表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5周目の人生で異世界を救った話  作者: MINMI
一章 平和の国カストリア編
20/147

フィルスの昔話①


「フィルス、前に話してた昔の話、聞かせてよ。賢人ルドラの弟子だった頃の」


「どうした、急に」


「いや……嫌ならいいんだけどさ」


 本当は昔話が聞きたいわけじゃない。

 ただ、何か話していたかった。明日には街へ戻る。その前に、今しか聞けない話がある気がしたのだ。


 フィルスはカルマをしばらく見つめ、ふっと小さく息を吐く。


「……まあいい。お前も、知っておいた方がいい話だ」


「ルドラの話の前に、緋眼の魔人と神嶺のことはどこまで知っている?」


「なんとなくは。緋眼の魔人は神嶺様が倒したけど、復活した……んだよね?」


「大筋は合っている。だが、緋眼の魔人を討ったのは二代目神嶺――シンセレーヌだ」


「二代目? 神嶺って一人じゃないの?」


「初代は、魔創神グラン(この世界を作ったとされる大魔法使い)の側近ラルフだ」


「……あんまり聞かない名前だね」


「時代の違いだ」


 フィルスは淡々と続ける。


「ラルフが生きたのは、グランがこの世界――グランダムを整え、各国が急成長した時代だ。

 戦争や国同士の争いを止め、調停者として尽力した。だがその頃には、緋眼の魔人も強大な魔獣もいなかった。英雄としての“戦果”は少ない。ゆえに語られにくい」


「なるほど……」


「そして神嶺の力は二代目シンセレーヌへ継承される。そこからが激動だ」


 フィルスの声がわずかに低くなる。


「緋眼の魔人率いる魔人軍の台頭。

 シンセレーヌと緋眼の魔人の戦いは――およそ百二十年に及んだ」


「百二十年!? そんなに生きてたの?」


「二代目神嶺シンセレーヌは、最高位の魔術により不老だ。老いない。寿命でも死なないと言われている」


「……そんな魔術が」


 カルマの胸が、わずかにざわつく。

 理由のわからない既視感。


 フィルスは続ける。


「シンセレーヌは魔人軍を壊滅寸前まで追い込み、緋眼の魔人を討った。

 一度目は魔力を封じただけで逃げられたがな。

 その後、人の村に潜伏していたところを神聖剣で討ち果たしたと伝わる」


「それで平和に?」


「しばらくはな。だが約三十年前、緋眼の魔人復活の噂と共に、各地で魔人軍が再び動き出した」


「……」


「その中でも特に強力だったのが、《緋衣の十魔(ひえのじゅうま)》。

 十人の幹部だ。戦士で言えば界級以上とされる」


「フィルスより強いってこと?」


「相性次第だが、天級一人では厳しいだろうな」


 さらりと言うが、重い事実だ。


「神嶺シンセレーヌは? 不老なんでしょ?」


「緋眼の魔人を討った約四百五十年前以降、表舞台に姿を見せていない。

 一説には後継者に立場を譲ったとも言われるが……三代目神嶺は現れていない。真偽は不明だ」


 カルマの胸が、またざわめく。


 四百五十年前。

 不老の神嶺。

 姿を消した存在。


「……じゃあ、どうやって魔人軍に対抗したの?」


「そこで立ち上がったのが賢人ルドラだ」


 フィルスの目が、遠くを見る。


「ルドラは《緋衣の十魔(ひえのじゅうま)》のうち三柱を討った。

 魔人軍が立て直しを余儀なくされるほどの打撃だった」


 カルマはごくりと唾を飲む。


「……フィルスは、その弟子だったんだよね」


「ああ」


 短い返答。


 だがそこに、誇りと――わずかな悔恨が滲んでいた。


「ルドラはな……強かった。だが、それ以上に――」


 フィルスは言葉を区切る。


「覚悟が違った」


 夜風が小屋の外で木々を揺らす。


 カルマは知らず、拳を握っていた。


 遠い過去の戦い。

 不老の神嶺。

 消えた英雄。


 それらが、どこか自分の人生と繋がっているような気がしてならなかった。


―――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ