ってるの!」
「カプチーノとは、約束を交わしたから」
「なんだそれ! もはやなんだそれだよそれ!!」
いや、そのツッコミがむしろなんだそれなんだけど。
「はぁ、はぁ、はぁ」
叫びまくってさすがに疲れたのか、女の子は息を荒げている。
「というか、一つ言っていい?」
「何、まだおかしな言葉が飛び出すの!?」
「いや、そうじゃなくてさ」
一呼吸おいてから、俺は告げた。
「タオル、取れてるよ」
それを告げた瞬間、今までのツッコミのどれよりも大きな声の悲鳴が、浴室に響き渡ったのだった。




