82.窓辺の母
カルマはハウロスに現状を手短に説明する。
「分かりました。なら、ボスはバランを連れて4階へ向かってください。」
「王国軍が迫ってるんだよ!?」
「ええ、なんとか足止めくらいはして見せますよ。」
「でも...」
カルマが悩んでいるとダースが話し始める。
「大丈夫だ。ガーディスを突破して登ってくる兵士がそう簡単に出るとは思えねぇ。
来たとしても俺はまだ戦えるし、ローグベルトとそっちのお前はボロボロだが、まだ何とか動けるだろう?」
「そっちのボスも人使いが荒いな。」
「がっはっは、全くだ!」
カルマはその話を聞いてバランの元へ行き、手を握る。
「わかった。なら俺は4階へ向かう。やばそうなら上がってきて。」
「はい!」「おう。」
「行こう!バラン」
「うん!」
カルマはバランと共に4階へと登っていく。
カルマはバランを連れて4階へと到着した。
既に敵の気配も王族達の姿もない。4階と5階は実権を持つ王族の中でも高位の人達が住むフロアらしく、緊急時の避難用通路も設けられているそうだ。
おそらく王も既に脱出していることだろう。
「バランのお母さんはもうここにいないんじゃ…」
「そんなことない!母さんはきっと残ってくれてる!」
カルマは不安はあったもののバランの言葉を信じ進むことにした。
一つ一つ扉を開けていくが、どの部屋ももぬけの空である。
「突き当たりの部屋で最後か……」
カルマとバランは最後の部屋の扉の前に立ち、ゆっくりと扉を開ける。
「……!」
2人が扉を開けると、そこには窓から外を見る女性の姿があった。
「お母さん?」
バランはその女性に声をかけるが、窓辺から振り返ることはなくただ外を見ている。
「帰りなさい……」
「やっぱりお母さんなんだね。」
バランは声を聞いて、母である"レミノア(バランの母親)"だと確信する。




