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ピンクウサギの言うことなんか聞けるかっ  作者: ひろゆき


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 第三章  ~  ぬいぐるみ?  ~  (9)

 私は責められるべきではないのである。

           7



 どこを走っているのかはわからなかった。

 わかっているのはあの“影”から必死に逃げているのと、けたたましく蹴っている地面の足音だけ。

 暗闇のなかを走っている、というのが明確な表現なのかもしれない。ずっと光を求めて。

 光を見つけないと“影”に追いつかれそうで、必死になっていた。

 誰かに足を掴まれた感覚で、もつれて倒れてしまいそうになっていると、遠くに微かな光が洩れていた。

 その先に行けば、影から逃げられると、より足に力を込めた。

 迷っている隙もなく、光に飛び込んだ。これで影から逃げられるんだと。

 光が広がり、眩しさに目が眩み、手で目元を覆う。

「はぁ?」

 光に慣れ、手を下ろして辺りの光景を把握したとき、間の抜けた声が洩れた。

「ぬぅあ~。だから、なぜ、私が責められなければいけないというのだ」

 驚きにまみれていると、ウサギの金切り声が霞んだ視界を晴らしてくれた。

 広がった光景に、これまで体を縛っていた恐怖心が一気に散っていった。

 これはウサギの夢のなか、ふざけた世界に紛れ込んでしまったのか、と疑いたくなる。

 ウサギはまた十字架に貼りつけになっており、足下にはまた無数のぬいぐるみが群がっていた。

「高梨順也は私ではないぞ。私は標的を外れた者を処分するほど、バカではない。絶対にしないのだから」

「そんなことを聞いているのではないっ」

 ウサギの叫びをサルのぬいぐるみが一蹴し、手にしていた槍でウサギの足を突いた。

「我々が聞きたいのはあの“マーク”だ。あれは何を意味しているっ。あのようなことをするのは、違反行為であるぞ。我々は痕跡を残してはいけないのだから」

「そうだ、お前は間違っているっ」

 事情は把握できないのだけれど、サルがウサギを叱責しており、周りのぬいぐるみたちもそれに従い、ウサギに罵声を挙げ、手にした武器を掲げていた。

「私には関係のないことだっ」

 “マーク”とは何を指しているのかわからず、ずっとウサギを眺めていると、ウサギも抵抗して、縛られながらももがいていた。

「あれは私を陥れるための誰かの仕業であろうっ。ならば、私を攻める前に、そのバカ者を探すのが先決ではないのか。私は潔白なのですぞ」

 なかばずっとウサギが悪者として、ぬいぐるみたちに責められている。

 と、声だけだと受け止められるけれど、光景を見てしまうと、ぬいぐるみたちが戯れているだけにしか見えない。

 声とは裏腹に、微笑ましくなってしまうのである。

 だからか、さっきまでの緊張は解れ、頬が緩んでしまう。

「頼むっ。私を助けてはくれないか。そうだ、少年。私の味方はあなたしかいないのだ。そうだ、少年よ、助けてくれたまえ。どこかにおらぬか。さぁ、今ですぞ、助けられるのはっ」

 助けを求められて悪い気はしないけれど、ウサギの話を聞いていると、途中から眉をひそめてしまう。

 ウサギは助けてもらう立場なのに、どこか上から目線で、助けを求めていたのである。 

 助ける気は急に失せてしまい、腕を組んで眺めた。このままウサギが追いつめられていくのを見届けるのも悪くない。

 いや、見捨ててやる。

「助けないのか?」

 口角を上げ、無様なウサギに満足していると、どこからともなく声が届く。

 それは群がるぬいぐるみがウサギに向けたものではなく、僕に向けられてい。

「助けるって言ったって、これは夢だろ。だったら、助けられないだろ」

 どこから聞こえるのかはわからない。ただ宙に向かって洩らした。

 それでもぬいぐるみたちが反応することはない。

「さぁ、少年。早く私を助けたまえっ。さぁっ」

 ウサギの懇願が耳障りなほど強く、広間に響いた。

「あのウサギがこんな状況になっているのは、お前のせいだ」

 声が背中の方から責めてくる。

「お前が悪い」

 さぁ、私を助けなさい、少年っ。

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