64.作戦会議
「それで、残っている勢力は?」
「残りの勢力については私の方で説明します。」
アマンダは懐から折り畳まれた紙を取り出すと、それを広げる。それはミルズ王国全域の地図だった。
「まず、王宮には王族を守るため、多くの衛兵が配置されています。ですが、そのほとんどは1階のみです。2階以上は王族と許可された者しか入れない場所。ですので、1階さえ抜けてしまえば、後はたいした数はいません。」
「なんだ意外と簡単そうじゃん。」
「ええ。ですが、問題は帰りかと。」
「帰り?」
「王宮にいる衛兵はあくまで必要最低限。
主力は兵舎や街の外に待機されている。王国軍です。
王国軍が到着すればひとたまりもないでしょう。」
「時間との勝負か……」
「王国軍はどこに待機しているんだ?」
アマンダは地図を指差しながら説明する。
「王国軍は大きく分けて3箇所に分かれて待機しています。一つ目は兵舎、ここは最も王宮に近い場所ですが、あくまで兵士たちが休む場所です。武装が解除されているため、組織として動くには少し時間がかかるでしょう。」
「二つ目はここ。
国の南側にある正門。ここには武装した兵がいるけど、北の端にある王宮までは少し距離があります。」
「ここは……?」
カルマはアマンダが広げた地図の端、ミルズ王国 国外のラダの森との境の部分にしるしが付いている部分があったのでそこを指差す。
「理由は不明ですが、そこにも国軍兵がいつも配置されています。ですが、ここは更に王宮から離れていますからそこまで脅威ではないと思います。」
「……。」
カルマはその地図をしばらく注視していた。
その後も作戦会議は続き、侵入経路の確認、王宮内の配置などを話し合った。
そして、5日後の作戦決行を決意し、その日は解散した。
カルマ達3人は部屋に戻りバランに5日後の作戦を伝えた。バランは緊張した顔を見せた後、決心したように頷いていた。
「バラン、大丈夫だ。俺たちに任せろ。」
「ボス、俺たちの初任務ですね。」
「任務?」
「一国家への反乱なんて、俺達が戦士だからやるんですよね?」
カルマはそう言われてハッと気づく。
今思えば確かにかなり大きなことをしようとしている。
前の人生からは考えつかないことだ。
前の人生では人に迷惑をかけてばかりだった。
だからこそ、見返りがなかったとしても人の為にできることをやる。
それが新しい人生、それが戦士なんだ。
「人生、リスタートだ…」
「え?」
「リスタ……ってどいう意味ですか?」
「あ、いや。再始動とかここから始まる…的な」
「いいですね、それ!」
「え?」
「戦士団の名前ですよ!」
「それがどうしたの…?」
「カルマリスタ...なんてどうですか?俺らの戦士団の名前」
「えぇぇ、戦士にもまだ慣れないし。」
「非公認の戦士団ってことでいいじゃないですか。それに団長の名前を戦士団の名前に入れることも多いんですよ。」
「カルマリスタ、私も良いと思うぞ。カルマ」
「んー、まぁ、名前で何か変わる訳じゃないけど…」
「じゃあ決まりですね!カルマリスタの初任務、必ず成功させましょう!」
それから数日間は各自が自由に過ごした。
ハウロスとカルマは王宮の偵察をしたり、魔術の訓練をしたりした。
カミルは街の中を探索したり、火の魔獣を召喚して散歩させたりしていた。カミルは魔獣に「メラ」と名付けた。
何だかんだペットができたようで嬉しいのだろう。
当分は魔力暴走の危険はなさそうだ。




