2-4「作戦会議①」
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ハウロスは宿へ着くと、神妙な面持ちで口を開いた。
「以前この国に来た時、ボルドーという男と知り合いました。元ミルズ国軍兵です」
「元兵士?」
「はい。軍を辞めた理由が、現王ドルドスとの軋轢だったと聞きました。もしかすれば協力を得られるのではと思い、先ほど会いに行ったのです」
「それで?」
「……全面協力する、と。ただし、詳しい話は仲間を連れて明日もう一度来い、と」
部屋に沈黙が落ちる。
「信用できるのか?」
「正直、わからない。一度会ったきりだし。」
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「すみませんボス。話を持ってきておいて……」
「いや、十分だよ。情報があるだけでもありがたい。行こう、その男のところへ」
「大丈夫か?」
「うん。会って、話を聞いて、それから判断すればいい」
「……なるほどな」
「では、明日案内します」
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次の日、カルマ達はハウロスの案内でボルドーの元へ向かった。
その中にはアマンダの姿もある。王宮内部の事情を知る者として、カルマが同席を求めたのだ
辿り着いたのは、札に“close”と掛けられた酒屋だった。
中へ入ると、無精髭を生やした大柄な中年男が一人、酒をあおっている。
「連れてきたぞ、ボルドー」
「あぁ……お前らか。よく来たな」
低く太い声。
「話は聞いている。知っていることを教えてくれ」
「まぁ座れ」
ボルドーは酒瓶を置き、腕を組む。
「お前達のような者が現れるとは思っていた。俺もドルドスとは馬が合わず、公職を辞した身だ」
「それなのに、二年も反乱が起きていない理由は?」
カルマの問いに、ボルドーは口端を上げた。
「理由か。そうだな…」
「三傑……ですか?」
アマンダが答える。
「ほう。あんた、王宮関係者か?」
「元第一王子グラリス様の秘書官です」
「はっ……そりゃあまた、不遇なお立場だ」
ボルドーは続ける。
「ミルズは軍事大国じゃない。兵の数も多くはない。だが、ここ最近では戦争でも内乱でも、負け無しだ。」
「なんで?」
「その理由がミルズ三傑だ」
空気が変わる。
「筆頭剣士ガーディス。無限刀のラミ。矛使いグロウス。三名とも戦士ではないが、実力は戦士で言うところの天級相当」
「天級……」
「特にガーディスは実際に元天級の剣士。その中でも上位に並ぶと言われている」
天級の中でも上位。
それはこの世界でも頂点に近い存在だ。
名だたる強者たちの名が挙がる。
雷剣士ガルム、天才術士アリディア、剛剣士ダグラス、英雄レイン、氷結魔剣士ルドロス。
「その連中に迫る実力……ってことか」
「そうだ。だから正面からでは誰も動けなかった」
カルマは小さく息を吐く。
「じゃあ、無理なんじゃ……」
「そこでだ」
ボルドーの目が鋭く光る。
「五日後、隣国バルディッシュで年に一度の貴賓会が開かれる。東側諸国の大貴族が集う場だ」
「……」
「例年、三傑は護衛として派遣されるため、王都を離れる」
「五日後……」
「その情報は確実か?」
「信じるかはお前ら次第だ。だが事実だ。元秘書官殿、例年の派遣は?」
「……事実です。毎年、護衛のため三傑は国を出ます」
「そういうことだ」
「それで、ミルズ兵の残っている勢力は?」
「残りの勢力については、私の方で説明します。」
アマンダは懐から折り畳まれた紙を取り出し、静かに広げた。そこにはミルズ王国全域の地図が描かれている。
「まず王宮ですが、王族を守るため多くの衛兵が配置されています。ただし、その大半は一階のみ。二階以上は王族と許可された者しか入れない区画です。ですから、一階を突破できれば内部の戦力は大きく減ります。」
「なんだ、意外と簡単そうじゃん。」
カミルが肩をすくめる。
「ええ。ですが問題は“帰り”です。」
「帰り?」
「王宮内の衛兵は最低限。主力は兵舎や街の外に待機している王国軍です。彼らが到着すれば、包囲されるでしょう。」
「時間との勝負か……」
「王国軍はどこに待機しているんだ?」
アマンダは地図の数か所を指し示す。
「大きく三か所です。一つ目は王宮近くの兵舎。距離は近いですが、通常は休息中で武装は解除されています。動員には多少時間がかかるはずです。」
「二つ目は南側の正門付近。ここには常時武装した兵が駐屯しています。ただ、王宮は北端にありますので、到達までには距離があります。」
そしてアマンダは、地図の端――ラダの森との国境付近に付けられた印に触れた。
「三つ目がここ。理由は不明ですが、常に国軍兵が配置されています。王宮からは最も遠い位置にあるため、直接的な脅威は低いと考えられますが……」
「……。」
カルマはその印をしばらく見つめ続ける。
森の近くの理由不明の駐屯。
(何かを守っているのか……それとも、隠している?)
「どうしたの、カルマ?」
「いや……少し気になっただけ。」
その後も会議は続いた。侵入経路、王宮内部の構造、撤退ルート。
そして五日後――決行することが決まった。
その日はそこで解散となる。




