2-3「王位継承問題②」
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カルマは闇商店を後にし、路地に出る。
すると、人影が一つ、向こうから歩いてくる。
「あの、すみません。」
「……!」
カルマは反射的にフードを深くかぶる。
衛兵ではない。頭巾を被った女性だ。
「その眼帯……あなたがカルマ殿ですか?」
「……どうして俺を?」
不用意に反応したことを一瞬で後悔する。
「あなたに内密のお話があります。」
「君は?」
カルマは警戒を崩さない。
「昨日、少年を助けるために戦士と戦ったでしょう。
その件で、あなたに頼みがあります。」
「……味方だって言うの?」
「ええ。少なくとも、あなたの敵ではありません。」
フードの奥の目が、真っ直ぐこちらを見ていた。
「とりあえず、話だけ聞くよ。」
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その頃、宿屋では。
「ボス、遅いな。大丈夫かな。」
「ハウロス。お前が言っていた店、本当に安全なんだろうな。」
「王宮の息はかかってないよ。少なくとも俺が知っている限りは。」
「“限り”か。」
カミルが腕を組む。
その時、扉が開いた。
「ボス!」
「ごめん、遅くなった。」
「何かあったのか?」
「魔導書に夢中になってただけ……って言いたいところだけど、少し進展もあってね。」
二人の視線が鋭くなる。
「どういうことだ。」
「店を出たところで、ある人に声をかけられたんだ。」
カルマは荷物を置き、今日の出来事を語り始めた。
……
カルマが魔導商店を出た後、声をかけてきた女性の名はアマンダといい、元ミルズ王国の秘書官だという。
現在の王はドルドス。
だがアマンダが仕えていたのは、その父――先王の時代だった。
先王には二人の王子がいた。
兄、第一王子グラリス。
弟、第二王子ドルドス。
アマンダは、第一王子グラリスの秘書官だった。
先王は偉大な王だったという。
そしてグラリスもまた、誰に対しても分け隔てなく接する人格者で、民を想う心を持った王の器だった。
誰もが疑わなかった。
次の王はグラリスになる、と。
対してドルドスは、傲慢で他者を見下す気質の持ち主。
王にふさわしいとは、到底思えない人物だった。
――だが、事態は急変する。
先王が急死したのだ。
突発性の病によるもの、と発表された。
そして残されたのが、遺言だった。
この世界の遺言は“魔導符”によって残される。
魔力を込めた意思は文字となり、魔導符に刻まれる。
そこに刻まれた魔力が本人の残した者であることを証明するのだ。
その魔導符には、こう記されていた。
“王の地位、資産、権威、統治権、その全てを第二王子ドルドスに継承する”
王家の者たちは愕然とした。
なぜ、グラリスではないのか。
誰もがそう思った。
だが魔導符に刻まれた魔力は、確かに先王のものだった。
こうしてドルドスは王となった。
当然、反発は起きた。
グラリス派の兵が蜂起し、大きな内乱へと発展する。
その鎮圧に援軍として来ていたのが、当時のカストリア兵――ハウロスたちだった。
反乱は鎮圧された。
グラリス派は処分され、第一王子グラリスは行方をくらました。
正確には――
「幽閉、されています。」
アマンダはそう言った。
国のどこかに幽閉されているそうだが、ですが場所はわからないそうだ。
そして彼女は、カルマに懇願した。
「どうか、グラリス様を救ってください。」
見ず知らずの少年に、涙を流しながら。
藁にもすがる思いだったのだろう。
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「……と、いうことなんだけど。」
カルマは話を終えた。
カミルが腕を組む。
「なるほどな。だが、それは好都合ではないか?」
「どういうこと?」
「バランの母を救った後の問題があっただろう。王そのものを正せば、根本が解決する。」
「つまり、ドルドスを失脚させてグラリスを王位に戻すってこと?」
「そうだ。」
ハウロスが苦笑する。
「簡単に言うね……。現王を失脚させて、幽閉された王子を救出って、相当だよ?」
「まあね……」
カルマも難しい顔をする。
「まだ調査が必要だな。」
「まぁ、でも、世論的にはなくはない話なんでしょうね。」
「え?」
「元々グラリスが後継にふさわしいと思われていたんです。今もドルドスに不信感を持っている者は多いはずです。それに……先王の急死と、あまりに都合の良い遺言。」
「……ドルドスが先王を?」
「証拠はありません。でも、不自然です。」
「急死した王が、なぜ明確な遺言を残せたのか。しかも愚かな次男を指名するなど。」
カミルの投げかけた疑問に一同は口を閉ざし思案する。
「当時のミルズは相当混乱していたはずですよ。」
「……うん。」
カルマは息を吐く。
「よし。明日からそれぞれ調査しよう。でも、王宮には近づかないこと。無茶もしない。」
「わかりました。」
「特にお前がな。」
「わかってるって。あとカミル、明日の午前中時間ある? 魔導書からいくつか試してみよう。」
「ああ、頼む。」
こうして打ち合わせは終わった。
少年を救う作戦は、いつの間にか王国の闇へと繋がっていた。
それでもカルマは、迷ってはいなかった。




