4-3「魔人軍侵攻①」
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カルマ達カルマリスタは、バルテミア東地区にある連邦議事堂へ向かって歩いていた。
連邦議事堂とは、コロラド連邦加盟国家の代表者達が議会を行う際に使用される施設である。
「ここか。」
「一見、普通の迎賓館みたいな施設ですけど……ここが狙われるんですかね?」
「まぁ、優先度は低いらしいよ。
だから俺達しか配置されてないんだと思う。」
「で、どうする?」
「そうだね。周囲も見渡せそうだし、屋上へ上がってみようか。」
カルマ達は議事堂の屋上へと登っていく。
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「おー、悪くないね。」
「国璧の外まで見えますね。」
連邦議事堂自体は、そこまで大きな建物ではない。
だが、バルテミア東端に位置している為、屋上からは東側の国璧より高い位置から、草原と森を一望することができた。
…………。
その時だった。
周囲の雲が、まるで引き寄せられるようにバルテミア上空へ集まり始める。
雲間から覗く空は紫色に濁り、雲は脈打つように不気味にうねっていた。
風は、湿気と泥が混ざったような臭いを運んでくる。
何かが起こる。
そんな予感だけが、街全体へ静かに広がっていった。
「何かが来る……」
配置についた戦士達が、それぞれ同じ感覚を覚えた瞬間――
バルテミア各地から、陰鬱な魔力が一斉に溢れ出した。
その魔力は瞬く間に都市全体を覆い尽くし、至る場所で魔人や魔獣の気配が突如として現れる。
「転移魔術……魔人軍の襲撃だ!」
「もう来たのか……」
カルマ達が守る連邦議事堂周辺には、今のところ魔人軍の姿は見えない。
三人は屋上から周囲を警戒する。
すると――
離れた場所から、大きな爆発音が響いた。
「何だ!?」
「ボス、あそこです!」
ハウロスが指差した先――
バルテミア城の一部から、大量の黒煙が上がっている。
「城が爆発した?」
「バルテミア城……兄さん……」
そんな中、カミルだけは城ではなく、東の国璧外に広がる森を見つめていた。
「カミル、どうしたの?」
「いや……何か……」
その瞬間だった。
バルテミア東側二キロ以上先に広がる森の奥から、眩い光線が稲妻のように走る。
それは一直線にバルテミア城へ向かい――
次の瞬間、城の一部が消失した。
轟音と共に壁面が崩れ落ち、瓦礫が周囲へ飛び散る。
「な、なんだ?」
「遠距離から狙撃したのか?」
「ボス……」
「うん。あれはやばい。
あの距離から射撃を続けられたら、バルテミア城の戦士達がやられてしまう。」
「でも、かなり距離がありますよ。あんなの、どうすれば……」
カルマとハウロスは、国外から放たれる異常な長距離攻撃を前に言葉を失う。
いくらバルテミア城にダグラス達天級戦士が配置されていようと、あれ程の狙撃を援護として受け続ければ、防衛側は圧倒的に不利になる。
しかし、あの距離へ対応するには、一度バルテミアを離れ、東の森まで索敵へ向かうしかない。
カルマの魔術ですら、有効射程はせいぜい二〜三百メートル程度だ。
そんな中――
カミルは屋上の床へ膝をつき、双刃弓を静かに調整していた。
「カミル、何してるの……?」
「ここから森の敵を狙撃する……」
「え!? そんなことできるの?」
「やったことはない。
だが、ゲド族に伝わる話では、初代族長は三キロ以上先の標的を正確に撃ち抜いたらしい。」
「いや、それって言い伝えみたいなもんじゃ……」
「攻撃を与えられなくてもいい。
敵が脅威を感じれば、バルテミア城への狙撃は止まる。
それに、私はゲド族の中でも特に目がいい。二キロ先なら視認できるはずだ。
今ここで打てる手は、これしかない。
私を信じろ。カルマ。」
その言葉には、強い覚悟が込められていた。
カルマはカミルの目を見つめ、静かに頷く。
「わかった。君に任せる。」
「よし。じゃあ君は他の持ち場へ行け。」
「え?」
「ここにはまだ魔人は来ていない。
君の力は、もっと別の場所で必要とされる。」
「でも――」
「ボス、行ってください!
カミルが集中できるよう、俺も残ります。だから大丈夫です!」
カルマは二人のことが心配だった。
だが同時に、この一年半、それぞれが別々の任務へ就いてきた理由も理解している。
強大な敵を前にしても、各自が単独で戦えるようになる為。
それこそ、今のような異常事態に対応する為に。
「うん! わかった!
ここは二人に任せたよ。」
「はい!」「ああ。」
カルマは屋上から飛び降り、その場をハウロスとカミルへ任せて走り去った。




