ババカタラ王 1
ララサララの意識は闇の中を漂っていた。暖かい闇だった。
(……?)
誰かに呼ばれた気がした。
上も下も、右も左も、前も後ろもわからない中、ララサララは辺りを見渡した。すると、闇の中に、金色に淡く光る小さな輝きを見つけた。そこに意識を集中すると、輝きは大きくなり、すぐ近くまでやってきた――いや、ララサララが近づいたのだろうか?
(私に呼びかけたのはそなたか?)
(陛下?)
何故気が付かなかったのか、輝きの正体はルーリーだった。
(呼びかけたのはそなただったのか?)
(いいえ。私も、誰かに呼ばれました)
闇の中で、ララサララとルーリーは顔を見合わせた。ここがどこだとか、自分達はどうなったのか、等という疑問は浮かんでこなかった。お互いの姿が見える以外は、やはり闇のままだ。
(また聞こえた)
(私も聞こえました)
それは微かな声――まるで、残響のような声だった。
(子らよ……)
ララサララは声に意識を集中した。そして、今にも消えそうな、青白い輝きを見つけた。それは――
(我が遠き子らよ……)
気が付くと、柔和な微笑みを浮かべた女性が、ララサララとルーリーに正対していた。
(始まりの母……ババカタラ王か?)
ララサララの問いに女性は頷いた。
(アプ・ファル・サルの子……、そして、金翠の子……百の年月を越えて、ここにこうして集うたのも運命か)
女性――ババカタラ王は、大きく手を広げた。
(今こそ、子らに……失われた真実を……)
闇が、ざわと揺れた。
ララサララとルーリーの意識は、大波にさらわれたかのごとく、彼方へと押し流された。




