34.別れ
そしてその晩、カルマはフィルスに呼び出される。
「カルマ、お前は15歳になったらこの国を出るのか?」
「うん、そのつもりだけど…」
「戦士協会の風習に捉われる必要はないからな。」
「え?」
「私は師に連れられ旅に出たのは8歳の時だった。」
「15歳よりも早く国を出るべき…と?」
「いや、そういう道もあるのだと言いたかっただけだ。力があるならば救える命もあるからな。」
「……」
「では私は行く。」
「え!このまま行くの?」
「ああ、長居する気もないのでな。」
歩き出すフィルスを慌てて追いかけるカルマ。
「あ、あの、フィルス!
最初は怖い人だと思ったけど、フィルスが先生でよかった、ありがとうございました!」
フィルスは最後に笑みを見せながら手を挙げ、去っていった。カルマはその後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
フィルスはカルマと別れ、1人歩く。夜空の星を見上げ、カルマとともに過ごした日々を思い返す。
(弟子とは不思議なものだな。私は別れも感謝も伝えることができなかったが...
いまなら届くだろうか。先生…ありがとう。)
それから数日して、ダグラスもカストリアを離れるという。
「またいつでも帰ってきなさい。」
「無理しないでね。」
「はい。ありがとうございます。お母さん、お父さん。」
ダグラスはカルマの前に立つ。
「カルマ、いいかもっと強くなってお父さんやお母さんを守るんだぞ。」
「うん!」
「それと……」
ダグラスはカルマに近づく
「フィルスに言われたこと…俺も同じように考えている。」
「え?」
カルマはフィルスに言われた言葉を思い出す。
"戦士協会の風習に捉われる必要はない"と。
カルマは悩む顔をして俯く。
「まぁ、お前の人生だ。よく考えてみるといい。」
ダグラスはカルマの肩に手を置くと、そのまま後ろに振り返り歩いていく。
「兄さん!待っててね!強い戦士になって兄さんの助けになるから!」
「おう、楽しみにしているぞ!」
ダグラスはカルマに笑顔を向け去っていった。
こうしてフィルスに続きダグラスも旅立っていった。




