46.解呪
カルマが剣で削った跡は魔法陣だった。カミルを囲うように魔法陣が描かれている。
「あれは…結界術の魔法陣?」
カルマは魔法陣から一歩離れると手をかざす。
「抗魔結界…」
すると、カミルの足元に描かれた魔法陣が光だし、その光はカミルを包むように形状を変化させ水晶のような形になる。
「うぅぅ……う」
カミルはバタバタと暴れていたが次第におとなしくなっていき、果てには眠るように意識を失った。
少し時間が経ち、カミルは目を覚ます。
「う…ここは…」
「おお、カミル、正気に戻ったか。」
「あれ?長老?」
記憶が混濁するカミルに長老はこれまでカミルが自我を失っていたことを説明する。
「そうか、私は何かに取り憑かれていたのか…?」
これまでとはうってかわり冷静な口調で話すカミル
「いや、君は取り憑かれてなんかいないよ。」
「ボス、カミルはどういう状態だったんです?」
「うん、昔カストリアに住んでる魔術士の知り合いに聞いたことがあるんだ。悪魔憑きとか呪いの類はたいてい魔術によるものか、魔力の暴走かのどっちかだって…
ハウロス、君は魔力のコントロールが上手でしょ?」
「まあ、そうですね。それだけが取り柄というか…」
「魔力っていうのは僕達、魔術士だけじゃなくて、誰しもが体に魔力を持っている。
僕達魔術士は魔力をコントロールして魔術を放つけど、魔術士じゃない人達も日常的に魔力を微量に放出しているんだ。
それは余った魔力を無意識的にコントロールして発散しているということ」
「…なるほど、でもそれがどうしたんです?」
「カミルはおそらく、体内に秘めてる魔力量が普通の人よりかなり多いと思う。」
「私の体に?」
「だけどそれと反対に魔力のコントロールは余りされていない。魔力の発散が追いついていないんだ。
体内に蓄積されていく余った魔力はやがて……」
「やがて……?」
「魔力過多によって魔力の暴走を引き起こす。
戦士の界隈では狂人化って呼んだりもするね。ハウロスは聞いたことあるでしょ?」
「状態異常魔術を扱う天級剣士、英雄レイン…
でも確かレインのバーサク付与は最終的に……」
「うん。石化する。だからカミルも急がないと危なかったんだ。石化が始まる前に止めないと」
「私はなんということをしていたのか……」
長老が頭を抱え崩れ落ちる。
「カミルを悪魔憑き扱いをしていたばかりか石化させるところであったのか……」
「まぁ、魔術が普及していないここではわからなくて当然だよ。」
「その者の言うとおりだ、これは私の未熟さ故に起こったこと、長老が気に止む必要はない。」
「あの結界術はなんだったんですか?」
「ああ、あれは基礎結界術の抗魔結界、対魔術士用の結界で徐々に魔力を奪われていく結界だよ。
実戦ではもっと広範囲に張らないと意味ないんだけどね。カミルを覆うくらいはできると思ってね。」
「そういうことだったんですか…言ってくれれば俺も手伝ったのに」
「ごめんごめん、時間がないと思って焦ってたんだ。」
「君には色々と助けってもらったようだ。ありがとう。」
「私からも、カルマ殿本当に助かりました。ありがとうございました。」
カミルと長老はカルマに向かって頭を下げる。
「良かったですね。ボス」
「うん!」




