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5周目の人生で異世界を救った話   ~5人目の転生者を英雄へと仕立て上げる兄と、仕組まれた運命に抗う少年~  作者: MINMI
三章 戦士団ヘリオサマナ編

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3-2「模擬戦闘試験③」


 ⸻


「では、次じゃ。ハウロスとマーズ、中へ!」


 アリディアが次の試合を告げる。


「では、行ってきます。ボス。」


「うん、がんばれ!」


 ハウロスは闘技場の中央へ歩いていく。


 視線の先には、マーズという眼鏡の男が立っていた。


 線は細く、戦士らしい威圧感も闘争心も感じられない。


 少なくとも見た目だけなら、脅威には見えなかった。


(……油断は禁物か。)


 ハウロスは魔鋼を剣へ変化させ、構える。


 その技を見た戦士達がざわつく。


 魔鋼は戦士にとって珍しくない。だが、ハウロスのように瞬時に自在な形状へ変化させる者は稀だった。


 ハウロスはじりじりと距離を詰める。


 しかしマーズは動かない。


 警戒を強めたハウロスは、さらに魔鋼を取り出し、弾丸へ変化させた。


魔鋼弾マジックバレット


 二つの弾丸が一直線にマーズへ飛ぶ。


 マーズはその場にしゃがみ込み、地面へ手をつけた。


 瞬間、足元の地面に光の紋様が浮かび上がる。


範囲(エリア)結界……」


 光の紋様から円柱状の結界が立ち上がり、マーズを包み込む。


「あれは……結界魔術……」


 魔鋼弾が結界へ直撃する。


 次の瞬間――


 弾丸は弾き返され、逆にハウロスの頬を掠めた。


「っ!?」


「あれは……反射の結界?」

 

「ああ。物理反射の結界だな。」


 クレインが頷く。


「マーズは魔術士の中でも珍しいとされる結界魔術士だ。」


「結界魔術……」


 ……


(遠距離はダメか……)


 ハウロスは魔鋼の剣を握り直し、一気に距離を詰める。


「焦ったな……」


 その瞬間だった。


 気づけば、ハウロスは巨大なドーム状の結界の中に閉じ込められていた。


広域結界(ドーム) 魔力障壁」


 ハウロスは魔鋼を変形させようとする。


 だが、魔鋼は不安定に形を崩すばかりで、うまく形成できない。


「魔力が上手く扱えない……」


「僕の結界内にいる限り、君の魔力コントロールは乱れますよ。」


「ちっ!」


 ハウロスは結界の外へ出ようと走り出す。


 だが結界はハウロスの移動に呼応するように広がり、ハウロスは出口へ辿り着くことができない。


「この広域結界は、まだまだ広げられます。逃げ場はありません。」


 その時。


 足に何かが巻きついた。


「!?」


 マーズの持つ武器――杖状の柄から、鎖付きの重りが伸びていた。


 連節棍棒フレイルのような武器だ。


 マーズがそれを引く。


 ハウロスの身体が宙へ浮き、そのまま地面へ叩きつけられた。


「がっ……!」


「この結界内にいる限り、君に勝機はありませんよ!」


 ハウロスは再び立ち上がり、走る。


「何度やっても同じです。」


 マーズは結界をさらに広げながら、フレイルで攻撃を続ける。


 ハウロスは避け続けながら走り回る。


 そしてふと、小さく呟いた。


「やっぱり、ボスはすごいな……」


 ハウロスは立ち止まる。


 その手には、再び安定した形へ戻った魔鋼剣。


「な、なぜ!?」


 今度はハウロスがマーズへ向かって走り出す。


「前に、うちのボスに聞いたんだ。結界魔術のことを。」


 

*****

〈ハウロスの回想〉


 ミルズ王国にいた頃。


 ハウロスは真剣に本を読むカルマへ声をかけた。


「今度は何の本を読んでるんですか?」


「んー、結界魔術。」


「習得するんですか?」


「いや。結界魔術は複雑だから、そう簡単には覚えられないよ。」


「では、なぜ?」


「相手が使ってきた時の対策。」


「なるほど……で、対策は?」


「結界魔術には三種類あるんだ。」


 カルマは指を立てる。


部分(パーシャル)結界、範囲(エリア)結界、広域(ドーム)結界。違いは範囲。」


「つまり広域結界が一番強い?」


「いや、そうとも限らない。」


 カルマは本を閉じる。


「範囲が広いほど必要魔力が増える。つまり、広げれば広げるほど効力は薄くなる。」


「なるほど。」


「だから結界に閉じ込められたら、とにかく広げさせるのが大事。」


「でも結局、攻撃するには術者に近づかなきゃいけないですよね?」


「そう。でも結界魔術には特徴がある。」


「特徴?」


「広げられるけど、狭められない。」


「……あ。」


「魔力って、一度放出したものを圧縮し直すのは難しいんだ。」


「そ、そういうこと。」

 

*****

〈回想終了〉

 


「お前は結界を広げすぎた!」


 ハウロスが一気に間合いを詰める。


「ふっ、結界魔術を舐めすぎですよ!」


 マーズは広域結界を解除し、自分の周囲へ新たな結界を張る。


「あれはさっきの反射結界……?」


 ハウロスの脳裏に、再びカルマの言葉がよぎる。



******

〈再び回想〉


「でも、そう聞くと結界魔術って、そこまで複雑には聞こえませんけど。」


「問題は結界そのものじゃないよ。」


「と、いうと?」


「結界に何の効果を付与するか。」


「効果?」


「例えば、“全ての攻撃を防ぐ結界”を張ったとする。」


「最強じゃないですか。」


「いや、広すぎる効果は弱くなる。すぐ破られるんだ。」


「なるほど……」


「逆に、“炎魔術だけを防ぐ結界”なら、炎には滅茶苦茶強い。」


「効果範囲が狭いから……」


「その通り。」



〈回想終了〉

******


 ハウロスは結界目前で剣を下ろした。


「……?」


炎の玉(エドラー)


 ハウロスの手から火球が放たれる。


「なに!?」


 マーズの目が見開かれる。


「俺だって、初級魔術くらい使えるんだよ!」


「いや、でもまたはじかれるぞ――」


「いや。」


 クレインの言葉を、カルマが遮る。


「今度は通る。」


 火球は反射されることなく結界を通過し、マーズへ直撃した。


「がっ……!」


 マーズが吹き飛ぶ。


 術者が結界の外へ出たことで、結界は消滅した。


 ハウロスは一気に飛び込み、魔鋼の剣をマーズの首元へ突きつける。


「俺の魔術じゃ大した威力はないけどな。後退させるくらいはできる。」


「そこまで!!」


 ジーダが終了を告げる。


 ハウロスは剣を戻し、マーズへ手を差し伸べた。


「よく、あの結界が“物理反射”だと見抜きましたね。」


「魔鋼反射か物理反射かはわからなかった。でも、魔術なら通ると思った。」


 ハウロスは肩をすくめる。


「攻撃パターンが割れてる相手に、わざわざ結界を弱くするとは思えなかったから。」


「なるほど……」


 マーズは立ち上がり、苦笑した。


「結界魔術士の思考を読まれました。完敗です。」


 二人は固く握手を交わす。


「エイミーに続いてマーズまで……」

「こいつら本物か?」

「いや、でも次は天級のラディールだ……」


 戦士達が固唾を呑む。


 カルマリスタの実力は、もはや誰にも無視できないものになっていた。

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