出逢い 10
「私は、何も知らないふりをして医師に姫様を渡しました。たまたま入られた扉の中で、急病になられたらしい、という話で通しました。その話を、三諸侯や女官長が気付く前に、王宮内に広めました。即位前の急病で王宮内は大騒ぎになり、まだ準備ができていなかった偽者は使えず、結局三諸侯は、本物の姫様を王位に就けざるを得なくなりました」
ルーリーは絶句した。
「三諸侯は、守護魔法を残すとか、三国に対する牽制とか、そういうつもりで姫様を王位に就けたわけではありません。元々偽者を仕立てるつもりだったんです。前王陛下と同じく、幽閉するつもりだったのでしょう。でも、彼らの失敗は、姫様を幽閉することができずに見失ったことにあります。結局見つけられずに、それでも予定通り偽者を使ってことを進めようとした。そこに、本物が出てきてしまった……」
「良く、ララサララ女王陛下はご無事でしたね」
「発見された後ですか?」
「ええ」
「療養中は、〈奥の宮〉は医師と女官以外は立ち入り禁止でした。警護も、次期女王ということで厳重でした。三諸侯が自分達で発表したことが、逆に姫様を守ることになりました。結局あの人達は、姫様ひとりなら後からなんとでもなると思い直したのでしょう」
「嘘から出た誠だったのですね……」
ゴーン、ゴーン。
時を告げる時塔の鐘の音が王宮内に響き渡った。晩餐の時間が近づいていた。
「ありがとうございます、ルーリー様。王子殿下のこと、姫様が喜びます」
リルが手紙を懐にしまいながら言った。
「父には、また別に使者を立てます」
「そう。大変だと思うけれど、女王陛下をお守りして」
「はい」
「さあ、急がなくては」
ふたりは急いで部屋を後にした。




