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読書

 照りつける太陽の下、ミステと共に図書館へとやって来た。


 何度か来たこと自体はあるのだが、実際にここの本に触れるのは初めてだ。


 今更な話だが、この世界の文字は日本語では無い。

 それどころか、話している言語ですら、実は日本語では無かったりする。


 けれど、俺はこの世界の文字も言葉も、普通に日本語に変換することができる。

 それは俺だけでなく、萌衣も同じ。


 この世界の言語が何も分からないのではそもそもまともに生活することすら厳しいので、この世界で普通に生活出来るようにと、トラックが与えてくれた力なんだと俺は予想している。


「さて、本を探すか」


 果たして、世界征服のヒントになる本はあるのかね。


 にしても、この本の量から探さなければいけないってのは、結構大変だな。

 

 この図書館は、俺の実家から近いところにあった、市立図書館の本の数の、約四倍はある。

 市立図書館だってそこそこ立派な図書館だったというのに、その四倍ともなれば、目的の本を探すのもすこぶる大変だ。


 一応この図書館に勤務している人に、探している本を大雑把に伝えればその本の場所まで案内してくれるらしいのだが、そもそも俺は、どんな本を読めばいいのかさえよく分かっていない。


『カリバ シスタ 来てる』


「ここにか?」


『今日 図書館行く 言ってた』


「へぇー」


 あいつらも読書とかするのか。

 萌衣なんか、この世界に来るまで一緒に暮らしていたわけだけど本なんて全然読んでいる様子は無かったんだがな。


 ……あいつらが何読んでるのか、ちょっと興味あるな。


 読書スペースで、二人の姿を探してみた。


 お、いたいた。


 二人とも見つけたが、バラバラに座っていたので、先に近くにいた萌衣の本を確認することにする。


「よっ! 何読んでるんだ?」


「あれ、お兄ちゃんじゃん。なんでこんなところに?」


「いや、ちょっとな。で、お前はどんな本読んでるんだよ」


「じゃじゃーん! これこれ!」


 萌衣は本を閉じて表紙を見せた。


「えーと何々……どどんと見せますエッチな写真百連発! ~強気なあの子も男の前ではエロエロに~……って、これエロ本じゃねえか!」


 なんでこんなもんをお前は読んでるんだよ! 十三歳の読む本ではありません。


「没収!」


「えーなんでさー」


「お前にはまだ早いっての!」


 その歳ではまだこういうのに興味もっちゃいけません!


「お兄ちゃんのケチ!」


「なんとでも言うがいいさ。俺は絶対に返さないからな」


 妹が変な方向に進んでいくのだけは絶対に止めなければ。もう遅いかもだけど。

 

 まったく、なんで図書館にこんな本があるんだよ。

 図書館って、こういうの置いてないだろ普通。


「もっと、歳相応の本を読め。な?」


「歳相応の本って何さ」


「えーっと、植物図鑑、とか?」


「そんなのつまんない!」


 そうか?

 図鑑って、結構読みだすと面白かったりするけどな。


 ちっちゃい頃は、恐竜図鑑とか好きだった。


「じゃ、俺は行くけど、きちんとした本読んどけよ」


 萌衣と別れ、カリバの方へと向かった。


 カリバは一体何を読んでいるんだろうな。

 全然予想ができない。


「カリバ、何を読んでるんだ?」


「ひゃ!? カ、カプチーノ様!?」


 なんだ? なんでこんなに慌ててるんだこいつ。


「お前が読んでる本ってどんなのか予想できなくてな、ちょっと見せてくれよ」


「い、いや、見せるほどのものではありませんよ? ふ、普通の一般小説です」


「小説って言っても色々なジャンルあるじゃんか、いいから見せてみろって」


「す、推理小説でしゅよ!」


 でしゅよって……。慌てすぎて噛んじゃってるぞ。


「いいから見せろって」


 カリバから無理やり本を奪って、表紙を確認する。


「なになに……マゾッ子必見! 彼氏をドSに目覚めさせる108の方法!……」


「…………」


「……推理小説?」


「……うぅ」


 えーと。


「お前、Mなのか?」


「ち、違います! たまたまなんです! どんな本を読もうかと本を探していたら、たまたま目につきまして、それで!」


「そうか、ま、うん、良いと思うよ」


 性癖なんて人それぞれ。皆違って、皆いいよね。


「じゃ、じゃあ、俺もう行くから。あ、俺はノーマルだからね? ドSになんか目覚めないからね?」


「ほ、ほんとに違うんですって! カプチーノ様! カプチーノ様ぁぁぁあああ!」

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