53.襲い来る戦士
「……なっ!」
路地裏を埋め尽くすほどの火炎が路地から噴き出ている。
カルマはバランを引っ張り上げ、攻撃を回避し路地から飛び出す。
「おいおい、なんだあ?ガキが増えてるな。」
「私の火炎爆発を避けるとは、ただのガキじゃないようね。」
そこには手斧を持った大男とローブを着た女が立っていた。
「なに…?あの人たち」
「バラン、下がってろ…」
(剣士か?それに魔術師、おそらくどこかの傭兵か戦士団だろう。狙われているのは俺かバランか……)
カルマは剣を抜き構える。
「ほぅ、坊主、やる気か?そこのガキを黙って渡せば命は助けてやったものを」
(狙われているのはバランか……)
「おっちゃん戦士か?俺の知ってる戦士は人攫いなんてしないはずなんだけどな。」
「がははは、そうかもなぁ。ガキにはまだ早ぇが、大人の仕事にはそういう仕事もあんのよ。」
「そうか、ならじゃあガキはガキを助けることにするよ。」
「なんだぁ、本気でやる気か?はっ、クレディア、手ェ出すなよ。」
「ええ、私子供嫌いなの。あんたに任せるわ。」
中年の大男は手斧を構える。
「俺様は戦士ローグベルド、俺様のいうことを聞かなかったことを後悔しなぁ」
ローグベルドは手斧を振り上げカルマに飛びかかる。その巨体からは想像できない速度で飛びかかってくる。
「……!?」
カルマはその斧を剣で受ける。その剣には炎を纏っている。
「魔剣フレイア……」
カルマは剣でローグベルドを薙ぎ払う。
ローグベルドはバックステップにて距離を取る。
「おまえ、ただのガキじゃねぇなぁ?」
それを見ていた魔術師のクレディアも驚いた表情を見せる。
「お前達はなぜこの子を狙う?」
「お前には関係のねぇ話だ。」
そういうとローグベルドは手斧を構え、力を込める。
手斧を持つ右手に魔力が集まるのを感じる。
「今度は受けきれるかな?」
ローグベルドは大きく飛び上がり空中から手斧を振り下ろす。
カルマは間一髪避けるが、寸分先ではローグベルドの手斧が地面に突き刺さり、地面が陥没しひびわれている。
(危ねぇ…まともに受ければやばい。)
カルマは一度下がり、剣を腰に納め、ローグベルドへ両手をかざす。
カルマの右手から火の玉、左手から氷の玉を放つ。
二つの魔術は回転しながら一直線にローグベルトに向かっていく。
ローグベルトは腕で頭を覆うように防御する。
……
直撃と同時に熱と冷気で激しい水蒸気が発生し、周囲に水蒸気が立ち込める。
「やった……か?」
白煙の中からローグベルトの姿が現れる。
「…!?」
「ははは、小僧にしてはなかなかの魔術じゃねぇか。
惜しくはあるが、大人しくしていれば痛みを感じないように逝かせてやる」
じりじりとローグベルトはカルマに近づく、
カルマは腰に納めた剣に手をかけ、動きを止める。
「ふ、恐怖で足がすくんだか?」
ローグベルトはカルマの前まで来ると斧を振り上げる。
「これで終わりだ!」
その瞬間、カルマは少し顔を上げローグベルトに鋭い目線を向ける。
「魔剣フリージア 抜 氷柱烈閃!!」
カルマが勢いよく剣を抜くと、横一線にローグベルトを切り付けると同時に複数の氷柱が剣から放たれ、ローグベルトを後方に大きく吹き飛ばす。
「うがあぁぁ!」




