↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピンクウサギの言うことなんか聞けるかっ  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/60

 第四章  ~  はぁ? 主?  ~  (10)

 可能性は否定できない。

「もしかして、あの高梨って奴も、別人になってるってことなのか?」

 ウサギに聞くと、牛と顔を見合わせた。

 しばらく黙ったままでいると、二匹は揃って頷き、頭を上げた。

「それはおそらく、少年の言う通り。きっと“元”高梨順也でしょう。このブタ牛が消去した者が、新たな人物となって存在しているのでしょう。私はそんな例外は初めてですが」

「……待て。それって、じゃぁ、三上や風間もどこかで別人として生きているってことか?」

 話を聞き終えたとき、ある可能性が掠め、声が上擦ってしまう。

「まぁ、例外がない、とは言えませんが、ほぼないと考えていいでしょう」

 ウサギの反応を見て、ちょっと安堵した。

 三上に対しては同情の余地もないけれど、“生きている”可能性があると知るだけでも、罪悪感は薄れてくれた。

「……冗談じゃないわよ」

 気持ちが晴れていたのに、杏奈の抑揚の堪えた声が静かに響いた。

 ただの空耳だと杏奈を見ると、目尻を吊り上げ、険しく牛を睨んでいた。

「どういうことなの、ベコ。私はそんなこと聞いてないわよ」

 杏奈の口調はより険しくなり、牛を責めていく。牛も肩をすぼめ、またうつむいてしまう。

「いいじゃないか。変に人を消すことにならないんだからさ」

 率直なことを言うと、杏奈の標的が僕に変わる。吊り上がった目はどう猛な鷹みたいで、背中に力が入り、肩が固まってしまう。

「なんで、そんなに否定的なんだよ」

 頑なな拒み方に疑念が湧き、口から出ていた。すると、杏奈は溜め息をこぼし、イスに深く凭れた。

「私はね、殺したい奴がいるの」

 鼓膜に響く言葉に反応し、瞬きをしてしまう。

「……嘘だろ?」

 信じられずに固まったあと、呟いてしまった。

 杏奈に険しい表情のまま睨まれてしまう。動じない顔に息が詰まる。

「そいつはクズなのよ。本当に殺したい。それに罪人の対象にだって、いつかなるはず。だからそいつが標的になるのを待っているのよ」

「マジでか」

「そうよ。だからベコに手を貸しているのよ」 

 不意に考えてしまう。普段の杏奈の印象はこんな女の子だったのだろうか、と。

 おそらく想像したイメージから、今の姿はかけ離れていた。

「山下くんって、やっぱり優しいんだね」

 普段見ない姿に言葉を失っていると、目尻を下げた。どこか懐かしく感じてしまうのは、これが普段の姿なんだと気づかされたから。

「でも、私は違う」

 安心していた途端、杏奈はバンッとテーブルを叩いて立ち上がる。

「悪いけど、私は下ろさせてもらうわ」

 突如、断言する杏奈。どちらかというと、牛を見て。

 実際、牛は途方に暮れ て杏奈を見上げている。助けを請うような寂しげな様子で。

「主よ、それは冗談でーー」

「私は本気よ。あいつを殺せないなら、やっている意味がないから」

 突然のことで慌てる牛。必死に杏奈の腕に抱きつき、制止しようとするけれど、杏奈はまるでハエでも払うように牛を振り払うと、自分のカバンを肩にかけた。

「悪いわね、ベコ。でも私も譲れないの。こういう言い方は変かもしれないけれど、頑張って」

 一気にまくしたてる杏奈。まるでもう関わらないで、と厚い壁を張ったみたいに吐き捨て、背中を向ける。

 待ってくれ、と思わず立って引き留めるけれど、杏奈は揺らぐことなく、遠離っていく。

 牛が最後まで「待って」と叫んでいたけれど、届くことはなかった。

 考え方は人それぞれですけど……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。