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世界をめぐる誓いー紅碧の邂逅ー  作者: Nodoka
2.ギヴィス独立都市編
24/27

1.杖

「ラントルが小さくなっていくと、なんか寂しいね」

「またいつでも来られるわよ」


 カヨは、だんだんと小さくなっていくルミーノ王国の王都ラントルを馬車から見送る。


「鍛冶の街に行って、杖を作るんだよね?」

「そうよ、魔法士にとっては重要なものになるわよ」

「杖を使うと魔法が安定するんだったよね?」


 杖は、魔法の転句と結句に大きく影響を与える。

 転句では魔法式の展開を安定化させ、結句ではより指向性を付けやすくなる。


「ええ。特に無詠唱だとよりその効果をはっきするのよ」

「そうなの?」


 カヨは今の杖なしでも、かなり魔法を扱えるようになった。それでも、杖を使うと式を安定させるのに使っていた時間の分、発動が短くなる。


「そういえば、杖ってマラザス商会とかじゃ扱っていないの?」


 服や防具、小物類など旅に必要なものは、ほとんどマラザス商会で購入した。


「杖は使用者との親和性が大事なのよ。だから、職人に頼んだほうが良いのよ」

「だから、店に杖が少なかったんだ」

「そうだ、カヨ。どんな形状がいいか考えていたほうが良いわよ」


 セイカのその言葉にカヨは、顔をぱあと明るくさせる。


「自分で考えられるの!? どうしようかなー?」


 カヨはわくわくといくつか案を描き出していく。




❀❀❀




 それから、休憩を挟みながら半日ほど経ち、馬車が停まった。


「着いたようね」


 巨大な山脈のふもとに広がる鍛冶の街、ギヴィス独立都市。ラントルとは違う活気で栄えている。


「すごい……!」

「それじゃあ、行きましょうか」


 セイカの案内で、彼女の知り合いの鍛冶師の工房へ向かった。


「ヘストス、いるかしら?」


 セイカが工房の中へ呼びかけると、奥からずんぐりとした男性が出てきた。


「ガキが来たと思ったら、ガキじゃねえか」

「失礼ね、レディと言ってちょうだい」

「それで、今日は何の用だ?」


 セイカは後ろに隠れているカヨを前に押し出した。


「私とパーティを組んでいるカヨよ。この子の杖を作って欲しいのよ」


 ヘストスはカヨを眺める。


「お前、かなり強いだろ」

「え、えっと。セイカに教えてもらったので!」


 素直なカヨに、セイカは思わず彼女の頭を撫でた。

 師匠を褒める、いい子だ。


「まあいい。それより、杖の形は決まっているのか」

「こんな形にできますか」


 ポーチから、移動中に描いた紙を取り出し、ヘストスに渡した。


「ちょっと待ってろ」


 そう言って、奥へ入っていった。


「セイカ、あの人が鍛冶師さん?」

「ええ、ドワーフの鍛冶師ヘストスよ。私の剣もここで作ってもらったのよ」

「お前は、面倒な注文をしてきたがな」


 ヘストスがいくつかの材料を持って、奥から戻ってきた。


「カヨと言ったか、杖の本体を選べ」


 木材、金属、動物の骨、植物。あとは、よくわからない棒状のもの。

 だけど、選べと言われても何がいいのかわかるわけもない。


「どんなのがいい、とかはあるのですか」

「本体は好きに選んでいい。材質、重さ、色など完全に好みだ」


 いつくか手に取ってみる。

 白い木材は、手に吸い付くような感じする。金属は少し重い。


「これは?」


 何なのかよくわからないものだ。やわらかいが、硬さもあるという不思議な物体。


「それは植物のつるだ」

「カヨ、それはおおすめしないわ。だって、使用者の魔力を奪うものなのよ」

「えっ!?」


 カヨはあわてて、手を引っ込めた。


「全く。ヘストス、どうしてこれまで持ってきたのかしら? これで作った杖なんて、私でも扱えないわよ」

「いつ、こいつの適任者が現れるかわからねえからな」


 その間にもカヨは、ほかのものも確かめていく。


「これが1番しっくりくる。これにします」


 美しい象牙色の木材だ。握ると手にしっとりとなじみ、重さも程よい。


「本体はこれだな。次は魔法石だ」

「魔法石?」

「なんだ、知らねえのか。セイカ、説明してやれ」

「貴方が説明すればいいじゃない」


 しかし、ヘストスは面倒だというようにずんずんと歩いていく。


「カヨ、魔法石というのは、杖で最も重要なものよ。魔法石のおかげで、式が安定するのよ」


 カヨはどんなにすごい石なのかと、楽しみに聞いている。


「ここが、石の保管庫だ」


 ヘストスがドアを開いた。


「すごい……!」


 ランプに照らされて輝く、色とりどりの石が並べられている。


「いいか、魔法石は親和性が重要だ。よく見て、よく感じて選べ」

「は、はいっ!」


 1つずつ、丁寧に見ていく。

 紅い、炎のように燃えているような石。

 冷たく氷のように、凍てついている石。

 全てを呑み込みそうな、漆黒の石。

 光を一点に集めたような、純白の石。


「この石……」


 色は澄んだ青空の碧。満天の星空を閉じ込めたようにきらきらとしている。


「綺麗な石ね。貴女によく似合っているわ」

「ヘストスさん、これにします」

「本体はこれで、石はこれ。完成図はこれでいいんだな?」


 象牙色の木材と碧星(あおほし)の石、さっき渡した紙を持って、カヨに確認した。


「はい、お願いします!」

「すぐにはできねえから、また明日来い」

お待たせしました、新編開幕です!

ギヴィス独立都市編は、毎週日曜日20時半に更新します

毎週を予定していますが、できない場合もあります

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