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第32話   死神と異世界の村

『すごいなあ! まさかこんなに沢山、お金を貰えるなんて!』


 交易所で買い取ってもらった魔物の死骸などは、防壁の修復用に前借りしてあった分を差し引いても、かなりの額になった。

 だからと言って、ここはもう町の外よ。この男は、なんで財布を覗き込んで嬉しそうにしてるの?


「では、参りましょうか。総員、周囲を警戒! 行軍開始!」


 馬車が3台。それぞれに8人ずつ24人の兵士と、バド、案内役のカッツという男、ノブトシというメンバーで、東の村を目指す。

 村の周囲にある防壁が、ほぼ完全に直ったので、救助のために多くの兵士を割り振ることが出来た。

 ……つまりこれも、ノブトシのおかげ。


『いやー! これだけの人数だと、さすがに心強いですね!』


 なのにこの男、それを自分の手柄だとは、(おくび)にも出さないわ。


 ……ノブトシ! ちゃんと〝俯瞰(ふかん)〟で警戒するのだ、愚か者。


『あ、そうだった! えっと、バドさん、この先に、怪しい生き物が何匹か居ます。少し進路を右にずらして下さい』


「ノブトシさん、すごいですね! どうして分かるんですか?」


『ああ、えっと……例の〝呪い〟の延長みたいなヤツですよ』


 何でもかんでも、私の力だと言えばなんとかなると思ってない?

 ……っていうか、私は呪いじゃないし!


『しかし、すごいですね、この馬車。荒れ地でも泥濘(ぬかる)みでも、ほとんど全力疾走だ!』


「ははは。車輪と軸を魔法で強化してあるのですよ。だから、ちょっとやそっとの悪路は問題ありません。それに馬も、強力なヤツを選びましたから!」


『そういえば、馬は、村の特産だと聞きました。さすがですね』


「はい! もちろん、馬にも術を掛けてありますので、数日間は疲れ知らずで走ってくれますよ」


 この馬、よく見ると、元の世界の馬とは少し姿が違う。若干首が短く、相当に足が太い。スピードより、頑丈さ重視ってトコね。


『あ、また何か居ます。今度は、もう少し左に進路を変えて下さい!』


 ノブトシの新しい祝福(ギフト)俯瞰(ふかん)〟は、真上からの視界を得ることが出来るという、便利なものだ。


「ははっ! これは思っていたより、ずっと楽な道中になりそうですね」


 それは良かったわ。早く安全に用事を済ませて、防壁が万全な元の村まで戻らないと。

 ……ノブトシが、さらに面倒なことに首を突っ込む前にね。






 >>>






 ノブトシ。見えたのか?


『うん。〝俯瞰〟の視界ギリギリに、村っぽいのが見えるよ。けど……』


 ん? どうかしたのか?


『ああ、ヒドい……バドさん、村の中に魔物が! すごくたくさん居ます!』


 やはり相当な数か。できれば、村人の救出は諦めて、このまま帰ってほしいわ。まあ、絶対にそれは無いでしょうけど。


 ……で、どんなヤツか分かるか?


『カッツさんは、小柄な人間のような姿って言ってたけど、これ、ファンタジー系のゲームとか漫画で見かけるヤツだ』


 ……ほう、小柄で肌が緑色か。どれ位の数が居るんだ?


『数えきれないぐらい居る。僕たちだけで大丈夫かな、これ……』


「ノブトシさん。その緑の魔物、小鬼(こおに)だと思いますが、サイズが大きいのや、武装しているヤツは居ませんか?」


『ちょっと待ってください……えっと、もう少し近づかなければ分かりませんが、たぶん、居ないと思います』


「良かった。それなら、100や200匹は、なんとかなると思います」


 〝小鬼〟と呼ばれるその魔物は、雑魚のようね。

 鍛えられた兵士なら、赤子を相手にしているのと変わりないらしい。


「ただ、体型の違うもの、それに、装備を身に着けたものは上位種ですので気をつけて下さい。強さが極端に違いますので……」


 ああ。そういうの、絶対に居るパターンよね。だって、その東の村にも兵士は居たでしょうに。

 ……赤子相手に壊滅寸前にはならないわよね?


『あの、大きな建物が、村人が立てこもっている集会場かな。すごい数の小鬼が群がっています』


「肉眼でも、村の入り口が見えました。小鬼ごとき恐るるに足りません! 一掃してやりましょう!」


 ……大丈夫かしら。

 まあ私は、ノブトシさえ守りきれれば、それで良いんだけど?

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