表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/203

ミステとデート

『これって デート?』


「そうなるかもな。デートは嫌か?」


 ぶんぶんぶんぶん。

 かたじけねえ! むしろ光栄っす! と言いたげにミステは首を振る。


「かたじけねえ」


 本当に言った。


「じゃ、行くか、デート」


 こくり。

 分かった とミステは頷く。

 ま、デートと言っても飯を食べるだけなんだけどな。


「なんか食べに行きたいとことかあるか?」


『カプチーノが 行きたいところ』


「俺が行きたいところ? いや、そんなの特に無いんだけど」


「ふぇ?」


「ふぇってなんだよ。お前の行きたいところでいいよ」


『美味しいもの 食べたい』


「美味しいものなあ」


 そりゃ誰だって不味いものよりは美味しいものが食べたい。


「うーん、そうだなぁ」


 そういえば、こいつは甘いものが好きだったような気がする。

 クレープもニコニコしながら食べてたし。


「じゃあ、ケーキでも食べに行くか」


「おぉ!」


 なんで今食べたいことが分かったの! っと言いたげな目で俺を見つめる。

 

 俺はミステの顔を見ることで、ミステの考えていることがおおよそ分かる。

 これぞ俺の第二の能力『ミステの心が読める目(ミステシンキングアイ)!』

 嘘です、別に能力でも何でもありません。


 ケーキ屋に着いた途端、誰が見ても分かるくらいミステは喜んでいた。


「ケーキ! ケーキ!」


 ケーキと連呼しながら、ぴょんぴょんと跳ねるミステ。

 無邪気な子供って良いよね、すごく癒される。


「金ならいくらでもあるから好きなもん食べろよ」


「じゃあねじゃあね、ここにある全部!」


「あほっ!」


 ビシッ。ミステの頭をちょこんと叩いた。


「食べ切れるだけにしとけ。足らなかったら後から頼んでいいから」


 食べ残しは良くない。その辺に関しては俺はしっかりした男なのだ。


「じゃあじゃあ! チョコと、普通のと、チーズケーキ!」


「はいよ。俺は、普通のケーキ一つでいいや」


 普通のとはもちろん苺の乗ったショートケーキである。

 ケーキといえばこれ。


 お金を払い、ケーキを四切れ受け取り、開いている席に座った。


「~~♪」


 ほんとご機嫌だな。連れてきて良かった。


「もう食べていい? もう食べていい?」


「ああ、いいぞ」


「いただきますッ!!」


 はむ。

 

 こいつ! スプーンもフォークも何も使わず、直接口でいきやがった!


 いやまあ良いけどね。カプチーノさん、マナーとかあまり気にしないタイプ。


 はむはむはむ。と、ミステがケーキを食べる。

 手を使わずに食べている姿は完全に犬だ。


「どうだ、美味いか?」


 グッ!

 親指を立てて、こいつは最高だぜ! というアクションをする。

 

「こいつは最高だぜ!」


 おお、言った。

 

 にしてもこいつ、さっきから魔法文字全然使ってないな。

 嬉しいことがあると使わない、とかそんな感じなんか。


『カプチーノも 食べる?』


 と思ったら使った。

 ふむ。まだこいつの魔法文字を使うタイミングは謎のままか。

 

「俺は自分のがあるからいいよ」


『あーん してあげる』


「は?」


 いやいやいや。


「あーん」

 

 ここで初めてスプーン登場。

 ミステはスプーンで苺のショートケーキをちょこっと取ると、俺の口元に寄せてきた。


 突然のミステの行動に、俺困惑。

 何人もの女を落としてきたとはいえ、こういう甘ったるいバカップルみたいな行動を、俺は一度もしたことは無い。


「あのーミステさん? 俺が頼んだのもその普通のケーキなんで、わざわざミステのを食べなくても、自分の食べればいいんだけれども」


 ミステが俺に「あーん」しようとしているのは、俺が食べているのと全く同じ苺のショートケーキ。俺のケーキはまだ全然余っているし、ミステのを頂く必要は全く無い。


「ふにゅ!?」


 俺の言葉を聞いて、しまった!? という表情で、ミステはあわあわとし始めた。

 

「うにゅ!」


 そうだ! ケーキを変えればいいんだ! 幸いこっちにはケーキはあと二種類あるぜ! という表情をして、ミステは少し落ち着いた。


「あにゅ!?」


 やっちまった! もう他の二種類のケーキを食べ終わってたぜこんちくしょう! という表情をして、ミステは再びあわあわし始める。


 なんか、見ていて飽きないなこいつ。

 でも、いつまでもこうしてあわあわとさせているわけにもいかない。


「ほら、それ食うから。あ、あーん」

 

 大サービスだ。

 ミステには色々お世話になったし、これくらいのサービスはしてあげてもいいと思う。


 口を大きく開け、ミステのスプーンを待つ。


「……」


「……」


 しかし、なかなかスプーンが来ない。

 

 ミステは、え? 本当にやっていいの? え!? という表情で戸惑っている。


「やっていいから、ほら早く」


 いつまでも口を開けているのはとっても恥ずかしいので、さっさと入れて欲しい。


「やる!」


 いよいよ覚悟を決めたらしい。

 ミステの表情が真剣なものに変わった。


 そして。


「あーん!!!」


 ――勢いよく、俺の口にスプーンを突っ込んだ。


「ムゴッ!」


 アホか! そんな勢いのいい「あーん」があるか!


「ムゴゴ……ムゴッ!」


 うッ、なんでいつまでもスプーンを抜かないの!?

 もう苦しいから早く抜いてくれ! カプチーノさん死んじゃうよ!


「!?」


 ミステは、俺がムゴムゴ言いながらもがいている姿を見て、やりすぎてしまったことにようやく気付き、俺の口から勢いよくスプーンを抜いた。


「ゴホッ! ゴホッ!」


 スプーンが抜かれた途端、咳が連続で出た。

 ほんっと苦しかった。もう本気で死ぬかと思った。


「あわあわあわ」


 ミステは、やっちまった! やっちまっただ! と、今日一番のあわあわっぷりを見せた。


「もう大丈夫だから、とりあえず落ち着け」


「ほんと?」


 わたしのために嘘をついてるんじゃないの? そんな嘘はいらない! 正直な自分を見せて! という表情を、目に涙を浮かべながらミステはした。


「ほんとに大丈夫だ。それに、俺こういうの初めてだったし、良い経験になったよ」


 緊張している女の子に「あーん」をさせてはいけない。勉強になりました。


「うゆゆ!?」


 初体験ですと!? と驚いた表情でミステは俺を見る。


「淫乱イエローとも……まだ?」


「淫乱イエローって、誰だ?」


 そんな人知らないんだけど。


「カリバ」


 カリバかよ! イエローってのは髪の毛が黄色だからなんだろうけど、淫乱ってなんだよ。

 というか、お前カリバのことそんな風に呼んでたっけ?


「あいつともまだだよ。さっきのが、正真正銘人生初の「あーん」だ」


「嬉しい♪」


 この経験! 一生忘れない! という表情で、ミステは喜ぶ。


「そいつは良かった」


 命の危機に瀕したものの、結果的に、俺とミステとの仲は、グッと深くなった気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ